学校やインターンの紹介会社から「1日だけ学生を受け入れてもらえませんか」と声がかかる。断る理由もないが、何をさせればいいのか見当がつかない。とりあえず工場や事務所を案内して、社長が会社説明をして、昼前に解散。学生は礼儀正しくお礼を言って帰り、その後の連絡は途絶える——。新卒の接点づくりに踏み出した会社で起きやすい流れです。

1dayの職場体験は、学生を囲い込むための場ではありません。「この会社で働いている自分」を学生が少しだけ想像できるようにする場です。そのために必要なのは、立派なプログラムでも専任の担当者でもなく、見せる順番と役割分担を先に決めておくことです。受け入れ側の負担を小さくしたまま組む方法を整理します。

見学だけで終わる1dayが、記憶に残らない理由

案内して説明して質問を受ける。この構成だと、学生の体験はほぼ「聞く」だけで終わります。半日経っても手が動いていないので、帰り道に残るのは建物の印象と社長の話し方くらいです。同じ週に3社まわった学生の中で、御社が区別されにくくなります。

もうひとつ起きやすいのが、会社の都合で見せる順番が決まってしまうことです。朝一番に会議室で会社概要を30分、そのあと現場、最後に質疑。学生にとっては、まだ何も見ていない段階で沿革や売上構成を聞かされることになります。説明は、現場を見たあとのほうが頭に入りやすいものです。

職場体験の目的を「会社を知ってもらう」ではなく「仕事の中身を一つだけ手で覚えて帰ってもらう」に置き換えると、組み立てはかなり楽になります。扱う情報量が減るぶん、準備も軽くなります。

半日〜1日の組み方。作業体験を一つだけ入れる

半日(3時間程度)であれば、おおよそ次のような配分が組みやすい形です。あくまで一例として見てください。

時間の目安内容担当
最初の15分出迎え、今日の流れの説明、休憩やトイレの案内受付・総務
30分職場を歩いて見る。何をしている場所かを一言ずつ現場の責任者
60〜90分簡単な作業を一つ体験する若手社員
20分若手社員との雑談(会社説明ではない)若手社員
20分会社の話、仕事の広がり、採用の流れ社長または採用担当
最後の10分感想を一言もらう、次の案内受付・総務

ポイントは作業体験を一つに絞ることです。あれもこれも触らせようとすると、その都度説明が必要になり、付き添う社員の手が完全に止まります。選ぶ基準は「30分教えれば未経験の学生でも形になる」「失敗しても製品や顧客に影響しない」「終わったときに成果物か結果が目に見える」の3つです。

製造なら部品の検品や組み立ての一工程、建設なら図面と現物を照らし合わせる作業、事務なら実際の様式を使った入力や封入、介護・福祉なら利用者に直接関わらない準備作業、といった切り出し方が考えられます。安全面や個人情報に触れる工程は最初から外しておきます。見せないほうがよい場所の線引きは、受け入れの前に現場責任者と決めておくと当日迷いません。現場を見せる段取りの考え方は入社前に現場を見せる。建設業の見学案内の組み方も参考になります。

誰に話させるか。社長の出番は最後でいい

学生が後日いちばん思い出すのは、年齢の近い社員との雑談であることが多いものです。入社3年目前後の社員に20分ほど話してもらう時間を、はっきり枠として取ってください。

その社員に頼むときは、「会社の良さを伝えてください」ではなく、具体的な問いを3つほど渡したほうが話しやすくなります。たとえば「入社前に想像していた仕事と、実際にやってみて違ったこと」「1日のうちで一番時間を使っている作業」「入社1年目にいちばん困ったこと」。こうした質問には誰でも答えられますし、学生が知りたいのもそこです。

社長の出番は最後の20分で足ります。現場と社員の話を聞いたあとなので、会社の方向性や「どんな人と働きたいか」という話が具体的に響きます。先に長く話してしまうと、そのあとの体験がすべて社長の話の確認作業のように感じられてしまいます。社長の時間の使いどころについては社長が採用面接だけに集中すると、採用は強くなるでも触れています。

現場社員に協力してもらうときは、頼む単位を小さく切ることです。「1日面倒を見てほしい」ではなく「90分だけこの作業を教えてほしい」「20分だけ質問に答えてほしい」と分けると、引き受けてもらいやすくなります。現場の巻き込み方は現場が採用に協力してくれない。巻き込み方の順番にまとめています。

終了時の一言と、その後の連絡の間隔

職場体験が良い時間になっても、そこで会社からの働きかけが止まれば、学生の記憶は他社の予定に上書きされていきます。かといって、その場で「ぜひ応募してください」と迫ると、好意的だった空気が一気に商談めいてしまいます。

終了時の一言は、次の行動と、連絡の約束の2つだけで足ります。たとえば「今日の内容で気になったことがあれば、いつでもこのアドレスに送ってください」「来月に説明会を予定しているので、よければご案内を送ります。送ってもいいですか」。後者のように、連絡してよいかを本人に確認しておくと、その後の連絡が自然になります。

連絡の間隔は、たとえば次のような置き方が考えられます。

用件がないのに毎週連絡すると重く感じられ、半年空けると忘れられます。この加減の考え方は内定から入社までの連絡頻度。多すぎ・少なすぎの境目と共通する部分があります。

あわせて、誰が来たかを記録に残してください。氏名、学校・学年、参加日、体験した作業、当日の会話で印象に残った一言。この5項目があれば、半年後に連絡するときに「あのとき検品をやってもらった◯◯さん」と書き出せます。名簿がないまま年を越すと、せっかくの接点は消えてしまいます。

1dayを続けるかどうかの判断

初年度は応募につながらないことのほうが多いものです。学生の学年や志望の固まり具合によっては、その年に採用する相手ではないこともあります。1回の受け入れで応募数が増えたかどうかだけを見て、やめる・続けるを決めないほうがよいでしょう。

見るとすれば、受け入れ側の負担が実際どれくらいだったか、学生の反応がどこで変わったか、翌年も同じ時期に受けられそうか、といった点です。学校経由で受け入れた場合は、先生に当日の様子を短く報告しておくと、翌年の案内につながりやすくなります。学校との関係づくりは高校・専門学校への求人票提出。学校とのつき合い方の基本でも整理しています。新卒採用全体の年間の流れを先に把握しておきたい方は、中小企業が新卒採用を始めるとき、何月から何をするかもあわせてご覧ください。

1dayの職場体験は、準備より「当日以降を誰が続けるか」でつまずきやすい取り組みです。受け入れ日程の調整、参加者への案内連絡、終了後の記録と定期的な連絡——どれも難しくはありませんが、本業の合間に続けるのは簡単ではありません。

社外採用部は、中小企業の採用事務局として、新卒・中途の母集団形成から応募の受付、日程調整、面接前後のフォロー、内定・入社フォローまでを社外から担います。学校や紹介会社との接点づくり、職場体験の参加者への案内や継続連絡も、支援の範囲に含まれます。面接そのものと採否の判断は御社にお任せし、その前後の実務を引き受ける形です。料金は月額49,800円〜、初回設計費100,000円。支援内容と工数に応じて個別にお見積りします。

学生との接点はつくれたのに、その後が続かない。そんな状態に心当たりがあれば、こちらからお気軽にご相談ください。