採用がうまくいかないとき、多くの会社は「なぜ断られたのか」を考えます。辞退の連絡が来れば理由を聞き、面接に来なかった人のことを振り返り、次はどう直すかを話し合う。これは大事な習慣です。

一方で、入社を決めてくれた人に「なぜうちに決めたのですか」と聞いている会社は、あまり多くありません。採ったら終わり、あとは現場に引き渡して通常業務に戻る。けれど、自社に実際に入ることを選んだ人の言葉は、求人原稿にも、応募後の連絡にも、面接での説明にも、そのまま使える材料になります。しかもそれは、入社から時間が経つほど聞けなくなっていきます。

負けた理由より、勝った理由のほうが使いやすい

辞退理由は、採用改善の出発点として有効です。ただ、辞退理由には限界もあります。ひとつは、角が立たない理由に置き換えられやすいこと。「他社に決まりました」「家庭の事情で」といった言葉の裏に何があったかは、本人しか知りません。もうひとつは、改善のヒントが「やめるべきこと」の形でしか出てこないことです。

承諾理由は逆です。入社した人は、すでに会社との関係ができています。悪いことを言う必要がないぶん、具体的な事実を素直に話してくれやすい。そして出てくるのは「続けるべきこと」「もっと前に出すべきこと」という形の情報です。

たとえば「求人票に載っていた1日の流れが、他社より具体的で想像しやすかった」という答えが返ってきたとします。これは次の求人原稿で何を厚く書くかを決める材料になります。「応募した日の夕方に電話が来たのが、この会社だけだった」という答えなら、初回連絡の速さが自社の勝ち筋だと分かる。どちらも、辞退理由からは出てきにくい情報です。

辞退の側の聞き方については辞退理由をどう聞くか。断られたあとの一言で次が変わるでも整理しています。両方そろって、はじめて自社の勝ちパターンと負けパターンが見えてきます。

入社1週間以内に、5分で聞く3つの質問

聞くタイミングは、入社から1週間以内が目安です。理由は単純で、選考中の記憶が薄れる前だからです。1ヶ月も経つと、他社と比べていた頃の感覚は現在の職場の印象に上書きされ、「なんとなく良さそうだったので」という答えに丸まってしまいます。

長い面談にする必要はありません。5分で聞けるのは、次の3つです。

1. 他にどこを受けていましたか

会社名まで無理に聞き出す必要はありません。業種、社数、どの段階まで進んでいたか。これだけで、自社がどんな土俵で比較されていたかが分かります。同じ地域の同業と比べられていたのか、まったく別の業種と迷っていたのかで、求人原稿で強調すべき点は変わります。同じ地域の他社と比べられている。応募後にどこで差がつくかの観点とあわせて見ると、比較軸が整理しやすくなります。

2. 最終的に何が決め手でしたか

「給与」「通勤時間」といった条件が出てくることもあれば、「面接で聞いたことに正直に答えてもらえた」「連絡が丁寧だった」といった対応面が出てくることもあります。条件が決め手だった場合は、その条件を求人の見出しに持ってこられているかを確認する。対応が決め手だった場合は、誰のどの連絡がそう感じさせたのかまで、もう一歩だけ掘っておきます。

3. 応募してから入社までで、不安だった点はありますか

これが最も見落とされやすく、最も価値のある質問です。入社した人は不安を乗り越えた人ですが、同じ不安を乗り越えられなかった人が、辞退した候補者の中にいた可能性があります。「連絡が来ない期間があって、落ちたのかと思った」「面接の場所が分かりにくかった」といった答えは、そのまま改善項目になります。

誰が聞くか。社長が聞くと本音は出にくい

ここが運用上の分かれ目です。社長や面接をした役員が聞くと、入社したばかりの人は「御社の理念に共感しまして」といった、角の立たない答えに寄せがちです。相手は選考で自分を評価した人であり、これから評価する人でもあります。正直に「給与がいちばん高かったから」とは言いにくいものです。

できれば、選考に関わっていない人が聞く形にします。総務や事務の担当者、あるいは受け入れ先の先輩社員。「社内で記録を取っているので、2、3だけ教えてください」という事務的な切り出し方のほうが、かえって素直な答えが返ってきやすくなります。採否に関係ない記録であることを、最初に一言添えておくと安心されます。

面談の時間を別に取るのが難しければ、入社初日や1週間後の短い声かけのついでで構いません。入社後の面談の設計については入社1ヶ月面談で聞くこと。早期離職の芽をつかむ質問も参考にしてください。評価面談とは混ぜないほうが、どちらの目的にも素直に答えてもらいやすくなります。

聞いた答えを、どこに戻すか

聞きっぱなしで終わらせないために、答えの種類ごとに戻し先を決めておきます。

返ってきた答えの例主な戻し先
仕事内容の説明が具体的で分かりやすかった求人原稿(仕事内容欄の書き方を維持・強化)
連絡が早かった/丁寧だった初回連絡の運用(速さと文面を型として固定)
残業や休日の実態を正直に話してもらえた面接での説明項目(同じ質問に同じ答えを用意)
面接までの間、落ちたのかと不安だった面接前フォロー(間を埋める連絡を1本追加)
通勤時間が他社より短かった求人の見出し(勤務地・アクセスを前に出す)

記録は、応募者管理表の備考欄に数行書き足すだけでも足ります。大事なのは、年に1回でも、溜まった答えをまとめて読み返す時間を取ることです。仮に年間3人採用している会社なら、3年で9人分。似た答えが2つ3つ重なれば、それが自社の強みだと考えてよいでしょう。逆に、不安だった点として同じ指摘が続くなら、そこは応募後の流れに穴が空いています。

なお、求人原稿を書き直すときは求人原稿を自分で書くとき、埋める順番は仕事内容からの順番に沿って、入社者の言葉を仕事内容の記述に差し込んでいくと形になりやすくなります。自社が思っている強みと、選ばれた理由がずれていることは珍しくありません。

小さく始めて、続ける

この取り組みに費用はかかりません。必要なのは、入社した人に5分の時間をもらうことと、聞いた内容を残す場所を決めることだけです。それでも続かないのは、入社直後は受け入れ業務で社内が立て込んでいて、優先順位が下がるからです。

だからこそ、「入社1週間以内に3つ聞く」を受け入れ準備の手順の中に組み込んでしまうのが現実的です。書類の回収や備品の受け渡しと同じ列に並べておけば、担当者が変わっても残ります。

当社の社外採用部では、応募の受け付けから初回連絡、日程調整、面接前後のフォロー、内定・入社フォローまでを採用事務局として代行し、母集団形成の運用もあわせて支援しています。入社者から聞き取った内容を次の求人や連絡文に反映していく作業も、その流れの中で引き受けられます。面接そのものと採否の判断は御社に残したまま、それ以外の実務と振り返りを外に置く形です。

「採れた理由が分からないまま、毎回ゼロから募集している」と感じている方は、お問い合わせからお気軽にご相談ください。いまの採用の流れを一度うかがったうえで、どこから手を付けるかをご提案します。