苦労して採用した人が、三ヶ月ほどで「実は前から考えていまして」と辞めていく。振り返ってみると、入社してすぐの頃に何か言いかけていた気がする——そんな経験をされた経営者の方は少なくないと思います。
入社直後の違和感は、入社から一ヶ月くらいの間だけは本人の口から出てくることが多いものです。その時期を過ぎると、本人は「まあ、こういう会社なんだろう」と諦めるか、社内で言っても仕方ないと判断して黙ります。黙った不満は解決されないまま残り、転職活動という形で表に出てきます。だからこそ、聞くタイミングは早い方がよく、しかも短い時間で構いません。
違和感が言葉になる期間は、意外と短い
入社したばかりの人は、まだ社内の常識に染まっていません。備品の場所がわかりにくい、朝礼の意味がわからない、指示を出す人が二人いてどちらに従うか迷う。こうした細かいことに気づけるのは、外から来た人だけです。
ところが一ヶ月、二ヶ月が経つと、人は環境に適応します。適応とは慣れることでもありますが、「言っても変わらないことを気にしなくなること」も含みます。ここで厄介なのは、気にしなくなったからといって納得したわけではないという点です。表面上は落ち着いて見えるのに、本人の中では会社への期待値だけが静かに下がっていく。半年後に退職を申し出るとき、理由が「一身上の都合」としか語られないのは、このためだと思います。
つまり入社後の面談は、本人が言えるうちに聞く場です。上手な質問技術よりも、時期を外さないことのほうが効きます。
1週間後と1ヶ月後、聞くことは違う
入社後の面談は、二回に分けるのがおすすめです。一回目は入社から3〜7日、二回目は1ヶ月前後。それぞれ15〜20分で十分です。長くすると、聞く側も身構えて実施が後回しになります。
| 時期 | 聞く目的 | 主に扱うこと |
|---|---|---|
| 入社3〜7日後 | 生活が回っているかの確認 | 通勤、休憩、道具、聞ける相手がいるか |
| 入社1ヶ月前後 | 期待とのズレの確認 | 仕事内容、教わり方、人間関係、条件面の認識 |
一回目で聞きたいのは、「働き続けられる状態にあるか」です。仕事の中身よりも生活の話です。想定より通勤に時間がかかっていないか、休憩を取れているか、必要な道具や作業服が揃っているか、わからないときに聞ける人が決まっているか。ここでつまずいている人は、仕事の面白さを感じる前に消耗します。入社前後の準備が抜けていた場合の取り返しにもなるので、入社初日までにやること。受け入れ準備のチェックリストの項目と突き合わせて確認すると漏れが見つけやすくなります。
二回目で聞きたいのは、「面接で聞いた話と、実際の仕事が合っているか」です。求人票や面接での説明は、どうしても実務のすべてを伝えきれません。担当範囲が思っていたより広い、逆に任される仕事が少なくて物足りない、繁忙の波が想像と違った。こうしたズレは、放っておくと「話が違った」という言葉に固まっていきます。
そのまま使える質問例
質問は、抽象度の高いものから入らないほうが答えやすいです。「どうですか」「慣れましたか」だけで終わると、「大丈夫です」しか返ってきません。
入社3〜7日後に聞くこと
- 通勤は思っていた通りでしたか。時間や乗り換えで負担になっている部分はありますか
- 一日の中で、休憩や食事はきちんと取れていますか
- 道具や制服、パソコンの設定で、足りていないものはありますか
- わからないことが出てきたとき、まず誰に聞いていますか
- ここ数日で、少しでも「あれ?」と思ったことはありますか。どんな小さなことでも構いません
入社1ヶ月前後に聞くこと
- 面接でお話しした仕事と、実際の仕事で違いを感じた点はありますか
- いま担当している仕事のうち、いちばん難しいと感じているものは何ですか
- 教わり方について、もっとこうしてほしいという要望はありますか
- 一緒に働いている人の中で、話しやすい人はできましたか
- シフトや残業、給与の締め日など、条件面で確認しきれていないことはありませんか
- 三ヶ月後、どんなことができるようになっていたいですか
最後の質問は、本人の中に残っている期待を確かめるためのものです。ここが空白のまま返ってくる場合、すでに気持ちが離れかけているサインとして受け止めています。
聞いたあとに大事なのは、「言ってくれてありがとう」を言葉にすることです。指摘が耳に痛いものであっても、その場で反論すると、次回から本音は出てきません。
評価面談と混ぜないこと
この面談を、試用期間の評価や目標設定の場と一緒にしないでください。同じ時間にまとめたくなる気持ちはわかりますが、評価される場だと認識された瞬間、本人は自分に不利な情報を出さなくなります。「教わり方がわかりにくい」は「自分の理解力が足りない」と受け取られかねないからです。
混ぜないための工夫として、支援先にお伝えしているのは次の三点です。
一つ目は、冒頭で目的を宣言すること。「これは評価の場ではなく、こちらの受け入れ方の点検です」と伝えるだけで、答えの質が変わることが多いです。二つ目は、記録の扱いを分けること。人事評価のファイルとは別に残し、共有範囲も明示します。三つ目は、可能であれば面談者を直属の上司以外にすることです。総務の担当者や社長が入るだけでも、話せる内容が広がります。現場の上司との相性が課題になっているとき、上司本人に向かってそれを言える人はほとんどいません。
聞いたあと、社内で何をするか
面談が「聞いて終わり」になると、かえって信頼を損ないます。次のような流れを決めておくと、一人で抱えずに回せます。
まず、出てきた話をその日のうちに三つに分類します。(1)すぐ直せること(備品、席、シフトの調整など)、(2)時間はかかるが直せること(教育の順番、マニュアル整備)、(3)会社として変えられないこと(勤務形態そのもの、給与体系)。
(1)は一週間以内に手を打ち、対応したことを本人に伝えます。この「言ったら変わった」という体験が、次に困ったときに相談してもらえるかどうかを左右します。(2)は着手予定を伝えます。(3)も、放置ではなく「これは変えられないが理由はこうだ」と説明します。変えられないこと自体より、説明されないことのほうが不満として残りやすいためです。
そして、二回の面談の内容を、入社した人ごとに一枚のメモにまとめて残してください。数人分たまると、自社の受け入れで毎回つまずいている場所が見えてきます。同じ指摘が三人続けば、それは個人の適応の問題ではなく仕組みの問題です。採用を応募から定着までひと続きで捉える考え方は採用は「点」ではなく「線」。応募から定着までを一本でつなぐでも整理しています。時期ごとのフォローをより細かく組みたい場合は、ドライバー採用は入社後が本番。3ヶ月以内の離職を防ぐフォローの時期別の考え方も参考になるはずです。
入社後の面談は、一回15分でも成立します。難しいのは内容ではなく、「日程を決めて、実際に実施する」ところです。現場が忙しい時期に入社が重なると、この面談がいちばん先に飛びます。
社外採用部では、応募の受付から日程調整、面接前後のフォロー、内定・入社後のフォローまでを採用事務局として代行しています。入社1週間後・1ヶ月後の面談の日程調整や、本人への連絡といった段取りの部分を外に出しておくと、社内は「聞いて、直す」ところに集中できます。月額49,800円〜、初回設計費100,000円で、いまの体制のどこを外に出せるかから一緒に整理します。自社の入社後フォローが続かないとお感じでしたら、お問い合わせからお気軽にご相談ください。
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