期末が近づくと、今年の採用費がいくらになったかを集計する機会があると思います。求人広告の掲載費、人材紹介の手数料、外注費、そして社内の人件費。合計額を見て「これだけ使って、採れたのは何人か」と考える。そこまでは多くの会社がやっています。

ただ、もうひとつ見ておきたいことがあります。それは「その費用から、来年も使えるものが何か手元に残ったか」です。残っていなければ、来年もまた同じ額を、同じところにゼロから払うことになります。採用費が毎年減らない会社の多くは、採用が下手なのではなく、買ったものを残していないだけ、ということがあります。

毎年ゼロから買い直している、という構造

求人広告を出すと、応募が来ます。その応募に対応する中で、会社は実にいろいろなものを作っています。応募者への最初の連絡文を考え、面接で何を聞くかを決め、候補者から聞かれた質問に答え、来てくれた人の情報を受け取る。これらはすべて、広告費を払ったからこそ生まれた中身です。

ところが採用が終わると、それらは担当者のメールの送信済みフォルダと、頭の中に沈みます。半年後にまた募集をかけるとき、別の人が、また一から連絡文を考える。面接でも同じ質問を思いつきで聞く。去年応募してきた人のことは誰も覚えていない。

つまり、お金を出して買ったのは「今年の1人」だけで、来年に効く部分は捨てている状態です。しかもこの損失は帳簿に出てきません。来年また同じ広告費を払っても、それは正常な支出に見えてしまいます。

採用担当が1人しかいない会社では、この構造がさらに強く出ます。関連して採用担当が辞めたら止まる会社。応募対応の引き継ぎ設計もあわせてご覧ください。

翌年に残したい5つの資産

残すものは、立派である必要はありません。来年の自分(あるいは後任)が、ゼロから考えずに済めば十分です。

残すもの具体的な形翌年に効くこと
連絡文テンプレート応募受付・日程案内・前日リマインド・見送りの4種類の文面初回連絡を考える時間が消える
面接進行台本30分で何を何分ずつ聞くかを書いたA4一枚面接官が変わっても中身がぶれにくい
よくある質問の答え残業・休日・昇給・教育体制への回答メモ社内確認の往復が減り、回答が速くなる
過去応募者リスト氏名・連絡先・応募時期・結果・見送り理由広告を出す前に声をかける先ができる
媒体別の歩留まり媒体ごとの応募数・面接設定数・採用数来期の予算配分の根拠になる

連絡文テンプレートは、今年実際に送ったメールやSMSの中から、反応がよかったものをそのままコピーすれば足ります。新しく書き起こす必要はありません。

面接進行台本は、面接官が交代しても聞くことが揃うようにするためのものです。詳しくは30分の面接で何を聞くか。中小企業の面接進行台本で触れています。

よくある質問の答えは、今年の面接で候補者から実際に聞かれた質問を書き出すだけです。たいてい、残業・休日・給与の上がり方・入社後の教育あたりに集中します。

過去応募者リストは、5つの中でもっとも見落とされやすいものです。見送った方、途中で連絡が途絶えた方、内定を辞退された方。その方々の状況は半年で変わります。扱い方には配慮が必要なので、過去に応募してきた人に、もう一度連絡していいのかを参考にしてください。

媒体別の歩留まりは、仮の数字で言えば「A媒体は応募20件で面接6件、B媒体は応募8件で面接5件」といった比較です。応募数だけを見ているとA媒体が優秀に見えますが、面接まで進んだ数で見ると判断が変わります。

期末にまとめるなら、2時間で区切る

この手の棚卸しは、完璧にやろうとすると着手されないまま年が明けます。時間を区切って、粗くても形にするほうが残りやすいと言えます。

  1. 30分:今年送った連絡メールを送信済みフォルダから4通拾い、1つのファイルに貼り付ける。文面の推敲はしない
  2. 30分:面接で聞いている質問を思い出せるだけ書き出し、順番を付ける。候補者から聞かれた質問も一緒に書く
  3. 40分:今年の応募者を一覧に起こす。氏名・連絡先・応募月・媒体・どこまで進んだか・見送りや辞退の理由。この6項目で十分です
  4. 20分:媒体ごとに応募数と面接数を数え、横に並べる

ポイントは、きれいな資料を作らないことです。読む相手は社外の人ではなく、来年の自社の誰かです。走り書きでも、ゼロよりははるかに価値があります。

数字をどう読み、来期の計画に翻訳するかについては1年分の採用記録を、来年の計画にどう使うかでより詳しく整理しています。

置き場所を決めないと、作っても消える

せっかく作っても、担当者のパソコンのデスクトップに置かれた時点で、半分は失われたのと同じです。残すときに決めておきたいのは次の3つです。

応募者情報の扱いは慎重さが要る部分なので、社内の誰がどこまで見られるかは文書化しておくと安心です。

もうひとつ、残すときの考え方として大事なのは「来年の担当者が別の人でも使えるか」という視点です。社内の略語や、その人しか知らない前提で書かれたメモは、翌年には読み解けません。固有名詞と前提は、一行添えておくだけで寿命が伸びます。

残す作業そのものを、誰が担うか

ここまで読んで「やったほうがいいのは分かるが、期末にその2時間が取れない」と感じた方も多いと思います。採用を兼務で回している会社では、まさにその時間が最初に削られます。そして削られた結果、翌年また同じ額を払う。この繰り返しが起きやすい構造です。

残す作業は、採否の判断のように経営者本人でなければできないものではありません。連絡文を整理する、応募者を一覧にする、媒体ごとの数字を並べる。いずれも、日々の応募対応を担っている人の手元にデータがあれば進められる作業です。

社外採用部では、母集団形成から応募の受付、初回連絡、日程調整、面接前後のフォロー、内定・入社フォローまでを採用の局面に合わせて担当者をアサインして支援しています(面接そのものと採否の判断は御社にお願いしています)。日々の対応を社外で回す形にすると、連絡文や応募者の記録、媒体ごとの数字が業務の副産物として自然に蓄積されます。期末に慌てて掘り起こすのではなく、常に残っている状態に近づけられる、ということです。

料金は月額49,800円〜、初回設計費100,000円で、支援内容と工数に合わせて個別にお見積りします。応募1件ごとの従量課金ではないため、応募の多い月に費用が跳ねる心配もありません。

今年の採用費を集計したあと、「来年も使えるものが何か残っているか」を一度確認してみてください。そのうえで、残す仕組みごと社外に置くという選び方もあります。ご関心があれば、お問い合わせからお気軽にご相談ください。自社の状況をうかがったうえで、どこから手をつけるとよいかをお伝えします。