「応募の電話や日程調整をする人が社内にいない。パートでいいから1人雇おうか」。採用がうまく回らない会社で、この話はよく出ます。そして多くの場合、判断材料は「時給1,200円くらいなら月10万円ちょっとか」という概算だけで止まってしまいます。

実際に1人雇うと、時給以外の費用が後からいくつも乗ってきます。一方で外部に出す場合も、月額だけ見ていると社内に残る手間が見えません。この記事では、どちらが安いかを結論づけるのではなく、自社の数字を入れて年間総額を並べられる計算手順をお示しします。

パート1人分の費用は、時給だけでは終わらない

採用事務のパートを1人雇うとき、年間の支出に含まれるのは次のような項目です。

見落とされやすいのは、下の3つです。採用事務の担当者を雇うために、まず求人を出して採用する必要があります。入って最初の1〜2ヶ月は、社長や総務が横について教える時間が発生します。パソコンも1台いります。これらは初年度だけに乗る費用ですが、1年目の判断をするときには外せません。

なお社会保険の加入義務は、勤務時間や会社の規模によって変わります。週あたりの所定労働時間をどう設定するかで会社負担額が変わるため、金額を固める前に顧問社労士へ確認してください。

仮の数字で、年間総額を積み上げてみる

ここからは、あくまで仮の数字です。自社の条件に置き換えてお読みください。

前提として、時給1,200円、1日5時間、週4日(月約86時間、年間約1,030時間)のパートを1人雇うとします。

項目雇用する場合(年額・仮)外に出す場合(年額・仮)
給与/月額費用約124万円約60万円(月額49,800円×12)
法定福利費約10〜19万円(加入要件による)―
通勤費約6万円―
募集費(初年度)約10万円―
立ち上げ・教育(初年度)約8万円(社内30時間分)10万円(初回設計費)
備品・PC(初年度)約10万円―
社内のすり合わせ工数―約7万円(月2時間分)
初年度の合計約168〜177万円約77万円
2年目以降約140〜149万円約67万円

この表だけを見ると外部が安く見えますが、ここには大きな前提差があります。雇用した場合の年間1,030時間は、採用事務以外にも使える時間です。一方、外部へ出す費用は、依頼した業務範囲に対してのみ発生します。当社の場合も、月額49,800円〜という下限はありますが、以降は支援内容と工数に合わせて個別にお見積りするため、任せる範囲が広がれば金額は変わります。応募1件ごとの従量課金ではありません。

そして、どちらを選んでも面接そのものと採否の判断は社内に残ります。ここは代行できない部分です。社長や現場責任者が面接に使う時間は、両方の選択肢に共通して乗るものとして、比較表からは外して考えるほうがすっきりします。

自社の数字で比べる4ステップ

比較の手順は、次の4つです。

ステップ1:年間の応募件数を数える。 過去1年、媒体・ハローワーク・紹介すべて合わせて何件の応募があったか。記録が残っていなければ、直近3ヶ月を数えて4倍しても構いません。

ステップ2:応募1件あたりの対応時間を出す。 受付、初回連絡、電話のかけ直し、日程調整、リマインド、面接前後のフォロー、不採用連絡まで含めると、1件あたり1〜2時間かかることが多いものです。工程ごとの積み上げ方は応募10件を1人で回すと何時間かかるのかで分解しています。

ステップ3:年間の採用事務の総時間を出す。 応募件数×1件あたり時間。仮に年間応募120件、1件1.5時間なら、年間180時間です。

ステップ4:パートの年間稼働時間と比べる。 先ほどの例なら年間1,030時間。採用事務に使うのが180時間なら、残り850時間は他の仕事で埋める必要があります。埋められる業務があるなら雇用は成り立ちますし、なければ「採用のために雇った人が、採用以外で忙しい」状態になります。

この4ステップで見ると、分岐は金額ではなく時間で決まることがわかります。

分岐点は、埋められる時間があるかどうか

もう一つの見方として、外部費用を時間に換算する方法があります。

2年目以降の外部費用を仮に年間67万円、パート1人の人件費を時間あたり約1,450円(給与・法定福利費・通勤費込み)とすると、67万円は約460時間分に相当します。つまり、

という整理になります。1件1.5時間で計算すると、460時間はおよそ年間300件の応募に相当します。月25件です。この水準で応募が来続けている会社なら、採用事務だけで一人分の仕事になります。

ただし、時間単価だけで決まらない要素が3つあります。

ひとつは繁閑の波です。採用の応募は年間を通して均等には来ません。年度末や繁忙期前に集中し、閑散期はほとんど動かない会社も多いものです。雇用は波に関係なく固定費が出続けます。この構造は採用の繁忙期だけ回らない。年間の波にどう備えるかでも触れています。

ふたつめは不在時の停止です。1人雇った場合、その方が休んだ日や退職した後、応募対応は止まります。採用した人を採用するために、また募集費と教育時間がかかります。

みっつめは役割の幅です。採用の局面によって、求められる動きは変わります。母集団をつくる段階、応募者に電話をかけ続ける段階、学校や紹介会社とのやり取りが増える段階では、必要な経験が違います。一人分の人件費でこれらを使い分けられるかどうかは、雇用と外部で差が出やすい点です。当社では、局面に合わせて担当をアサインする形をとっています。

それでも雇用を選ぶべき場合

ここまで読むと外部寄りに見えるかもしれませんが、雇用が合う会社もあります。

採用事務以外の総務業務がまとまってある場合、採用が年間を通じて継続的に動いている場合、そして社内に採用の知見を人として蓄積したい場合です。特に3つめは、中長期では意味を持ちます。

一方で、応募が月10件前後で、総務担当が本業を抱えながら兼務している会社であれば、1人分の固定費を背負うより、必要な工程だけ外に出すほうが身軽です。判断の順序としては、採用担当者を雇う前に、社外へ採用機能を持つという選択で整理したように、「雇うかどうか」の前に「どの業務を誰がやるか」を決めるほうが、後から変更しやすくなります。

いずれにしても、まずはステップ1の年間応募件数から数えてみてください。この数字がないまま求人を出すと、採用担当を採用した後で「思ったより仕事がなかった」「逆に全然足りなかった」のどちらかになりがちです。

自社の応募件数と対応時間を入れた場合、どの程度の費用感になるのか。社外採用部では、現在の応募件数と社内の対応状況をうかがったうえで、必要な工程と見積りをご提示しています。雇用と比べる材料としてお使いいただいて構いませんので、こちらからお気軽にご相談ください。