中小企業の採用で、社長ほど強い面接官はいません。会社の歴史も、仕事の厳しさも、これからの展望も、自分の言葉で語れるからです。ところが実際の採用現場では、その社長が応募メールの確認や日程調整に追われ、一番力を発揮できるはずの面接に、準備不足のまま臨んでいるケースが少なくありません。

社長が「全部やる」と、面接が一番割を食う

採用業務をざっと並べてみると、その多くは面接以外の実務です。

これらは一つひとつは小さな作業ですが、発生のタイミングが読めず、通常業務の合間に割り込んできます。結果として何が起きるかというと、応募書類に目を通すのは面接の直前、質問は行き当たりばったり、面接後のフォローは後回し——つまり、採用の成否を分ける面接そのものが、片手間になってしまうのです。

面接は「代われない仕事」、連絡業務は「代われる仕事」

ここで一度、採用業務を2つに分けて考えてみます。

社長にしかできない仕事誰かに任せられる仕事
候補者を見極める面接応募受付と初回連絡
会社の魅力を自分の言葉で語ること日程調整・リマインド
採用するかどうかの最終判断面接前後の事務連絡
処遇・条件の決定内定後の手続き案内

左の列は、会社の意思決定そのものです。ここを外部に任せることはできませんし、任せるべきでもありません。一方で右の列は、正確さとスピードが求められる実務であり、社長が自らやることに本質的な価値はない仕事です。

一般に、うまくいっている会社ほどこの線引きがはっきりしています。社長は面接の場に集中し、それ以外の連絡は決まった担当が確実に回す。この分業ができるだけで、面接の密度は目に見えて変わります。

面接に集中できると、何が変わるか

連絡業務から解放された社長の面接は、具体的にこう変わります。

準備の質が上がる

応募書類を事前に読み込む時間が取れるので、その人に合わせた質問を用意できます。「とりあえず志望動機から」ではない、一歩踏み込んだ対話ができます。

口説く時間がつくれる

中小企業の面接は、見極めの場であると同時に、会社を選んでもらう場でもあります。時間と気持ちに余裕があれば、仕事のやりがいや職場の雰囲気を丁寧に伝えられます。社長の言葉で語られる会社の話は、求人票の何倍も候補者に届きます。

判断がぶれなくなる

日程調整のストレスや「早く決めないと」という焦りは、採用判断を曇らせます。実務が整然と回っていれば、目の前の候補者を落ち着いて見ることができます。

まず今週からできる、小さな切り分け

体制を大きく変える前に、今週からできることもあります。

こうした小さな工夫だけでも、面接の密度は変わり始めます。ただし、応募のたびに発生する初回連絡や日程調整そのものは残ります。兼務の担当者に寄せれば、今度はその人の本来業務が圧迫されます。切り分けの考え方は正しくても、受け皿がなければ長続きしない——これが多くの会社が突き当たる壁です。

「任せる相手」がいない場合はどうするか

問題は、多くの中小企業に「右の列を任せられる人」がいないことです。総務担当は本来業務で手一杯、専任の採用担当を雇うほどの採用数もない——この状況なら、採用実務の部分だけを外部に持つ方法があります。

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