応募を受けて電話をかけたら、「実は月に一度通院があるのですが、大丈夫でしょうか」「親の介護があり、夕方は早めに上がりたいのですが」と切り出された。あるいは応募フォームの備考欄に、持病や障害、育児の事情が小さく書かれていた。こうした申し出を受けたとき、電話口で「うーん、難しいかもしれません」と言ってしまったり、逆に「大丈夫ですよ」と安請け合いしてしまったりした経験はないでしょうか。
申し出をした応募者の側も、言うべきか迷った末に口に出していることが多いものです。その場の一言で選考が終わってしまうのは、会社にとっても惜しい話です。ここでは、応募後の初回連絡から面接設定までの間に、何を確認し、どこで立ち止まり、判断に迷ったらどこに相談するかを整理します。
その場で可否を答えなくてよい
まず押さえておきたいのは、申し出を受けたその場で結論を出す必要はない、ということです。電話を受けた担当者が即答できる範囲は限られています。にもかかわらず「たぶん無理です」と答えてしまうと、本来なら調整できたかもしれない条件まで含めて、その時点で選考が終わります。
この場面で使える返し方は、単純です。「ご事情を教えていただきありがとうございます。社内で確認したうえで、◯日までにあらためてご連絡します」。即答を避けつつ、放置もしない。期限を添えるのが要点です。配慮に関する相談ほど、返事が来ないと「断られたのだろう」と受け取られやすく、黙っているうちに応募者が離れていきます。候補者からの問い合わせ全般については候補者からの質問メールに、どこまで即答するかもあわせてご覧ください。
なお、申し出の内容によっては、本人が「選考に不利になるのではないか」と心配しています。「選考とは別に、働き方の調整として伺っています」と一言添えると、その後の会話がしやすくなります。
聞くのは「できないこと」ではなく「希望の具体」
次に、何を聞くかです。ここで聞き方を誤ると、応募者を詮索する形になったり、面接で聞いてはいけない領域に踏み込んだりする恐れがあります。原則は、業務に必要な範囲で、本人の希望を具体的に聞くことです。病名や診断の詳細、家族の状況そのものを掘り下げる必要はありません。
| 申し出の内容 | 応募後に確認したいこと |
|---|---|
| 通院・体調への配慮 | 通院の頻度と時間帯の目安、就業時間中か休日か、勤務上で避けたい作業があるか |
| 育児・介護との両立 | 勤務できる曜日と時間帯、急な休みが起こりうる頻度、送迎などで区切りたい時刻 |
| 障害に関する配慮 | 本人が希望する配慮の内容(設備・作業手順・連絡方法など)、就業時間の希望 |
| 復職・ブランク明け | 当面の勤務時間の希望、段階的に増やしたいか、通院の有無 |
聞くときは「どういったご病気ですか」ではなく、「お仕事をするうえで、こちらで配慮したほうがよいことはありますか」と、会社側が調整する前提で尋ねる形にします。面接での質問の線引きについては面接で聞いてはいけない質問。悪気のない一言が問題になるで整理しています。家庭の事情を面接前に確認する聞き方は主婦パート応募者の「家庭の事情」を、面接前に確認するが近いテーマです。
聞き取った内容は、口頭で終わらせず記録に残します。社内で検討するときも、面接官に引き継ぐときも、記憶ではなく記録をもとにしたほうが話が早く、本人に同じ説明を何度もさせずに済みます。
社内で検討する順番を決めておく
聞き取りのあとは社内検討です。ここが詰まって返事が遅れる会社が少なくありません。検討の順番を、あらかじめ決めておくと動きやすくなります。
- 現在の業務と勤務シフトで、希望どおりに運用できるか(現場責任者に確認)
- 運用できない場合、業務の範囲や時間帯を変えれば成立するか
- 成立する場合、どこまでを採用時の条件として書面に書くか
- 判断がつかない項目は何か。誰に、どこに確認すれば判断できるか
ここで大事なのは、「全部できるか、全部できないか」で考えないことです。たとえば、希望の勤務時間がフルタイムの枠に合わなくても、担当業務を絞れば成立する場合があります。逆に、安全上どうしても譲れない条件があるなら、それは曖昧にせず早めに伝えたほうが、お互いの時間を無駄にしません。
また、検討の結論を誰が出すのかも先に決めておきます。社長が不在で判断が止まるようでは、せっかくの聞き取りが活きません。採用の決裁ラインの決め方。誰が最終判断するかで連絡は速くなるで、場面ごとの決裁者の決め方を扱っています。
面接までの日程には、少し余裕を持たせる
通常の応募対応では、面接日はできるだけ前倒しにするのが基本です。ただ、配慮の申し出がある場合は、少し事情が変わります。通院日を避ける、送迎の時間帯を外す、同行者の都合を合わせる、オンラインでの実施を検討するなど、本人側にも調整が必要なことが多いためです。
といっても、日程を遠くに置けばよいわけでもありません。待たされるほど気持ちが離れやすいのは、誰でも同じです。現実的なのは、「候補日を複数、時間帯を幅広く」提示する形です。午前・午後・夕方をまたいで3つほど出し、「ご都合の悪い時間帯があれば、調整します」と添える。これだけで、本人が言い出しにくい制約を拾えることがあります。
面接日が先になるときは、間を空けたままにせず、会社側から一度連絡を入れておきます。待機期間の扱いは応募から面接まで何日空いていいか。長すぎる待機が辞退を生むでも触れています。
法的な判断が必要なら、公的窓口に確認する
配慮の申し出には、会社の運用の工夫で足りる部分と、法令に関わる判断が混じることがあります。障害のある方への合理的配慮、育児・介護休業に関する制度、短時間勤務の扱いなどです。この領域を、社内の推測で判断するのは避けたほうがよいでしょう。
確認先としては、次のような窓口があります。いずれも、採用を検討している段階で相談して構いません。
- ハローワークの窓口(専門援助部門を含む)
- 都道府県労働局(雇用環境・均等部門など)
- 地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター
- 顧問の社会保険労務士
「確認してから返事をします」と本人に伝えたうえで、窓口に相談し、期日までに回答する。この流れを一度作っておくと、次に同じような申し出があったときにも迷わなくなります。前例を一件ずつ記録として残しておくと、社内の判断基準が少しずつ育っていきます。
配慮の相談が来る応募は、決して珍しいものではありません。むしろ、人手が限られる中小企業ほど、働き方に事情のある方をどう迎えるかが採用の幅を決めます。とはいえ、聞き取り・社内確認・日程調整・期日内の返信を、他の業務の合間に回すのは簡単ではありません。
社外採用部は、応募の受付から初回連絡、日程調整、面接前後のフォローまでを、採用事務局として社外から担います。母集団形成から応募後の対応まで、必要な局面に合わせて担当をアサインする形です。面接そのものと採否の判断は御社にお任せし、その前後の実務と記録を整えます。「連絡が止まりがち」「誰が返すか決まっていない」といった状態でお困りでしたら、こちらからご相談ください。
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