採用にかかっているお金を聞かれたとき、多くの経営者の方が答えるのは求人媒体の掲載費や人材紹介の成功報酬です。請求書が届くので、金額がはっきりしています。一方で、社長ご自身が夜に応募者へ電話をかけている時間、総務の方が候補日を三往復して調整している時間には、請求書が届きません。だから、コストとして数えられないまま毎月消えていきます。

この記事では、その「見えない時間」を金額に置き換えるための計算手順をお伝えします。金額の正解を示すことはできません。時給も応募数も会社ごとに違うからです。お伝えするのは、ご自身の会社の数字を入れれば答えが出る計算式と、その分解の仕方です。電卓を手元に置いて読んでいただくのがいちばん役に立ちます。

まず、応募1件に発生する「連絡の回数」を数える

工数を測るとき、多くの方は「採用に月何時間使っているか」といきなり総量で考えようとします。これは思い出せません。人の記憶は、細切れの作業時間をまったく保持しないからです。

代わりに、応募1件あたりに発生する連絡の回数を数えます。応募が来てから面接に来てもらうまでに、実際に何回の接触が発生しているかを書き出してみてください。棚卸しをすると、次のような回数になる会社が多いでしょう。

多いと感じられたでしょうか。ただ、これは特別に丁寧な会社の話ではありません。応募者に電話がつながらない状況は今や標準ですし、日程調整が往復で終わらないのも珍しくありません。むしろ、この回数をこなせている会社のほうが面接まで到達しています。

数え終わったら、それぞれに所要時間を割り当てます。電話1回は、かけて出ないだけでも履歴の記録を含めて3分程度。日程調整のメール1通は、文面を考えて送るまでで5〜10分。細かく見えますが、ここを実感に近い数字で埋めることが計算全体の精度を決めます。

時給に換算する。ただし「誰の時給か」で桁が変わる

次に、その時間を金額にします。使うのは単純な式です。

応募1件あたりの人件費 = 所要時間の合計(時間) × 担当者の時間単価

時間単価は、年収を年間労働時間で割って出します。ここで見落とされがちなのが、社会保険料の会社負担分や賞与を含めた「会社が負担している総額」で計算する必要がある点です。額面の給与だけで割ると、実際より低く出ます。

そしてもうひとつ、決定的に重要なのが「誰がやっているか」です。同じ日程調整でも、総務の方がやるのと社長がやるのとでは、単価が数倍変わります。

仮の数字で表にしてみます。あくまで計算の形を示すための例で、実在の企業の数字ではありません。

時間単価(仮)応募1件の所要時間(仮)応募1件あたり
総務担当2,500円50分約2,080円
管理部門責任者4,000円50分約3,330円
社長10,000円50分約8,330円

月に10件の応募があるとして、総務の方が全部を担っているなら月2万円強。社長が対応しているなら月8万円強。同じ作業でも、担い手が違うだけでこれだけ差が出ます。

さらに言えば、社長の時間単価は本来「その時間で何ができたか」で測るべきものです。夜9時に応募者へ電話をかけている1時間は、給与換算した1万円では足りないかもしれません。社長の時間を面接と採用判断に集中させることに意味があるのは、この単価差が理由です。

見えていない3つのコストを足す

ここまでで出た数字は、実は過小評価です。作業時間そのものしか数えていないからです。実際には、次の3つが上に乗ります。

1つ目は、中断のコストです。 応募通知は都合のいい時間に来ません。会議中、来客中、現場作業中に届きます。別の仕事を止めて対応し、また元の仕事に戻るとき、頭を切り替える時間が発生します。この切り替えは作業時間には現れませんが、確実に生産性を削っています。応募が月10件なら、通知・折り返し・調整で月30回以上の中断が起きている計算になります。

2つ目は、待機のコストです。 「いつ応募が来るかわからないから、通知を気にしている」状態そのものが負荷です。休日に媒体の管理画面を開く、夜に着信を確認する。この時間は作業していないので工数に数えられませんが、担当者の実感としては最も重いところです。

3つ目は、取りこぼしの機会損失です。 忙しくて初回連絡が翌日になった、日程調整が止まって候補者が他社に決めた。こうして失われた応募には、すでに媒体費が投じられています。応募1件あたりの獲得単価が仮に3万円で、月に2件を対応の遅れで失っているなら、月6万円が消えていることになります。面接設定率を記録しておくと、この数字が推測ではなく実測で出せるようになります。

この3つ目が、実は最も大きいことが多いと考えられます。人件費より、失った応募のほうが高くつきます。

ワークシート:自社の数字を出す5ステップ

ここまでを、そのまま手を動かせる形にまとめます。30分あれば埋まります。

  1. 直近3ヶ月の応募件数を出す。媒体の管理画面から拾えます。月平均を出してください。
  2. 応募1件の連絡回数と所要時間を書き出す。前述のリストを叩き台に、自社の実態で修正します。心当たりがなければ、次の応募1件を実測してみるのが確実です。
  3. 担当者ごとの時間単価を出す。会社負担総額 ÷ 年間労働時間。複数人が関わるなら、工程ごとに誰がやっているかを割り振ります。
  4. 月額の人件費を計算する。応募件数 × 1件あたり所要時間 × 時間単価。
  5. 取りこぼし分を足す。応募獲得単価 × 対応の遅れで失った件数。

出てきた金額を見て、高いと感じるか安いと感じるかは会社によって違います。応募が月2件なら、外注する必要はないかもしれません。月20件で社長が全部を抱えているなら、話は変わってきます。

大事なのは、この数字が「外注費と比べるための土俵」になることです。社外採用部は月額49,800円からと初回設計費100,000円、以降は支援内容・工数に合わせて個別にお見積りする料金体系ですが、これを高いと判断するか妥当と判断するかは、いま社内で発生している金額がわからないと決められません。比較の対象を、感覚ではなく数字で持っていただきたいのです。

なお、この計算は「全部を外に出すか、全部を自社でやるか」の二択のためのものではありません。工程ごとに単価を出しているので、どの工程を外に出すと効果が大きいかが見えるはずです。採用業務の棚卸しと内製・外注の分け方とあわせて考えていただくと、判断の解像度が上がります。


計算してみたものの、この数字をどう読めばいいのかわからない。そう感じられたら、一度お聞かせください。社外採用部では、応募件数と現在の対応体制をうかがったうえで、どの工程にどれだけの負荷がかかっているかを一緒に整理しています。代表の佐々木がお話をうかがいます。

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