給与計算、社会保険の手続き、備品の発注、電話の取り次ぎ、来客対応。総務の一日はもともと細かい仕事で埋まっています。そこに採用が乗ってくると、応募対応は「他の仕事が落ち着いたらやろう」という位置に置かれます。悪意も怠けもありません。ただ、落ち着くタイミングが一日の中で来ないだけです。
結果として、午前に届いた応募への電話が夕方になり、夕方に届いた応募は翌朝に回ります。候補者の側から見れば「応募したのに連絡が来ない会社」です。この記事では、採用専任者を置かないまま応募対応の初動を安定させるために、時間そのものを先に押さえてしまう運用をご紹介します。
「手が空いたら対応」がいちばん遅くなる
兼務担当の応募対応が遅れる理由は、優先順位ではなく順番の決め方にあります。給与や保険の手続きには締切があり、電話や来客には相手が目の前にいます。応募対応にはそのどちらもありません。候補者は催促してこないので、後ろに回しても誰にも怒られないのです。
ところが候補者側の時計は、会社の時計よりずっと速く進んでいます。応募した人はたいてい複数社に同時に出していて、先に話が進んだところから面接に行きます。連絡が翌日になった時点で、比較の土俵から外れていることも珍しくありません。初回連絡の速さがその後の歩留まりに効いてくる理屈は、応募後1時間以内の初回連絡が、採用の歩留まりを変える理由で詳しく整理しています。
つまり必要なのは「もっと急いでやる」という意識づけではありません。応募対応が割り込まれない時間を、あらかじめ確保しておくことです。
1日3回、応募対応の枠を予定表に入れる
おすすめしているのは、朝一・昼過ぎ・夕方の3回を、各15〜20分程度の固定枠として自分の予定表に入れてしまうやり方です。会議と同じ扱いにして、そこには他の予定を入れません。
| 枠 | 時間の目安 | 主にやること |
|---|---|---|
| 朝一 | 始業直後〜15分 | 前夜〜早朝に届いた応募の受付と初回連絡 |
| 昼過ぎ | 13時台に15分 | 午前の応募への連絡、つながらなかった人への二の手 |
| 夕方 | 終業1時間前に15分 | 午後の応募への連絡、翌日面接のリマインド、未対応の棚卸し |
3回に分ける理由は二つあります。ひとつは、応募が届く時間が読めないこと。夜と早朝に届いた分は朝一で、日中に届いた分は昼過ぎと夕方で拾えます。もうひとつは、候補者がつながる時間帯が分散していることです。在職中の方は昼休みか夕方以降、日勤でない方は午前中につながりやすい、といった違いがあります。1回にまとめてしまうと、その時間に出られない人が全員取りこぼしになります。
15分で足りるのか、という疑問はあると思います。仮に月10件の応募があり、1件あたり初回連絡に5分、日程調整のやりとりに5分かかるとすると、単純計算で月に100分前後。1日15分×3回=45分の枠があれば、枠が余る日のほうが多いはずです。実際の工数の積み上げ方は応募10件を1人で回すと何時間かかるのかで分解しています。
枠が余った日は、その時間で求人票の見直しや記録の整理をすればよいだけです。逆に「応募が来てから時間を探す」やり方だと、15分の空きを探すのに半日かかります。
枠の中でやる順番を決めておく
枠を取っただけでは、15分が「メールを眺めて終わる時間」になりがちです。枠内の作業順を固定しておくと、迷う時間がなくなります。順番は次の3つです。
1. 新規の受付と初回連絡(最優先)
前の枠から今までに届いた応募を確認し、初回連絡を入れます。電話がつながらなければ、その場でSMSかメールを送って折り返しの時間帯を示します。ここを後回しにしないことが、この運用のほぼすべてです。連絡手段の使い分けは応募者に電話がつながらない。SMS・メールを組み合わせた連絡の順番にまとめてあります。
2. 未対応・返事待ちの追いかけ
「候補日を送ったが返信がない」「電話に出なかったまま」の人を拾います。ここは一覧で見える形にしておかないと必ず抜けます。ノートでもExcelでも構いませんが、名前・応募日・最後に連絡した日・次にやること、の4列だけは残してください。
3. リマインドと事務処理
翌日〜翌々日に面接予定の方へのリマインド、不採用連絡、記録の更新。締切が近いものから順に片づけます。
この順番には意味があります。新規の応募はいちばん熱が高く、いちばん早く冷めます。返事待ちの追いかけは1日遅れても致命傷になりにくい。リマインドは前日までに送れば足ります。時間が足りない日に何を落とすかを、あらかじめ決めておくための順番です。
枠外に来た応募をどう扱うか
固定枠をつくると、必ず「枠の外に来た急ぎの応募」が問題になります。ここで例外を許しすぎると枠が崩れ、許さなすぎると機会を逃します。線を引いておきましょう。
例外として枠外でも即対応する条件を、たとえば次のように決めておきます。
- 候補者本人から電話がかかってきた(=つながっている状態を切らない)
- 翌日・当日の面接に関する連絡(日程変更、遅刻、道に迷っている等)
- 募集が急務のポジションへの応募(欠員が出ている職種など、事前に指定しておく)
この3つ以外は、次の枠まで待ちます。「今日のうちに1回は連絡が入る」状態が保てていれば、30分や1時間の差はそれほど大きくありません。むしろ、その都度割り込ませて他の総務業務が押し、結果として夕方の枠が消えるほうが損失は大きくなります。
あわせて、自分が席にいない時間帯に電話を受ける人の動き方も決めておいてください。応募者からの折り返しを事情を知らない社員が受けて印象を損ねる、というのは兼務体制でよく起きます。誰が出ても同じ受け方ができるようにする工夫は誰が電話に出ても同じ対応にする。応募者からの着信の受け方で扱っています。
なお、面接の枠についても同じ考え方が使えます。応募が来てから面接官の予定を探すのではなく、毎週決まった時間に仮押さえしておくと、初回連絡の中で候補日をその場で出せるようになります。こちらは面接枠が取れない。現場が忙しい会社の面接枠の作り方をご覧ください。
枠が守れない月が続いたときの判断
この運用を始めると、自社の状況がはっきり見えてきます。枠を守れているのに面接が組めないなら、問題は対応の速さではなく求人内容や条件のほうにあります。逆に、枠そのものが他の業務に食われて消えてしまう月が続くなら、それは担当者の努力ではなく業務量の問題です。
支援に入っているお客様でも、繁忙期に入ると総務の枠が丸ごと消える、という会社は少なくありません。そこで担当者を責めても改善しません。応募が集中する時期だけ外の手を借りる、初回連絡と日程調整だけを外に出す、といった切り分けのほうが現実的です。自社で持つ業務と外に出す業務の線引きは採用担当の業務を全部書き出してみる。内製と外注の分け方で整理しています。
社外採用部は、この「応募が来たあと」の部分だけを引き受ける採用事務局です。応募の受付と初回連絡、日程調整、面接前後のフォロー、内定から入社までの連絡を、御社の名前で代わりに回します。求人広告の運用や応募集めそのものは対象外で、いま来ている応募を面接と入社につなぐところが担当範囲です。月額49,800円〜、初回の設計費が100,000円、以降は支援内容・工数に合わせて個別にお見積りします。
総務の予定表に3つの枠を入れてみて、それでも埋まらない、あるいは埋めても守れない。そう感じられたときは、一度状況をお聞かせください。サービス責任者の佐々木純平が、いまの応募件数と社内の手数を見ながら、どこを外に出すと枠が守れるようになるかをご一緒に整理します。
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