「人が足りないと言っているのは現場なのに、いざ面接となると誰も出てくれない」。経営者や総務の方から、この種のお話をうかがう機会は少なくありません。見学の受け入れを頼めば「今日は忙しいので」と返り、面接同席をお願いすれば「社長にお任せします」と流れる。採用が自分たちの問題として扱われていない、と感じてしまう場面です。
ただ、支援の現場で話を聞いていくと、現場側が非協力的なわけではないことのほうが多いように感じます。頼まれている内容が大きすぎるか、いつ何をすればいいのかが見えていないか、そのどちらかです。この記事では、正論で押すのではなく、協力しやすい単位に切り分けて頼んでいく順番を整理します。
「採用に協力してほしい」は、頼み事として大きすぎる
現場に投げかけられている言葉を、そのまま書き出してみてください。「採用に協力してほしい」「面接に出てほしい」「若手を育てる意識を持ってほしい」。どれも正しいのですが、受け取る側からすると、作業量も所要時間も終わりも見えません。
人は、範囲の見えない依頼を後回しにしやすいものです。とくに現場責任者は、自分の持ち場の数字と安全に責任を負っています。そこに「いつ、何分、何をするか」が決まっていない仕事が乗ってくると、判断を保留するのが自然な反応です。
さらに、過去に一度だけ面接に同席させられ、何を見ればいいか分からないまま座っていた経験がある方は、二度目を避けます。嫌がられているのは採用そのものではなく、準備なしで責任だけ渡された記憶であることが多いのです。
まず頼むのは、15分で終わる一つだけ
最初の依頼は、時間が明示されていて、その場で終わり、判断責任が発生しないものにします。たとえば次のような単位です。
| 頼む内容 | 目安時間 | 現場が負う責任 |
|---|---|---|
| 候補者に職場を15分案内する | 15分 | なし(説明のみ) |
| 面接で聞いてほしい質問を1つ預かる | 3分 | なし(合否は別) |
| 作業風景の写真を1枚撮ってもらう | 5分 | なし |
| 入社1週間の教育担当を1人決める | 10分の相談 | 担当の指名のみ |
| 一次面接に同席して、後で感想を一言 | 30分+5分 | 評価はするが決裁はしない |
このうち、最初に効きやすいのは「15分の現場案内」です。候補者にとっては入社後の姿が具体的になり、会社にとっては面接だけでは伝わらない情報が伝わります。そして案内した現場社員には、「この人がうちに来るかもしれない」という当事者意識が自然に生まれます。面接官を務めさせるより、はるかに軽く、はるかに効きます。
「質問を1つ預かる」も同じ考え方です。面接に出られない現場責任者に、「この職種で、これだけは確認しておきたいことを一つ教えてください」とだけ聞く。出てきた質問を面接で使い、結果を後で共有する。それだけで、次回は「自分も出ようか」という反応が返ってくることがあります。
面接そのものを任せる段階に進むときは、社長以外が一次面接をできるようにする。任せる順番もあわせてご覧ください。順番を飛ばさないことが、結局は近道になります。
頼む順番は「情報共有 → 小さな作業 → 判断」
巻き込み方には順番があります。逆から入ると、ほぼ確実に止まります。
第1段階は情報共有です。 まず、募集していること自体を現場が知っている状態をつくります。誰を、いつまでに、どんな条件で募集しているのか。ここが抜けたまま「明日面接だから出て」と言われれば、誰でも身構えます。共有の最小単位については現場が「採用してるの知らなかった」を防ぐ。社内共有の最小ルールで整理しています。
第2段階が、前述の小さな作業です。 15分の案内、質問1つ、写真1枚。ここでは判断を求めません。やってもらったことには、必ず結果を返してください。「案内していただいた方、面接に来られました」「いただいた質問で、経験の深さが分かりました」。返しがないと、協力は一回で終わります。
第3段階で、はじめて判断を含む役割を渡します。 一次面接の同席、評価コメント、教育担当。ここまで来ると、現場は「自分たちが選んだ人」として受け入れの姿勢を持ちやすくなります。
順番を守る代わりに、時間はかかります。1〜2ヶ月かけて段階を上げていくくらいの見積もりが現実的です。
「採用は現場を楽にする」を、数字の形で見せる
協力を引き出すもう一つの鍵は、採用が現場の負担軽減に直結すると、言葉ではなく数字で示すことです。精神論より、自分たちの残業時間に効くという話のほうが伝わります。
仮の数字で考えてみます。ある部署で1人欠員が出ていて、その穴を4人で分担しているとします。1人あたり月20時間の超過勤務が発生し、時間外の単価を2,000円と置けば、部署全体で月16万円の残業代です。これが半年続けば96万円になります。金額に加えて、休日出勤の回数や有給が取れない状況も並べると、現場の実感と重なります。
この数字を見せたうえで、「面接に30分出ていただくと、この状態が終わる時期が早まります」と伝える。抽象的な協力要請が、自分の休日の話に変わります。欠員が続くコストの計算方法は欠員1人のまま回すと、毎月いくら失っているのかで詳しく扱っています。
数字を出すときの注意は二つあります。一つは、算出根拠を必ず添えること。「なんとなく大きく見せた数字」は不信を招きます。もう一つは、現場を責める材料にしないこと。「あなたたちが協力しないからこうなっている」と聞こえた瞬間に、話は終わります。
現場に渡さない仕事を、先に決めておく
ここまでの話は、裏を返せば「現場に渡していい仕事は限られている」ということでもあります。応募の受付、初回連絡、日程調整、リマインド、不採用連絡。これらを現場に振ると、本業の合間の対応になり、遅れが出て、しかも現場の採用アレルギーが強まります。
現場に残すのは、現場にしかできないことだけです。職場を見せる、仕事の実際を語る、一緒に働けるかを見る。それ以外の連絡と調整は、社内の別の誰か、あるいは社外の手で処理したほうが、全体として速く進みます。
社外採用部は、この「渡さない仕事」を引き受ける採用事務局です。応募の受付から初回連絡、日程調整、面接前後のフォロー、内定・入社までの連絡を代行し、現場には面接枠と見学の時間だけを確保していただく形をとります。料金は月額49,800円から、初回に設計費100,000円をいただき、以降は支援内容・工数に合わせて個別にお見積りします。
現場が協力してくれないのは、多くの場合、頼み方と段取りの問題です。順番を組み直すところからご一緒できればと思います。段取りの設計についてのご相談はこちらからお気軽にどうぞ。
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