面接まで進んだ候補者から「他で決まりました」と連絡が来る。人が足りないまま、現場が今月も残業でしのいでいる。選考に時間がかかっていることは薄々わかっていても、「数日早くしたところで、何が変わるのか」と感じている経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、選考期間を1週間縮めたときの効果を、欠員1日あたりの損失と辞退の減少の2つに分けて金額に置き換えます。そのうえで、どの工程なら縮めやすく、どこから手を付ければよいかを整理します。
選考が長いと、2つの経路でお金が出ていく
応募から内定承諾までの日数が延びると、損失は2つの経路で生まれます。
1つ目は欠員が続く日数です。選考が1週間長ければ、入社日も1週間後ろにずれる可能性があります。その間、残業代や断った仕事の売上、既存社員の疲れといった欠員のコストが積み上がり続けます。
2つ目は選考中の辞退です。候補者は自社の連絡を待つあいだも、他社の選考を並行して進めることがあります。待つ時間が長いほど、他社から先に内定が出る機会も増えます。比較の土俵に立つ前に他社で決まってしまえば、その候補者にかけた広告費と面接の手間は回収できず、次の候補者が決まるまで欠員も延びます。
ただし、在職中の候補者の場合は、退職の申し出と引き継ぎで入社日が決まることがあります。この場合、選考を縮めても入社日は動かず、1つ目の効果は小さくなります。効果を見積もる前に、自社の候補者が離職中か在職中かを確認しておくと、数字を盛りすぎずに済みます。
1週間短縮の効果を、2つの数字で計算する
ここからは仮の数字で計算してみます。欠員による月あたりの損失の出し方は「欠員1人のまま回すと、毎月いくら失っているのか」で、辞退1件あたりの損失は「内定辞退1件で、いくら失っているのか」で詳しく扱っています。この記事では、その2つを「1週間」という単位に当てはめる手順に絞ります。
前提として、たとえば年に2人を採用する会社を考えます。
| 項目 | 仮の前提 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 欠員1日あたりの損失 | 欠員の損失を月30万円と見積もる | 30万円 ÷ 30日 | 1万円/日 |
| 入社の前倒し | 2人とも入社が1週間早まる | 1万円 × 7日 × 2人 | 14万円 |
| 辞退1件の損失 | 広告費の按分と選考の社内工数で8万円、次の候補者が決まるまで欠員が14日延びる | 8万円 + 1万円 × 14日 | 22万円 |
| 辞退の減少 | 選考中の辞退が年3件から2件に減ると仮定 | 22万円 × 1件 | 22万円 |
| 合計 | — | 14万円 + 22万円 | 36万円/年 |
この計算でいちばん不確かなのは「辞退が何件減るか」です。これは会社ごとに違うため、自社の記録から見積もります。過去1年の辞退者のうち、辞退理由に「他社で先に決まった」「連絡を待っている間に気持ちが離れた」といった、時間に関係する理由が含まれていた件数を数えてみてください。それが短縮で取り戻せる可能性のある件数の上限です。
辞退がまったく減らないと控えめに見ても、入社の前倒し分の14万円は残ります。反対に、候補者の多くが在職中で入社日が動かないなら、効果はほぼ辞退の減少分だけになります。自社の数字を入れると「最低いくら、うまくいけばいくら」という幅が出るので、その幅を、面接枠を確保する手間や外部の手を借りる費用と並べて比べると判断しやすくなります。
縮めやすい工程と、縮めにくい工程
選考期間は、面接そのものよりも工程と工程の間の「待ち」で延びていることがあります。どこで日数が延びているかを工程ごとに分けると、手を付けやすい順番が見えてきます。
| 工程 | 日数が延びる理由 | 縮めやすさ |
|---|---|---|
| 日程調整 | 候補日の往復、面接官の予定確認待ち | 縮めやすい |
| 合否決裁 | 決裁者の不在、判断基準が決まっていない | 縮めやすい(社内だけで完結する) |
| 書類待ち | 履歴書の郵送待ち、内定通知書の作成待ち | 縮めやすい |
| 面接の回数 | 一次と二次の間の再調整 | 中間(減らすと見極めに影響する) |
| 候補者の在職事情 | 退職の申し出と引き継ぎ | 縮めにくい |
| 内定後の検討期間 | 他社との比較、家族との相談 | 縮めにくい(急かすと逆効果) |
縮めやすい3つの工程は、どれも自社側の段取りで決まる「待ち」です。一方、候補者の退職事情や内定後の検討期間は相手の時間です。ここを無理に縮めようとすると、押し込まれたと受け取られ、かえって辞退を招くことがあります。短縮の対象は、まず自社の都合で生まれている日数に絞るのが安全です。
どこから手を付けるか。社内だけで縮められる工程が先
手を付ける順番は次のとおりです。
1. 工程ごとの日数を測る 応募日、初回連絡日、面接日、合否連絡日、内定通知日、承諾日の6点を、直近の候補者数人分だけでも書き出します。日付の差を取れば、どの工程で何日かかっているかがわかります。
2. 合否決裁から縮める 決裁は候補者を巻き込まず、社内の決めごとだけで短くできます。誰が、面接後何日以内に決めるのか、社長が不在のときは誰が判断するのかを先に決めておくと、決裁待ちの日数が縮みやすくなります。決め方は「採用の決裁ラインの決め方。誰が最終判断するかで連絡は速くなる」を参考にしてください。
3. 日程調整を縮める 応募が来てから面接官の予定を探すのではなく、毎週の面接枠を先に押さえておき、初回連絡の時点で候補日を提示します。往復が1回減るだけでも、日数は変わります。
4. 書類待ちを縮める 履歴書は面接当日の持参にする、内定通知書はひな形を用意して条件を書き込むだけにする、といった工夫で待ちの日数を減らせます。
1週間という単位は、1つの工程で一気に縮めるものではありません。たとえば決裁で3日、日程調整で2日、書類で2日縮めれば合計7日です。小さな待ちを足し合わせて1週間をつくる、と考えると現実的に取り組めます。
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