「普段はなんとか回っているのに、あの時期だけはどうにもならない」。採用のご相談をいただく中で、こうしたお話をよく伺います。年度末に向けた増員、夏の繁忙期前の人員確保、期末の欠員補充。求人を集中して出す時期は会社によって違いますが、その山の月だけ応募対応が追いつかず、せっかくの応募を取りこぼしてしまう。この繰り返しに心当たりのある方は少なくないはずです。
やっかいなのは、この問題が「一年のうち数ヶ月」の話だという点です。だから採用担当を新たに雇うほどではない。かといって放置すれば、最も採りたい時期に最も採れないという状態が毎年続きます。この記事では、繁忙期に応募対応が破綻する構造を整理したうえで、人を増やさずに山を越えるための備え方を考えます。
応募は増えても、対応できる人の時間は増えない
繁忙期に採用が回らなくなる理由は、実はシンプルです。応募件数は求人の出し方次第で何倍にもなりますが、対応する側の時間は増えないからです。
しかも多くの中小企業では、採用の山と本業の山が重なります。年度末に人を増やしたい会社は、年度末の業務そのものも忙しい。夏前に人手が要る会社は、夏前の準備で現場が動いている。応募対応を担っている社長や総務の方が、最も時間を取れない時期に、最も多くの応募が届くわけです。
さらに、繁忙期は「面接官が捕まらない時期」でもあります。候補日を出そうにも現場の予定が埋まっていて、日程調整が長引く。連絡が遅れ、候補者は先に話が進んだ他社へ流れていく。応募数だけを見れば成功しているのに、面接まで進んだ人数は普段と大差ない、ということが起こります。
この状態は、精神論では解けません。「今月は気合いで乗り切ろう」と言っても、一人が一日に使える時間は変わらないからです。
件数と工数を、通常月と繁忙月で並べてみる
自社の山がどれくらいの大きさなのかを、一度数字で見ておくことをおすすめします。以下はあくまで仮の数字ですが、構造を掴むためのイメージとして挙げます。
| 通常月 | 繁忙月 | |
|---|---|---|
| 月間応募数 | 10件 | 30件 |
| 1件あたり対応時間(初回連絡・日程調整・前後フォロー) | 60分 | 60分 |
| 応募対応にかかる合計時間 | 10時間 | 30時間 |
| 対応者が採用に割ける月間時間 | 15時間 | 8時間 |
たとえばこのような形になっていたとすると、通常月は15時間の余裕に対して10時間の作業ですから、なんとか回ります。ところが繁忙月は、必要な時間が30時間に増えるのに、本業が忙しくて割ける時間は8時間に減る。差し引き20時間以上が足りていない計算になります。
足りない20時間分は、どこかにしわ寄せがいきます。返信が翌日以降になる、日程調整が往復で止まる、面接前のリマインドが省かれる。結果として、応募は増えたのに面接設定率は下がるという、費用対効果の悪い月ができあがります。
自社の数字を出すときは、応募1件あたりに何分かかっているかを実測してみてください。感覚より長いことが多いはずです。工数を金額に換算する考え方は社長と総務が採用に使っている時間は、いくらのコストかで詳しく整理しています。
山が来る前の2〜3ヶ月でやっておくこと
繁忙期対策の大半は、繁忙期が来る前にしか打てません。山の最中にできることは限られます。準備の中身は、大きく3つに分けられます。
1つめは、判断を減らしておくことです。 初回連絡の文面、面接案内、前日リマインド、不採用連絡。繁忙期に毎回ゼロから文章を考えていては間に合いません。よく使う連絡の型を事前に用意しておくだけで、1件あたりの対応時間は目に見えて短くなります。
2つめは、面接枠を先に押さえることです。 応募が来てから面接官の予定を探すと、候補日の提示までに数日かかります。繁忙期に入る前に「毎週火曜と木曜の16〜18時は面接枠」といった形で仮押さえし、埋まらなければ前日に解放するルールにしておくと、候補日の即日提示ができるようになります。
3つめは、通知の集約です。 媒体を増やして応募数を稼ぐ時期ほど、通知先が散らばって見落としが起きます。どこに応募が届き、誰が最初に見るのかを一箇所に決めておくことが、山の月の抜け漏れを防ぎます。
これらは繁忙期でなくても効く整備ですが、平常時は「まあ今のままでも回るから」と後回しになりがちです。むしろ、次の山までの余裕がある時期こそ手を付けどきだと考えてください。応募後の各工程を洗い出す手順は応募から入社までのフロー図を描くと、課題は一目でわかるが参考になります。
常設ではなく、期間限定で手を借りるという発想
準備を整えても、埋まらない差はどうしても残ります。仮の試算で20時間足りないとしたら、型文と面接枠の整備で10時間は縮められたとしても、残りは人手の問題です。
ここで多くの会社が迷うのが、「そのために人を雇うのか」という判断です。年間で3ヶ月しか発生しない負荷のために通年の人件費を持つのは、経営としては重い。かといって放置すれば、その3ヶ月に出した広告費の効果が薄まります。
現実的な選択肢は、山の期間だけ外の手を借りることです。方法はいくつかあり、派遣やスポット人材を入れる、代理店に一部を任せる、応募後の対応を専門に受ける事務局機能を使う、といった形が考えられます。それぞれ立ち上がりの速さや指示にかかる手間が違うため、比較の視点は採用事務を派遣・スポット人材に任せる場合との違いにまとめています。
期間限定で外部を使うときの注意点は、山が来てから探し始めないことです。どの方法を取るにせよ、業務の内容を伝え、連絡の型をすり合わせ、判断の基準を共有する時間が要ります。応募が殺到してから依頼先を探すと、立ち上がる頃には山が過ぎているということになりかねません。目安としては、繁忙期の1〜2ヶ月前には話を始めておくと、間に合いやすくなります。
また、繁忙期に外部と組んだ経験は、翌年以降の資産になります。一度型ができていれば、翌年は同じ枠組みを短い準備期間で再開できます。毎年ゼロから慌てる状態から抜けるための、最初の一回だと捉えてみてください。
波は予測できる。だから備えられる
採用の繁忙期が厄介なのは、突発的だからではありません。むしろ多くの会社では、山が来る時期はおおよそ決まっています。年度末なのか、夏前なのか、特定の受注に連動しているのか。過去1〜2年の応募データや求人の出稿履歴を見れば、自社の波の形は掴めるはずです。
予測できるということは、備えられるということです。まずは今年の山がいつだったか、その月に応募が何件来て、何件が面接に進んだかを振り返ってみてください。応募数と面接設定率のギャップが大きければ、それは母集団の問題ではなく対応力の問題です。
そのうえで、次の山までに何ヶ月あるかを数える。型文の整備、面接枠の運用、外部の手の確保。この順番で手を打っていけば、来年の同じ月の景色は変えられます。
社外採用部は、応募の受付から初回連絡、日程調整、面接前後のフォロー、内定・入社フォローまでを社外で担う採用事務局です。応募が集中する時期だけ手が足りない、という状態のご相談も多くいただいています。自社の波の大きさをどう見積もるか、どこから任せると効くのかも含めて、まずは現状をお聞かせください。
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