面接の準備というと、質問項目や評価の仕方に意識が向きがちです。けれど候補者のほうは、面接室に入るずっと前から会社を見ています。玄関を開けて、誰かに声をかけて、椅子に座って、面接官が現れるまで。この数分間に何が起きたかで、その後の30分の受け取られ方が変わってきます。
支援の現場でよく聞くのが、「面接自体は和やかだったのに、後日辞退された」という話です。理由を伺っていくと、到着したときに誰も対応できず玄関先で立たされていた、声をかけた社員が面接の件を知らずきょとんとしていた、といった小さな出来事が出てくることがあります。本人は辞退理由として口にしませんが、その時点で「この会社は自分を待っていなかった」という印象が残っていたのかもしれません。
到着から着席までの5分に、候補者が見ているもの
候補者が見ているのは、内装のきれいさではありません。「自分が来ることが社内に伝わっていたか」の一点です。
応募して、電話で話して、日程を決めて、当日たどり着く。ここまでに候補者はいくつも不安を越えてきています。到着した瞬間に「お待ちしておりました」と言われれば、その不安はいったん解けます。逆に「どちら様でしょうか」と聞かれると、ここまでのやり取りが社内で共有されていなかったのだと受け取られやすくなります。
面接の前に不安を下げておくことの意味は、「とりあえず面接に来てもらう」が失敗するとき。面接前フォローの意味でも触れていますが、当日の到着時はその最後の場面にあたります。せっかく前日リマインドまで丁寧にやっていても、玄関で止まってしまっては流れが切れてしまいます。
つまずきが起きるのは、だいたいこの3場面
来社から面接開始までのつまずきは、場面がかなり限られています。
| 場面 | 起きがちなこと | やっておきたいこと |
|---|---|---|
| 玄関・受付 | 誰も気づかない、事情を知らない社員が対応する | その日の来客予定に候補者名と時間を載せておく |
| 待つ間 | 立たせたまま、何分待つか分からない | 座る場所と「◯分ほど」の一言をセットで伝える |
| 面接官が来るまで | 放置される、声をかけづらい | 飲み物か資料を置き、担当者を一度は顔出しさせる |
どれも設備の問題ではなく、段取りの問題です。とくに一つ目は、現場が「採用してるの知らなかった」を防ぐ。社内共有の最小ルールで書いた社内共有の話とつながっています。面接の前日までに、その日出社している人が「今日、◯時に面接の方が来る」と知っているかどうか。それだけで玄関先の空気は変わります。
社内に共有する、5行の手順
長い接遇マニュアルは作られないまま終わります。来社から着席までに限れば、次の5行で足ります。紙一枚にして、玄関近くと事務所の見える場所に貼っておく形が現実的です。
- 来客があったら、まず「◯◯様でいらっしゃいますか。お待ちしておりました」と名前で迎える
- 名前が分からなければ「面接でお越しでしょうか」と聞く。用件を詮索しない
- 座れる場所へ案内し、「担当の者を呼んでまいります。3分ほどお待ちください」と時間を添える
- 面接担当者に取り次ぐ。不在なら、その場にいる責任者に伝える
- 待たせる間、一度は誰かが顔を出す
ポイントは3の「時間を添える」です。人は待つこと自体より、いつまで待つのか分からないことに不安を感じやすいものです。「少々お待ちください」ではなく「3分ほど」と数字を言うだけで、待ち時間の体感はずいぶん変わります。
2は見落とされがちですが、大事な配慮です。他の社員や来客がいる場所で「面接の方ですね」と大きな声で言われるのを、候補者が快く思うとは限りません。在職中の方であればなおさらです。名前だけで迎えるのが無難です。
面接官が遅れるときの伝え方
現場が動いている会社では、面接官が時間通りに来られないことがあります。これ自体は避けきれません。問題は、遅れることを候補者に伝えないまま時間が過ぎることです。
伝え方には、ほぼ型があります。
- 開始予定の時点で遅れが分かっている場合:来社した時点で「担当が現場から戻るのに10分ほどかかっております。申し訳ございません」と先に伝える。あとから謝るより、先に見通しを出すほうが受け止められやすくなります
- 5分を超えそうな場合:取り次いだ人が一度顔を出し、「あと5分ほどです」と更新する。放置されている感覚を作らないことが目的です
- 15分以上になりそうな場合:面接官本人か責任者が一度顔を出して詫びる。取り次ぎ役の伝言だけで済ませない
- 当日の来社前に分かった場合:来社前に電話かSMSで開始時刻の変更を打診する。来てから待たせるより負担が小さくて済みます
この最後の判断は、会社の都合で面接日を変更するとき、辞退させない伝え方の考え方と地続きです。会社側の事情であることを隠さず、代わりの見通しを同時に出す。この2点が揃っていれば、遅れそのものが決定打になることは多くありません。
事務所が手狭でも、できることはある
「応接室がないから」「事務所の中が見えてしまうから」と気にされる経営者は少なくありません。ただ、候補者が減点しているのは広さではなく、扱われ方のほうです。手狭な事務所でもできる工夫を挙げてみます。
まず、椅子を一脚決めておくこと。専用の待合スペースがなくても、「面接の方はこの席」と決めておけば、迷って立ち尽くす時間がなくなります。次に、待つ間に手元に置くものを用意すること。会社案内でも、業務の写真を並べたA4一枚でも構いません。手持ち無沙汰の数分が、会社を知る時間に変わります。
それから、上着や荷物の置き場所を一言伝えること。「お荷物はそちらの椅子へどうぞ」と言われるだけで、候補者の緊張はいくらか緩みます。冬場のコートは特にそうです。
もう一つ、来社前の案内に「到着したら、入って右手の窓口でお名前をおっしゃってください」と書いておくと、玄関で止まる時間そのものが短くなります。案内文の作り方は面接会場にたどり着けない。道順案内が当日キャンセルを生むにまとめていますので、あわせてご覧ください。
ここまで挙げたことは、どれも費用がかかりません。かかるのは、社内で決めて共有する手間だけです。とはいえ、日々の仕事が詰まっている中で採用の段取りまで細かく回していくのは、現実にはなかなか難しいところでもあります。
社外採用部は、応募の受付から初回連絡、日程調整、面接前後のフォローまでを採用事務局として代行しています。当日の到着時に社内の誰が何をするかを含め、面接前後の流れを一緒に整理するところから始められます。月額49,800円〜、初回設計費100,000円。自社の受け入れ方に不安がある方は、こちらからご相談ください。
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