内定を出した相手から辞退の連絡が入る。あの瞬間の「もったいない」という感覚は、経営者であれば誰でも覚えがあると思います。ただ、その「もったいない」がいくらの損失なのかを、金額で答えられる会社は少ないのではないでしょうか。数字にならないままだと、辞退は「残念な出来事」として処理され、来月にはまた同じことが起きます。

一方で、辞退1件の損失額を自社の数字で計算してみると、内定者フォローに人と時間を割く判断が、急に現実的なものとして見えてきます。この記事では、辞退による損失を「広告費の按分」「選考にかけた社内工数」「欠員が埋まらない期間の機会損失」という3つの層に分けて計算する考え方をご紹介します。金額は業種や会社規模でまったく違うので、以下はすべて仮の数字です。式だけを持ち帰って、自社の数字を入れてみてください。

損失は3層に分けると見える

辞退の損失を1つの金額でつかもうとすると、必ず「感覚」になります。分けて考えると、それぞれ別の伝票から拾ってこられるようになります。

層何の損失か計算式
第1層使った広告費が回収できなかった分その掲載の費用 ÷ そこから得た内定者数
第2層選考にかけた社内の人件費(関与者ごとの時給 × その候補者に使った時間)の合計
第3層欠員が埋まらない期間の機会損失欠員1人あたりの月間影響額 × 再採用で延びた月数

第1層と第2層は「すでに払ったお金」、第3層は「これから出ていくお金・入ってこないお金」です。性質が違うので、足し算する前に分けて把握しておくほうが、判断を誤りにくくなります。

第1層:広告費は「内定者数」で割る

求人広告の費用を評価するとき、応募1件あたりの単価で見ている会社が多いのですが、辞退の損失を測る場面では内定者数で割るほうが実態に近づきます。

仮に、30万円の掲載で応募が12件、面接が5件、内定が2名だったとします。内定1名あたりにかかった広告費は15万円です。ここで1名が辞退すれば、15万円分は回収できていないことになります。そして残った1名も入社まで進まなければ、30万円がまるごと未回収です。

この層は、応募単価だけを見ていると絶対に見えてきません。応募単価・面接単価・採用単価を分けて見る考え方は採用コストの考え方。1人あたり採用単価をどう下げるかで整理していますので、あわせてご覧ください。

第2層:選考にかけた社内工数を時給に換算する

見落とされやすいのが、この層です。お金が動いていないので伝票が残らず、「もともと払っている給料の範囲」として消えていきます。

計算の手順はシンプルです。まず、その候補者1名に誰が何分使ったかを書き出します。仮に次のような内訳だとします。

合計で約5時間。ここに関与者の時給をかけます。社長の時給を仮に8,000円、総務担当を3,000円とすると、社長が2.5時間で20,000円、総務が2.5時間で7,500円。合わせて約2.8万円です。

金額そのものは大きく見えないかもしれません。しかし注目すべきは中身です。この2.8万円のうち、社長の時間が7割を占めています。しかも消えたのは、面接という会社にとって最も代えのきかない時間です。社内工数を時給に置き換える具体的な手順は社長と総務が採用に使っている時間は、いくらのコストかの考え方とも重なりますが、辞退の文脈では「この時間が1円も回収できていない」という点が重要になります。

第3層:欠員が埋まらない期間の機会損失

3層のなかで、多くの中小企業にとって最も金額が大きくなりやすいのがここです。そして最も見落とされます。

内定辞退が起きると、採用は振り出しに戻ります。再掲載し、応募を待ち、また面接を組む。この間、埋まらなかった1人分の穴は現場が埋め続けます。欠員1人あたりの月間影響額は、業種によって拾い方が変わります。

仮に、欠員によって毎月15万円の残業代と外注費が発生しているとします。辞退から再度の内定までに2ヶ月かかったとすれば、この層の損失は30万円です。営業職で1人あたり月間粗利を40万円と置くなら、同じ2ヶ月で80万円になります。

ここまでを足すと、仮の数字で 15万円+2.8万円+30万円=約48万円。営業職の例なら約98万円です。金額の大きさは、第3層の置き方でほぼ決まります。だからこそ、この層は保守的に見積もっておくのがよいと思います。粗利をそのまま計上すると数字が大きくなりすぎて、社内で「そんなに失っているはずがない」と信用されなくなります。まずは残業代や外注費のように、実際に支払いが発生している金額から拾うことをおすすめします。

金額が出たあと、どこに使うか

損失額を出す目的は、落ち込むためではありません。フォローに手をかける投資判断の材料にするためです。

仮に辞退1件で48万円を失っているとして、内定から入社日までのフォロー連絡に月2時間、社内の誰かが使うとします。時給3,000円なら6,000円です。この6,000円で辞退が1件減る可能性があるなら、判断は明らかです。逆に「フォローに時間をかける余裕がない」という理由で放置していると、48万円のほうが先に出ていきます。

もうひとつ、この計算には副産物があります。3層に分けると、どの工程を直すべきかが見えてくることです。第1層が大きい会社は、広告費に対して内定まで進む人数が少なすぎるので、応募後の初動を点検する順番になります。第3層が大きい会社は、欠員が長引くこと自体が最大のコストなので、選考期間の短縮と内定後フォローの両方に手を入れる価値があります。

そして辞退そのものは、多くの場合、突然ではありません。承諾後の反応の変化として兆候が出ることが多く、そこを拾えるかどうかで結果が変わります。具体的な兆候の見方と時期別のフォロー設計は内定辞退は直前に起きる。兆候のつかみ方と入社までのフォローに、通知の出し方そのものが承諾に効く理由は内定通知の出し方で承諾率は変わる。伝え方とスピードにまとめています。

一度、直近で辞退が出た1件について、この3層を紙に書いて計算してみてください。おそらく想像していたより大きな数字が出ます。その数字が出たあとで、フォローを誰がやるのかという話をすると、社内の議論の質が変わってきます。

「金額はわかったが、社内にフォローを回す手が残っていない」という段階でしたら、応募の受付から初回連絡、日程調整、面接前後のフォロー、内定・入社フォローまでを社外の採用事務局として引き受けるのが、私たち「社外採用部」の役割です。月額49,800円〜、初回に設計費100,000円をいただき、以降は支援内容・工数に合わせて個別にお見積りする形をとっています。自社の辞退がどの層で損失を生んでいるのかを一緒に整理するところからでも構いません。まずはこちらからご相談ください。サービス責任者の佐々木がお話を伺います。