応募が来て、面接の候補日を出そうとする。ところが社長の予定表を開くと、今週は終日埋まっていて、来週も出張がある。結局「再来週でいかがでしょうか」と案内し、その間に候補者は他社で決めてしまう。中小企業でよく起きる、面接が一人に集中したときの詰まり方です。

解決策は「社長以外も一次面接ができるようにする」ことなのですが、多くの会社でこれが進みません。理由は面接官の能力ではなく、任せる中身が言葉になっていないことにあります。「人を見る目」を渡そうとするから渡せないのであって、渡すべきは判断の範囲と記録の形です。この記事では、一次面接を現場責任者に移していく手順を3段階に分けて整理します。

任せられないのは、見ている項目が社長の頭の中にあるから

社長が面接で何を見ているかを聞くと、「一緒に働けそうかどうか」「うちの雰囲気に合うか」といった答えが返ってくることが少なくありません。これは長年の経験が凝縮された感覚で、それ自体は正しいのですが、そのままでは他の人に引き継げません。引き継げないものを任せようとすると、「やっぱり自分が見たほうが早い」に戻ります。

もう一つの壁は、任せたあとに何が起きるかわからない不安です。変な人を通されたらどうするか、逆に採るべき人を落とされたらどうするか。この不安は、一次面接を「合否を決める場」と捉えているうちは消えません。一次面接の役割を「二次に進めるかどうかを決める場」に限定すると、任せられる範囲がぐっと具体的になります。外部に業務を渡すときと同じ構造で、線引きの考え方は採用を外注するのが不安な社長へ。失敗しない任せ方でも触れています。

第1段階:一次面接で見る項目を3つに絞る

最初にやるのは、面接官トレーニングでも質問集づくりでもなく、項目の絞り込みです。一次面接で確認することを3つまでに減らします。多くても4つ。それ以上並べると、現場責任者は全部を確認しようとして時間内に終わらず、結局印象で判断することになります。

絞り方は単純で、「これが満たされていなければ、他がどれだけ良くても二次に進めない」という条件だけを残します。たとえば製造の現場職なら、交替勤務に対応できるか、通勤手段が確保できているか、前職の離職理由に不自然な点がないか。この3つが確認できれば一次は成立します。人柄や伸びしろの評価は、社長が出る二次に回して構いません。

この絞り込みは、求める人物像の整理そのものでもあります。要件が10項目並んだままだと判断が割れる理由については求める人物像は3つに絞る。条件を並べすぎると決められないで詳しく扱っていますので、あわせてご覧ください。

3つが決まったら、紙一枚に書き出して現場責任者に渡します。この紙が、あとで評価シートの原型になります。

第2段階:同席で慣らす。3回で交代する

いきなり一人で面接をしてもらうのではなく、同席の期間を挟みます。ただし「しばらく横で見ていて」では慣れません。回ごとに役割を変えるのがコツです。

回社長現場責任者
1回目全体を進行する同席して記録を取る
2回目3項目の確認だけ任せ、あとを進行3項目を自分の言葉で聞く
3回目同席するが口を挟まない最初から最後まで進行する
4回目以降同席しない一人で実施し、記録を渡す

3回で交代する、と先に決めておくことが大事です。期限を切らないと同席期間が半年続き、結局社長の予定が埋まったままになります。仮に月4件の応募があるとすれば、1か月ほどで交代が完了する計算です。

同席中に社長がやるべきことは、面接の上手さを評価することではありません。3項目の聞き方がずれていないかだけを見て、終わったあとに5分で振り返ります。「さっきの通勤の話、もう一段踏み込んで聞いてよかったですね」くらいの短いやりとりで十分です。面接の時間配分そのものに不安がある場合は、30分の面接で何を聞くか。中小企業の面接進行台本を台本として渡す手もあります。

第3段階:判断の持ち帰りラインを決める

任せたあとに一番揉めるのが、「この人は判断に迷う」というケースです。ここを曖昧にすると、現場責任者は迷うたびに社長に電話をかけ、社長が捕まらず、候補者への連絡が数日空きます。任せたはずなのに速くならない、という状態です。

そこで、現場責任者がその場で決めてよい範囲を先に決めます。おすすめは次の3分類です。

この3分類なら、多くの応募はその場で決まり、持ち帰りは一部に限られます。持ち帰る場合も「何日以内に回答するか」を候補者に伝えられるよう、社内の回答期限を決めておきます。決裁の線引き全般については採用の決裁ラインを決める。誰が最終判断するかで連絡は速くなるも参考になります。

見送りをその場で決めてよいことにするのは、勇気がいるかもしれません。ただ、見送り判断を保留にすると対応リストが膨らみ、本命への連絡が後回しになります。必須条件を明確に外している場合に限って現場に任せる、という形なら、大きく外れることは起きにくくなります。

任せたあと、社長が見るのは評価シートの3行だけ

移譲が完了したあと、社長が一次面接について受け取るのは、評価シートの3行です。3項目それぞれに◯△×と、そう判断した根拠の一行。これだけ。面接の詳細な議事録は要りません。

仮の例で言えば、こうなります。

交替勤務:◯(前職で3交替を4年、家族の了解済みと本人談) 通勤:△(車なし、バス通勤で片道50分。本人は問題ないと言うが要確認) 離職理由:◯(会社都合の部門縮小。前職に在籍確認可能とのこと)

これを面接直後5分で書いてもらい、社長は目を通して二次の準備に使います。書式の具体的な作り方は面接後に「なんとなく良かった」で終わらせない評価シートにまとめています。

3行に絞るのには理由があります。長い報告を求めると現場責任者の負担になり、書くのが遅れ、社長が読むのも遅れ、結局合否連絡が後ろにずれるからです。読むのに1分もかからない分量にしておくと、社長が出張中でもスマートフォンで目を通して返事ができます。

そして社長は、空いた時間を二次面接と最終判断、口説きに使います。面接そのものを手放すのではなく、出る面接を選ぶ。この考え方は社長が採用面接だけに集中すると、採用は強くなるでも整理しています。


一次面接を任せられるようになっても、応募の受付や候補日の提示、前日リマインドといった事務が誰かの手元に残っていれば、候補者を待たせる構造は変わりません。社外採用部は、応募の受付から初回連絡、日程調整、面接前後のフォロー、内定・入社フォローまでを採用事務局として代行します。面接枠の押さえ方や評価シートの回収まで含めて運用を設計しますので、社長と現場責任者は面接そのものに集中できます。料金は月額49,800円〜、初回に設計費100,000円をいただき、以降は支援内容・工数に合わせて個別にお見積りします。

自社の場合は何をどこまで任せられそうか、こちらからお気軽にご相談ください。サービス責任者の佐々木がお話をうかがいます。