候補者は約束の10分前に来社しました。ところが面接を担当する社長や現場責任者が、直前のトラブル対応で手を離せない。受付に立つ社員は事情を知らされておらず、「少々お待ちください」とだけ伝えて、候補者は応接室で15分待つことになる——中小企業ではそう珍しい場面ではありません。

面接の遅刻というと候補者側の話として語られがちですが、現場と経営を兼ねる会社では、待たせる側に回るのは会社のほうです。問題は遅れたこと自体よりも、その15分のあいだ候補者が何も知らされず、誰からも謝られないまま放置されることにあります。ここでは、遅れが分かった瞬間から面接終了後までを、手順として整理します。

遅れが分かった時点で、最初に動くのは面接官ではない

面接官は現場対応の真っ最中です。その人に「候補者に連絡しておいて」と期待しても動けません。遅れが分かった時点で動くのは、面接官以外の誰かだと先に決めておくほうが現実的です。

決めておきたいのは次の3点です。

ひとつ目は、面接官が「遅れる」と誰に伝えるかです。総務担当、受付に立つ社員、あるいは当日の予定を把握している誰か一人を窓口にします。電話一本、チャット一行で済む連絡先を一つに絞っておきます。

ふたつ目は、候補者が到着済みかどうかで連絡手段を変えることです。まだ来社前なら、本人の携帯に電話かSMSで先に伝えられます。「開始を15分遅らせていただけませんか」と事前に伝われば、候補者は駅で時間を調整できます。すでに来社しているなら、その場にいる社員が口頭で伝えるしかありません。

みっつ目は、伝える内容です。「お待ちください」だけでは候補者の不安は消えません。遅れる旨、見込み時間、そして詫びの一言。この3つがそろって初めて情報になります。見込みが読めないときも「15分ほど」と区切って伝え、過ぎたらもう一度声をかけるほうが、沈黙より誠実に伝わります。

受付に立つ社員が事情を知らないまま候補者を迎えてしまう構造については、来社してから面接が始まるまでの5分で、印象は決まるでも触れています。

待たせる時間の長さで、取る手を分ける

遅れの程度によって、適切な手は変わります。目安として整理すると次のようになります。

遅れの見込み基本の対応候補者への伝え方
〜10分そのまま待っていただく「10分ほど遅れます」と到着時に伝え、飲み物を出す
10〜20分代理の社員が先に着席し、会社説明や条件確認を進める遅れの理由を一言添え、先に進められる部分から始める旨を伝える
20分以上短縮して実施するか、別日に振り替えるかを候補者に選んでもらう候補者の予定を聞いたうえで選択肢を示す

20分を超えそうなときに会社側だけで「短縮で実施」と決めてしまわないことが大切です。候補者はこの後に別の予定を入れているかもしれませんし、在職中であれば休憩時間を使って来ているかもしれません。「このあとのご予定はいかがでしょうか」と先に聞いたうえで、短縮・振替のどちらかを選んでいただく形にすると、押しつけになりにくくなります。

代理の社員を座らせる判断も、あらかじめ考えておくと動きやすくなります。採否を判断する人以外でも、会社の説明、仕事内容の概要、勤務条件の確認、候補者からの質問への回答は進められます。面接官が合流した時点で、見極めの質問に時間を使えるわけです。誰が代理に入れるかは、面接官が2人以上いる会社なら自然に決まります(面接官が2人いるとき、役割を決めておく)。

詫びの一言は、短く、具体的に

遅れたときの言葉は、長く謝るより、短く事実を伝えるほうが伝わります。場面ごとの文例を挙げます。

受付で伝えるとき 「本日はお越しいただきありがとうございます。申し訳ございません、面接を担当する者が業務の都合で15分ほど遅れております。こちらでお待ちいただけますでしょうか。お飲み物をお持ちします」

面接官が着席したとき 「お待たせして申し訳ありませんでした。現場で急な対応が入り、お時間をいただいてしまいました。本日は◯分までお時間を頂戴できればと思いますが、ご予定は大丈夫でしょうか」

来社前に電話・SMSで伝えるとき 「本日14時にお約束しておりました面接について、こちらの都合で開始を15分ほど遅らせていただけないでしょうか。急なお願いで申し訳ございません。14時15分開始でご都合が合わない場合は、お知らせください」

面接後のフォローメールに添えるとき 「本日はお時間をいただきありがとうございました。また、お待たせしてしまい失礼いたしました。選考結果は◯日までにご連絡いたします」

言い訳を長く語らないことと、見込み時間を数字で示すこと。この2つを守るだけで、同じ15分でも受け取られ方が変わります。候補者側の都合で日程を動かす場面とは逆向きですが、会社都合の変更を伝える考え方は会社の都合で面接日を変更するとき、辞退させない伝え方にもまとめています。

短縮するか、延長するかの判断基準

遅れたぶんを後ろにずらして予定どおりの時間を確保するのか、終了時刻を動かさずに中身を削るのか。これは候補者の都合が最優先ですが、会社側の判断材料も整理しておきます。

延長したほうがよいのは、候補者の予定に余裕があり、かつ一次面接で見極めたい項目が残っている場合です。仮に30分の面接で15分遅れたとして、15分では条件のすり合わせしかできません。見極めが不十分なまま次に進めると、二次面接や内定判断でもう一度迷うことになります。

短縮を選ぶのは、候補者に次の予定がある場合、または選考を複数回に分けている場合です。短縮するなら、何を削るかを先に決めておきます。会社説明は資料を渡して後で読んでいただく、候補者からの質問はメールで受け付ける、といった形で、面接でしか聞けないことに時間を寄せます。30分の面接で何を聞くか。中小企業の面接進行台本のように時間配分を分単位で決めておくと、削る判断もその場でしやすくなります。

いずれの場合も、短縮したぶんの不足は面接後のフォローで補えます。合否連絡の前に一度連絡を入れ、聞ききれなかった点を確認する。この一手間が、遅れたという印象を上書きします。

面接前30分を空けておく、という予防策

当日の対応をいくら整えても、根本には「面接の直前まで通常業務が入っている」という予定の組み方があります。再発を減らす一番の手は、面接開始時刻の30分前から予定を入れないことです。

仮に14時から面接なら、13時30分以降は打ち合わせも現場巡回も入れない。これを面接官自身のカレンダーに「面接準備」として先に書き込んでおきます。空いた30分は、履歴書を読み返す時間にも、トラブル対応の吸収帯にもなります。トラブルが起きなければ、そのまま準備時間として使えるので無駄になりません。

あわせて、面接を入れる曜日と時間帯を固定しておくと、現場も予定を合わせやすくなります。毎週決まった枠を仮押さえしておく運用は面接枠が取れない。現場が忙しい会社の面接枠の作り方で詳しく扱っています。面接の直前に別件が刺さる会社は、枠が決まっていないことが多いものです。

そして、面接当日の朝に「本日◯時に面接があります」と社内へ一言共有しておくこと。受付に立つ社員、電話を受ける社員が知っていれば、面接官が遅れても会社として対応できます。


面接そのものと採否の判断は、会社にしかできない仕事です。一方で、来社前の連絡、受付での案内、遅れが出たときの一報、面接後のフォロー連絡といった周辺の実務は、社外に持つこともできます。社外採用部は中小企業の採用事務局として、母集団形成から日程調整、面接前後のフォロー、内定・入社フォローまでを代行しています。料金は月額49,800円〜、初回設計費100,000円です。

面接の前後で候補者を待たせてしまう状態が続いているようでしたら、こちらからご相談ください。どこを社外に出せるか、現状の流れを伺いながら一緒に整理します。