面接の場を和ませようとして、「ご実家はどちらですか」「ご結婚は考えていますか」と聞いたことはないでしょうか。悪意はまったくなく、むしろ相手を気遣うつもりで出た一言です。ところがこの種の質問は、就職差別につながるおそれがあるとして、行政が長年にわたり企業に自粛を求めてきた領域にあたります。
中小企業の面接では、社長や現場の管理職が面接官を務めることが多く、採用の専門教育を受ける機会はほとんどありません。だからこそ「世間話のつもりだった」質問が、候補者に不信感を与えたり、後々の指摘につながったりします。この記事では、実際に出やすい言い回しの形で避けたい質問を整理し、本当に知りたいことを適法に確認する言い換えまでをセットでまとめます。
なぜ、その質問は避けるべきなのか
厚生労働省は「公正な採用選考の基本」として、応募者の適性・能力に関係のない事項で採否を判断しないよう企業に求めています。柱は二つです。ひとつは、本人に責任のない事項(本籍・出生地、家族の職業や収入、住宅状況、生活環境など)。もうひとつは、本来自由であるべき事項(宗教、支持政党、思想信条、購読新聞や愛読書、尊敬する人物など)です。
ポイントは、「採否の判断に使わなければよい」ではなく、把握すること自体を避けるという考え方に立っている点です。聞いてしまえば、たとえ判断材料にしていなくても、候補者側からは「あの質問で落とされたのでは」と見えてしまいます。不採用理由を説明できない状況は、会社にとっても不利にはたらきやすいものです。
もうひとつ、実務上の理由があります。こうした質問は面接の時間を消費するわりに、採用可否の判断にほとんど役立ちません。限られた30分や1時間を、適性や経験を聞く時間に振り向けたほうが、結果的に見極めの精度は上がりやすくなります。
中小企業の面接で、実際に出やすい言い回し
教科書的な禁止事項として並べると他人事に見えますが、現場ではもっと柔らかい言葉で出てきます。現場で耳にするのは、たとえば次のような形です。
- 「ご実家はどちらのご出身ですか」「〇〇のご出身だと、こちらは初めてですか」
- 「ご家族は何人でお住まいですか」「お父さんは何のお仕事を」
- 「ご結婚のご予定は」「お子さんはまだお考えですか」
- 「お住まいは持ち家ですか、賃貸ですか」
- 「奥さんはこの仕事に賛成されていますか」
- 「休みの日は何をされていますか」から発展して、信仰や政治の話に入っていく流れ
- 「尊敬する人はどなたですか」「最近読んだ本は」
最後の二つは面接の定番質問として広く使われてきましたが、思想信条をうかがう性質を持つため、公正な採用選考の観点では避けたい部類に入ります。「よく使われている質問だから安全」とは限らない、という点は面接官全員で共有しておきたいところです。
女性候補者にだけ結婚・出産の予定を尋ねる、といった扱いの差も注意が必要です。悪気のない配慮のつもりでも、男女雇用機会均等法の趣旨に照らして問題になりやすい聞き方です。
本当に知りたいことを、言い換えて確認する
面接官が家族構成や結婚予定を聞いてしまうのは、意地悪をしたいからではありません。「シフトに入れるのか」「通えるのか」「長く働いてくれるのか」を知りたいからです。であれば、その知りたいことを直接聞けば済みます。
| よくある言い回し | 本当に知りたいこと | 言い換え例 |
|---|---|---|
| ご結婚やお子さんのご予定は | 勤務時間・シフトに入れるか | 「当社は平日8時から17時、月2回程度の土曜出勤があります。この勤務条件で問題なくご対応いただけますか」 |
| ご実家はどちらですか | 通勤できるか、通勤手段 | 「通勤手段と、ドアツードアでおよそ何分くらいかかりそうかを教えてください」 |
| ご家族は反対していませんか | 夜勤・出張・転勤に対応できるか | 「年に数回、1泊程度の出張があります。対応可能かどうか、お聞かせください」 |
| お父さんのお仕事は | 本人の職歴・志望動機 | 「これまでのお仕事で、いちばん力を発揮できたと感じた場面を教えてください」 |
| 尊敬する人は/愛読書は | 仕事の価値観、人物像 | 「仕事をするうえで、これだけは大事にしたいと思っていることはありますか」 |
コツは、会社側の条件を先に提示してから、対応可否を尋ねる形にすることです。「あなたの事情はどうか」ではなく「この条件でいけるか」と聞けば、プライベートに立ち入らずに必要な情報が得られます。そして条件を先に伝えることは、入社後のミスマッチを防ぐことにもつながります。求人票と面接での説明がずれていないかは、求人票と面接での説明がずれると、辞退されるもあわせてご確認ください。
なお、候補者が自分から家族の話を切り出すことはあります。その場合に相づちを打つのは自然なことで、問題は会社側から尋ねて記録に残すことです。聞いた話をメモや評価シートに書き込まないという線引きは決めておきましょう。応募者情報の扱い全般は応募者の個人情報、どこまで社外に出していいのかで整理しています。
面接官が複数いるなら、A4一枚のメモにする
社長、部長、現場のリーダー。複数人で面接する会社ほど、質問の基準はばらつきます。研修を組むほどの時間が取れないなら、A4一枚のメモを面接前に配るだけでも効果が出やすくなります。ご支援の現場でお渡ししているのは、次の4項目に絞ったものです。
- 聞かない項目(本籍・出生地/家族の職業・収入/住居の種類/宗教・支持政党・思想/愛読書・尊敬する人物/結婚・出産の予定)
- 代わりに確認する項目(勤務時間の可否/通勤手段と所要時間/出張・夜勤の可否/入社可能日)
- 条件を先に伝えてから聞くという原則の一行
- 迷ったら聞かない。面接後に採用担当へ相談するという逃げ道
4番目を入れておくのが大切です。その場で判断に迷った面接官が、とりあえず聞いてしまう事態を避けられます。メモは面接シートの表紙にして、毎回目に入るようにしておくと定着しやすくなります。
質問の中身より前に、面接の準備や進め方そのものでつまずいているケースも少なくありません。面接官トレーニングの前に。中小企業の面接で本当に多いつまずきもご参考ください。
質問の前に、評価軸をそろえておく
聞いてはいけない質問が出てしまう背景には、「何を見極めればよいか決まっていない」という事情が隠れていることがあります。見るべき軸がないから、場をつなぐために雑談的な質問が増える。結果として、踏み込んではいけない領域に入ってしまう。この順番で起きていることが多い印象です。
必須要件を3つ程度に絞り、その3つを確認する質問を事前に決めておけば、面接の時間は自然と埋まります。要件の絞り込み方は求める人物像は3つに絞る。条件を並べすぎると決められないにまとめました。
面接の質問設計は、採用のごく一部です。応募を受けてから内定・入社までのあいだには、初回連絡、日程調整、面接前後のフォローと、細かな作業と判断が積み重なります。社外採用部(月額49,800円〜、初回設計費100,000円で、以降は支援内容・工数に合わせて個別にお見積りします)は、その候補者対応を会社に代わって担う採用事務局です。面接そのものは社長や現場が行い、それ以外の手間を外に出す。そんな体制づくりについては、佐々木純平代表以下、実務担当が具体的にご提案します。
面接の進め方や応募対応の詰まりについて気になる点があれば、お問い合わせよりお気軽にご相談ください。
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