ようやく決まった一人が、入社から2ヶ月、3ヶ月で辞めていく。「またゼロからか」というため息と一緒に、求人票を作り直す作業が戻ってくる。多くの経営者が、この場面で損失を「もったいなかった」という感覚のまま流してしまいます。
ただ、感覚のままにしておくと、定着のための手当てにどこまで手間とお金をかけていいのかが判断できません。入社前後のフォローを厚くすべきなのか、それは何時間分・何円分まで割に合うのか。この記事では、早期離職で失った金額を4つの層に分けて計算する手順をご紹介します。使うのはすべて自社の数字です。平均値や相場は使いません。
早期離職の損失は、4つの層に積み上がっている
内定辞退の損失は、広告費・選考工数・欠員期間の3つで大まかに捉えられます(内定辞退1件で、いくら失っているのか)。入社後3ヶ月での離職は、そこに「入社させるために投じたもの」と「入社後に投じたもの」が加わるため、構造が一段複雑になります。
分けて考えると、次の4層です。
- 採用にかかった費用 — 求人広告費、紹介手数料、媒体オプションなど、その1人を採るために外部へ支払った金額
- 入社手続きと教育に投じた社内工数 — 労務手続き、備品や制服の準備、初日のオリエンテーション、OJTに割いた先輩社員の時間
- 欠員期間の生産低下 — 辞めた日から次の人が立ち上がるまで、本来生まれていた成果が出ない期間
- 再募集にかかる費用と工数 — もう一度掲載し、もう一度応募対応をし、もう一度面接する分
このうち1と4は請求書が残るので把握しやすい層です。厄介なのは2と3で、社内の人件費として給与に埋もれているため、いくら使ったのかが誰にも見えません。ここを金額に置き換えるのが、この計算の主目的です。
第1層・第2層を計算する(採用費用と社内工数)
まず、自社の数字を書き込む欄を作ります。以下は仮の数字を入れた例です。ご自身の会社の数字に置き換えてお使いください。
| 項目 | 計算の考え方 | 記入欄(仮の数字) |
|---|---|---|
| 求人広告費・紹介手数料 | その募集で支払った額 ÷ その募集で採用した人数 | 200,000円 |
| 選考にかけた社内工数 | 応募対応・面接に使った時間 × 時間単価 | 6時間 × 3,000円=18,000円 |
| 入社手続き・準備 | 労務手続き、備品・制服・鍵・アカウント準備の時間 × 時間単価 | 5時間 × 2,500円=12,500円 |
| OJT・教育に割いた時間 | 指導者が本業から離れた時間 × 指導者の時間単価 | 40時間 × 3,000円=120,000円 |
| 本人に支払った給与 | 3ヶ月分の給与・社会保険料(成果が出る前に離職した分) | ※後述 |
| 第1層+第2層 合計 | 350,500円 |
時間単価は、年収を年間労働時間で割った概算で構いません。この計算の出し方は社長と総務が採用に使っている時間は、いくらのコストかで詳しく整理しています。
OJTの時間が意外に大きく出ることに気づかれた方が多いはずです。教える側は本来の仕事を止めています。指導者が現場の主力であればあるほど、時間単価は高くなります。
「本人に支払った給与」を損失に含めるかどうかは、判断が分かれるところです。3ヶ月の間にその方が何らかの成果を出していたなら、給与は対価であって損失ではありません。一方、まだ独り立ち前で戦力になる手前で辞めたのであれば、投資が回収されないまま終わったと見るのが実態に近いでしょう。ここは「回収できなかった割合」を自社の感覚で決め、給与総額の何割かを計上する形にすると納得しやすくなります。
第3層・第4層を計算する(欠員期間と再募集)
3層目は、人がいないことで生まれなかった成果です。職種によって置き換え方が変わります。
- 売上に直結する職種(営業、ドライバー、施工など):その職種1人が月に生む粗利 × 欠員が続く月数
- 売上に直結しない職種(事務、管理など):他の社員が代わりに負担した残業時間 × 割増込みの時間単価、または外注で埋めた費用
仮に、1人が月に生む粗利を30万円、次の人が入って立ち上がるまでを4ヶ月とすると、120万円になります。ここが4層のうち最も大きくなることが多い層です。
4層目の再募集は、第1層とほぼ同じ計算を、もう一度足すことになります。広告を再掲載し、応募対応にまた時間を使い、面接にまた社長の時間を使う。先の仮の数字なら、広告費と選考工数で21万8千円がもう一度発生します。
4層を合計すると、この仮の例では35万500円+120万円+21万8千円=約177万円。1人の早期離職で、これだけの金額が動いた計算になります。数字の大きさに驚かれるかもしれませんが、内訳のほとんどは請求書の来ない社内工数と機会損失です。だからこそ、これまで見えていなかったということでもあります。
出た金額を、どこに投じるかで考える
ここまで計算する目的は、危機感を煽ることではありません。「定着のための手当てに、いくらまでかけて良いか」の上限を自分の言葉で持つことです。
仮の試算で177万円という数字が出たなら、その1〜2割、つまり十数万円から30万円程度を「入社前後のフォローに使う原資」と考えても、経営判断としては十分に釣り合います。具体的には、こうした使い道が候補になります。
- 入社日までの空白期間に連絡を入れ、辞退や不安を放置しない(入社初日までにやること。受け入れ準備のチェックリスト)
- 入社1週間後・1ヶ月後に短い面談を入れ、違和感が言葉になるうちに拾う(入社1ヶ月面談で聞くこと。早期離職の芽をつかむ質問)
- 求人票で伝えていた条件と、実際の勤務の間にずれがないか、入社前に確認しておく
早期離職の内訳を洗い出すと、「教育に人を出したこと」よりも「入社前後に誰も連絡していなかった期間があったこと」に原因が寄っているケースが少なくありません。フォローの手間は、この計算で出た金額に比べればかなり小さいことが多いものです。
もうひとつ、この計算は職種ごとに1回やっておくと使い勝手が良くなります。粗利の大きい職種と、代替の効きやすい職種では、同じ「3ヶ月離職」でも損失額が数倍違います。どの職種の定着から手をつけるべきか、優先順位が数字で決まります。
計算したあと、誰がフォローを続けるか
損失額が見え、フォローに原資を割く判断ができても、最後に残る問題があります。入社1週間後の面談、1ヶ月後の面談、入社日までの連絡を、実際に誰が続けるのか。多くの中小企業では、社長か総務担当者の兼務で、日々の業務に押されて後回しになりがちな部分です。
社外採用部は、応募の受付から初回連絡、日程調整、面接前後のフォロー、そして内定・入社後のフォローまでを、御社の採用事務局として代行しています。料金は月額49,800円〜(初回設計費100,000円、以降は支援内容・工数に合わせて個別にお見積り)。今回の計算で出た金額と並べていただければ、投資として釣り合うかどうかはご自身で判断できるはずです。
自社の4層がいくらになるのか、一緒に計算するところからでも構いません。まずはこちらからご相談ください。サービス責任者の佐々木がお話をお伺いします。
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