退職の連絡を受けて求人を出し、数ヶ月かけて採用し、ようやく仕事に慣れてきたころに、また同じ席の誰かが辞めていく。気づけば毎年、同じポジションの募集を出している。そうした会社では、採用費は「今年もかかった費用」として、その年の予算の中で処理されているのではないでしょうか。

1年ごとに見ると、広告費が数十万円、あとは社内で何とか回した、という感覚になりやすいものです。しかし同じ出費が5年続けば、その合計は設備投資と同じ規模の判断になります。この記事では、毎年1人辞めて1人採る状態を5年続けた場合の累積コストを仮の数字で試算し、そこから定着策や採用の仕組みづくりに「いくらまでなら使ってよいか」の上限を出す手順を説明します。

1回分の採用コストを、4つに分けて数える

まず、1人が辞めて1人を採るまでの1回分を、次の4つに分けます。

式にすると次のとおりです。

1回分の採用コスト = 広告費 +(選考にかかった社内時間 × 時給換算)+(教育にかかった社内時間 × 時給換算)+(欠員1ヶ月あたりの損失 × 欠員の月数)

時給換算は、給与だけでなく会社負担の社会保険料なども含めた1時間あたりの人件費で置きます。社内工数の洗い出し方は社長と総務が採用に使っている時間は、いくらのコストか、欠員1ヶ月あたりの損失の出し方は欠員1人のまま回すと、毎月いくら失っているのかで詳しく扱っています。この記事では、それぞれの数字が出たあとに「何年分を積み上げて見るか」に絞ります。

仮の数字で、5年分を積み上げる

たとえば、次のような会社を仮定します。広告費は1回あたり30万円。選考には社長と総務で合計40時間、教育には先輩社員が入社後3ヶ月で合計60時間を使い、時給換算はどちらも3,000円。欠員期間は2ヶ月で、その間の損失を月20万円と見積もります。これを毎年1回、5年続けた場合が次の表です。

項目1回あたり(仮の数字)5年分(5回)
広告費30万円150万円
選考の社内工数(40時間×3,000円)12万円60万円
教育の社内工数(60時間×3,000円)18万円90万円
欠員期間の損失(月20万円×2ヶ月)40万円200万円
合計100万円500万円

1年ごとに見れば、帳簿に出てくるのは広告費の30万円だけかもしれません。けれども社内工数と欠員期間まで含めると1回あたり100万円、5年で500万円という数字になります。この例では、広告費は全体の3割にとどまり、残りの7割は帳簿上「採用費」として見えにくい部分です。

なお、早く辞めた人がいる年は、教育にかけた時間がそのまま失われたうえで、もう一度採用が発生します。その1回分の損失の内訳は入社3ヶ月で辞められると、いくら失うのかで整理しています。

累積で見ると、投資してよい上限が見えてくる

累積の数字を出す目的は、怖がることではなく、「この状態を変えるために、いくらまでなら使ってよいか」を決めることです。変えられる場所は大きく2つあります。

1つ目は、採用の回数を減らすことです。 定着策によって、仮に5年で5回だった採用が3回になったとします。1回100万円なら、5年の累積は500万円から300万円になり、差は200万円です。5年(60ヶ月)で割ると月あたり約3.3万円。これが、定着策に使ってよい金額の上限の目安になります。

2つ目は、1回あたりのコストを下げることです。 応募への連絡や日程調整の仕組みを整えて、仮に欠員期間が2ヶ月から1ヶ月に縮んだとします。欠員期間の損失は1回40万円から20万円になり、1回あたり80万円。5回なら400万円で、差は100万円です。

両方を同時に実現できた場合は、80万円×3回で240万円となり、現状の500万円との差は260万円、月あたり約4.3万円になります。

投資の上限 =(現状の採用回数 × 現状の1回分コスト)−(改善後に見込む採用回数 × 改善後の1回分コスト)

ここで出るのは、あくまで「この金額を超えて使うと、改善しても元が取れない」という上限です。改善の見込みそのものは仮定にすぎないため、実際に判断するときは、回数が5回から4回にしか減らなかった場合のような控えめな前提でも計算し、その範囲に収まる手から試すのが安全です。

自社の数字を入れるときの注意点

試算を自社に当てはめるときは、次の点に気をつけてください。

上限が出たら、定着のための面談や教育担当の時間確保、応募後の対応を外部に任せる費用など、検討している打ち手の見積りをその横に並べます。たとえば当社の社外採用部は月額49,800円〜、初回設計費100,000円で、以降は支援内容と工数に合わせて個別にお見積りしています。こうした実際の金額を上限と比べると、「高いか安いか」ではなく「上限の内側に収まるか」で判断できるようになります。

毎年の採用費を1年ずつ見ている限り、仕組みに投資する理由はなかなか生まれません。5年分を一度並べてみると、どこに手を入れれば積み上がりが止まるのかが見えてきます。自社の数字を入れてみて、応募対応や面接前後のフォロー、学校や媒体まわりの運用をどこまで社外に任せられるか相談したい場合は、お問い合わせからお気軽にご連絡ください。試算の前提づくりからご一緒します。