「求人広告にお金をかける余裕はないので、ハローワークと無料枠だけで出しています」。中小企業の経営者から、よく聞く話です。掲載料がかからない以上、採用にかかった費用はゼロ。会計上はたしかにそう見えます。

ただ、掲載料がゼロであることと、採用が無料で済んでいることは別の話です。原稿を書く時間、問い合わせに応じる時間、そして人が決まるまでに流れていく月日。これらは請求書にならないだけで、確実に会社の資源を使っています。この記事では、無料掲載だけで採用する場合に実際どんな費用が発生しているのかを時間と金額に置き換え、無料を続けてよい条件と、有料に切り替えてよい判断ラインを整理します。

掲載料ゼロでも、請求書にならない費用は発生している

無料で求人を出す方法には、ハローワーク、自治体の無料求人サイト、求人検索エンジンの無料枠、自社サイトへの掲載などがあります。どれも掲載そのものにお金はかかりません。

一方で、次の3つは無料掲載でも発生します。

  1. 原稿を作る・直す工数(社内の人件費)
  2. 決まるまでの期間が延びることによる欠員損失(機会損失)
  3. 要件に合わない応募への対応時間(社内の人件費)

いずれも現金の支出を伴わないため、「かかっていない」ことになりがちです。しかし外部に支払う掲載費と同じく、会社の利益を削っている点では変わりません。無料支援でどこまでできるのかという線引きはハローワークや自治体の無料支援で、どこまでできるのかでも整理していますが、ここでは「かかっている費用」の側から見ていきます。

原稿作成と更新の工数を、時間で数える

無料掲載は、原稿を書くのも直すのも自社です。有料媒体なら営業担当や制作スタッフが原稿を作る場合もありますが、無料枠ではその分の作業が社内に残ります。

仮の数字で置いてみます。ここに出す時間も金額もあくまで例であり、実際の数字は会社によって変わります。

作業想定時間(仮)発生頻度
初回の原稿作成(仕事内容・条件の整理含む)3時間掲載開始時
求人票の提出・登録手続き1時間掲載開始時
応募がないときの文面見直し1時間月1回程度
有効期限切れに伴う再掲載手続き1時間2〜3ヶ月に1回

初回に4時間、その後は月1〜1.5時間ほど。これを担当者の人件費で時給2,500円(仮)と置くと、初回に1万円、以降は毎月2,500〜4,000円ほどが社内で消えている計算になります。半年続ければ、合計は2万数千円。小さな額に見えますが、これは「原稿を触る時間」だけの数字で、応募後の対応は含んでいません。応募対応まで含めた工数の数え方は社長と総務が採用に使っている時間は、いくらのコストかで手順を紹介しています。

もう一つ見落とされやすいのが、この時間を使っているのが社長や管理部門の責任者であることが多い点です。時給換算の単価が高い人ほど、本業の判断に使うべき時間を原稿に充てていることになります。

決まらない期間が、いちばん大きな費用になる

無料掲載で起きやすいのは、応募がまったく来ないことよりも、「少しずつ来るが決まらないまま月が流れる」状態です。有料媒体に比べて露出が限られるぶん、同じ人数を採るまでの期間が長くなりやすい傾向があります。

ここで効いてくるのが欠員損失です。人が1人足りないまま現場を回すと、残業代の増加、受けられたはずの仕事の見送り、既存社員の負担増が同時に進みます。仮に、欠員1人あたりの月次損失を15万円と置いたとします(これも仮の数字です)。採用が2ヶ月遅れれば30万円。この金額は、有料掲載を1回出す費用を上回ることが少なくありません。

つまり「掲載費を節約したこと」と「採用が遅れたこと」を並べて見ると、節約した金額より失った金額のほうが大きくなる場合がある、ということです。欠員の損失をどう計算するかは欠員1人のまま回すと、毎月いくら失っているのかに計算式をまとめていますので、自社の数字を入れてみてください。

逆に言えば、欠員による損失がほとんど発生していない募集——たとえば「いい人がいれば採る」という増員枠——であれば、この費用はほぼゼロです。そういう募集なら、無料掲載でじっくり待つ選択に無理はありません。

要件外の応募に使う時間も、コストです

無料で出せる求人は応募のハードルも低く、要件に合わない応募が一定数混ざりやすくなります。これ自体は悪いことではありませんが、1件ごとに連絡し、確認し、見送りを伝える時間は必ず発生します。

仮に、1件あたり初回連絡と見送り連絡で20分かかるとします。月に要件外の応募が5件あれば100分、時給2,500円換算で約4,000円。件数が増えればそのまま比例して増えていきます。しかも、この時間は本命の候補者への連絡を後ろにずらす原因にもなります。応募当日に連絡できるかどうかで面接に進む確率は変わりやすく、対応の遅れは掲載費とは別の形で採用機会を削ります。

この費用を抑える方法は、掲載をやめることではなく、見送りの判断を早く確実に行うことです。書類の見方をあらかじめ決めておけば迷う時間が減り、条件が合わない応募者に、その日のうちに丁寧に断るで触れたとおり、その日のうちに処理が終わります。

無料を続けてよい条件と、有料に切り替える判断ライン

ここまでの3つを踏まえると、無料掲載だけで続けてよいのは次のような場合です。

一方、次のどれかに当てはまるなら、有料の手を入れるか、応募後の対応を整えるかを検討する時期と考えられます。

ただし注意したいのは、応募が届いているのに面接に進んでいないケースです。これは掲載の問題ではなく応募後の対応の問題であることが多く、有料掲載に切り替えても結果が変わりにくい場面です。順番としては、まず面接設定率という指標。応募からの歩留まりを測る第一歩で自社の歩留まりを確認し、そのうえで予算を振り向ける先を決めると判断を誤りにくくなります。そして有料に切り替えるなら、出す前に1人あたりいくらまで使えるかを決めておくことをおすすめします。

無料か有料かは、本来「どちらが安いか」ではなく「どこにお金と時間を置くか」の配分の問題です。掲載費を抑えた分の負担が社内の誰かの時間に移っているなら、その時間にも値段がついていることを、一度計算して確かめてみてください。


社外採用部は、求人・媒体の運用から、応募の受付・初回連絡・日程調整・面接前後のフォロー、内定や入社後のフォローまでを、御社の採用事務局として社外からお引き受けします(面接そのものと採否の判断は御社にお任せします)。料金は月額49,800円〜、初回設計費100,000円。以降は支援内容と工数に合わせて個別にお見積りします。

「掲載費をかけるべきか、社内の手を空けるべきか」で迷っている段階でも構いません。自社の数字を一度整理してみたい方は、こちらからお気軽にご相談ください。