「うちの採用、何が悪いんでしょうか」。この質問をいただいたとき、私たちが最初にお願いするのは、高度な分析ではありません。応募から入社までの流れを、一枚の紙に描いてみることです。たったこれだけで、それまで「なんとなく採用がうまくいかない」だった悩みが、「この段階で人が消えている」という具体的な課題に変わります。

フロー図の描き方

まず、段階を書き出す

紙でもホワイトボードでもスプレッドシートでも構いません。左から右へ、候補者がたどる段階を並べます。標準的にはこの7段階です。

  1. 応募
  2. 初回連絡(つながった)
  3. 面接日程の確定
  4. 面接の実施
  5. 内定
  6. 内定承諾
  7. 入社

会社によっては書類選考や二次面接、職場見学が入ります。実態に合わせて増減してください。大事なのは、頭の中にある流れを目に見える形に出すことです。描いてみると「この段階、実は誰も担当が決まっていない」といった発見が、この時点ですでに出てくることもあります。

次に、直近の人数を書き込む

過去数か月分の応募について、各段階を通過した人数を書き込みます。正確な記録がなければ、思い出せる範囲の概算で構いません。最初の一枚は精度より完成が大事です。月をまたぐ場合は「その月に応募した人がどこまで進んだか」で追いかけると、数字のずれが起きにくくなります。

書き込んでみると、必ずどこかに数字が大きく減る段階が見つかります。その減り方こそが、あなたの会社の採用課題の場所です。

減る場所ごとの読み方

応募→初回連絡で減る

応募に気づくのが遅い、電話がつながらないまま放置している、といった初動の課題です。連絡手段とタイミングの見直しがそのまま効きます。この段階の落ち込みは、直すのが最も簡単で、効果も最も早く出ます。

初回連絡→日程確定で減る

日程調整の往復が長い、候補日を提示できていない、社内の予定確認に時間がかかる。やり取りの設計の問題です。

日程確定→面接実施で減る

いわゆる無断キャンセル・直前辞退です。日程確定から当日までの案内やリマインドが足りていないサインです。候補者が悪いのではなく、空白期間の設計がないだけ、というのが私たちの実感です。

面接→内定、内定→承諾で減る

面接の内容や条件面の課題に加え、面接後の連絡の遅さ、内定後の放置が影響している可能性があります。

描くときによくあるつまずき

数字が分からず手が止まる

過去の記録がない場合、最初の一枚は「たしかこのくらい」で構いません。むしろ「数字が分からない段階がある」こと自体が大きな発見です。そこは、これまで誰も見ていなかった場所だからです。今日から記録を始めれば、来月にはより正確な図が描けます。

段階を細かくしすぎる

最初から連絡手段別の枝分かれや職種ごとの内訳まで描き込もうとすると、完成しないまま止まります。まずは粗い図で全体をつかみ、課題が見えた段階だけをあとから拡大するのが現実的です。

一度描いて満足する

フロー図は健康診断と同じで、定点観測してこそ意味があります。月に一度、同じ図に最新の数字を書き込む時間を予定に入れておくことをおすすめします。数字の変化が、そのまま打ち手の効果測定になります。

フロー図がもたらすもう一つの効果

フロー図の価値は、課題の特定だけではありません。社内の共通言語になることです。

社長は「応募が少ない」と言い、総務は「面接に来ない」と言い、現場は「いい人が来ない」と言う。それぞれ見ている段階が違うだけで、全員が正しいことはよくあります。一枚の図を囲めば、議論は「誰が悪いか」から「どの段階を直すか」に変わります。

また、図に「各段階を誰が担当しているか」を書き添えると、特定の人に業務が集中している様子や、担当が曖昧なまま放置されている段階も見えてきます。

描いたあとが本番

フロー図は診断であって、治療ではありません。課題の段階が見えたら、そこを直す運用を作り、数字が変わったかを翌月また図に書き込む。この繰り返しが採用力になります。

社外採用部では、支援の最初にこのフロー整理をお客様と一緒に行い、以後は応募受付から内定・入社フォローまでの実務を採用事務局として代行しながら、各段階の数字を毎月ご報告しています。自社のフロー図をまだ描いたことがなければ、無料相談の場で一緒に描いてみませんか。30分もあれば、課題の場所は見えてきます。