「社長が一人で面接して決めた人が、現場でうまくなじまない」。そう感じたことのある経営者は少なくありません。一方で、現場の責任者を面接に呼ぼうとすると「今週は手が離せない」と言われ、候補者への日程提示が遅れていく。現場を入れれば納得感は上がるが、スピードは落ちる。この二律背反の間で迷っている方は多いはずです。
この記事では、現場社員を面接に同席させるべきかどうかの判断基準と、同席してもらうときに事前に何を頼んでおくか、そして同席が難しいときの代替手段を整理します。面接の進め方そのものではなく、「誰を面接の場に入れるか」という一点に絞ってお話しします。
社長だけの面接と、現場を入れる面接、それぞれのつまずき
社長が一人で面接を完結させる形は、判断が速く、日程も動かしやすいという明確な利点があります。実際、応募対応のスピードを上げるという意味では合理的です。ただし、つまずきは面接の場ではなく入社後に出ます。
よくあるのは、配属先の責任者が「話は聞いていたが、どういう人かは初日に会って知った」という状態です。受け入れる側に準備の時間も心の準備もないまま新人が来るため、教える人が決まっていない、想定していた経験値と違う、といったすれ違いが起きます。採用の是非を現場が問い直すような空気が生まれると、本人も居づらくなります。
逆に、現場の責任者を毎回同席させようとすると、今度は日程が組めません。現場の都合と候補者の都合、そして社長の都合という三つのカレンダーを合わせる必要が出てくるため、候補日の提示が数日遅れることも珍しくありません。応募から面接までの時間が延びるほど離脱は起きやすくなります。日程そのものが組めない構造については面接枠が取れない。現場が忙しい会社の面接枠の作り方もあわせてご覧ください。
つまり、「現場を入れるか入れないか」を毎回その場のノリで決めていると、どちらの問題も抱えることになります。先に線を引いておくことが必要です。
同席が効くケース、不要なケース
支援の現場で見ていると、同席が効くのは大きく二つの条件が揃ったときです。
ひとつは、配属先が明確に決まっている場合。「この人が入ったら、この班の、この人の下につく」とはっきりしているなら、その責任者を入れる価値は高くなります。入社後に一緒に働く人が事前に顔を合わせておくと、受け入れ準備も具体的になりやすいものです。
もうひとつは、技能や経験の見極めが社長だけでは難しい場合。溶接の経験、扱える機械の種類、施工管理の実務範囲、介護記録の運用経験など、現場に入っている人でないと質問の精度が出ない領域があります。この場合、同席というより「技能確認の担当者」として入ってもらう位置づけになります。
| 状況 | 同席の要否 | 考え方 |
|---|---|---|
| 配属先が決まっている中途採用 | 入れたい | 受け入れ側の納得感と準備につながる |
| 資格・技能の実務レベルを確認したい | 入れたい | 質問の精度が社長だけでは出にくい |
| 未経験・ポテンシャル採用 | 不要なことが多い | 人柄と勤務条件の確認が中心になる |
| パート・短時間の欠員補充 | 不要なことが多い | スピードを優先したほうが決まりやすい |
| 一次面接(複数人を見る段階) | 不要なことが多い | 二次で会ってもらう設計にする |
| 配属先が未定・複数候補 | 保留 | 誰を呼ぶか決められないまま調整が長引く |
一次・二次を分ける考え方については中小企業の選考は何回が適切か。一次・二次を分ける判断で詳しく整理しています。同席を入れたい職種は、一次を社長、二次に現場という形にすると日程の負荷が分散しやすくなります。
同席してもらう社員に、事前に何を伝えるか
同席が決まったら、その社員に「同席お願いします」とだけ伝えて終わりにしないことをおすすめします。何をする場か分からないまま座っている人がいると、候補者にとっては「腕を組んで黙っている人」にしか見えません。面接の空気は、参加者の一人の態度で簡単に変わります。
事前に伝えておきたいのは、次の四つです。
1. 見てほしい点を1〜2個に絞って伝える 「経験してきた工種の幅」「安全に対する意識」など、その人に判断してほしい観点を具体的に指定します。全体の印象ではなく、限定した観点を頼むほうが答えが返ってきやすくなります。
2. 聞いてはいけないことを伝える 家族構成、出身地、結婚や出産の予定、思想信条といった、本人の適性や能力と関係のない事項は質問を避けます。悪気なく「お子さんは何歳ですか」と聞いてしまう場面は起こりがちです。面接に慣れていない社員ほど、この一点は事前に紙で渡しておくと安全です。また、その場で給与や入社日を口約束しないことも、あわせて伝えておいてください。
3. 所要時間を先に伝える 「30分です。うち、あなたに聞いてもらうのは10分程度」と時間を示すと、現場も予定を空けやすくなります。「面接お願い」だけだと拘束時間が読めず、断られる理由になります。
4. 終わったあとに何を出してほしいか伝える 面接後に一言もらうのか、簡単なメモを書いてもらうのか。「良かったと思います」だけで終わらないよう、「◯か△か×と、その理由を一行」程度の負荷に収めるのが現実的です。
同席者への依頼文は、毎回ゼロから書かず定型にしておくと手間が減ります。このあたりは応募対応マニュアルの作り方。1日で書ける最小構成の考え方と同じで、判断が必要な場面だけを書き残せば十分です。
同席が難しいときの代替案
現場が動けないなら、面接の場にこだわる必要はありません。「面接に同席する」以外にも、現場と候補者が接点を持つ方法はあります。
面接後の短い職場見学。面接が終わったあと10〜15分、社長が候補者を現場に案内し、責任者に一声かけてもらう形です。面接そのものには入らないので現場の負担は小さく、候補者にとっては働く場所が見えるという大きな情報になります。介護や保育のように見学が事実上の判断材料になる業界では、介護・福祉の応募対応。見学案内までを最短で組むのような設計が有効です。
現場責任者への事前ヒアリング。面接前に5分だけ時間をもらい、「今回はどんな人が来たら助かるか」「絶対に外せない条件は何か」を聞いておきます。面接に呼べなくても、判断軸を借りることはできます。ここで出てきた条件を社長が面接で確認すれば、現場の意向は反映されます。
面接後の情報共有。面接の内容を、当日か翌日に短く現場に共有する。「こういう経験の方が来て、こう答えていた。採用を検討している」という一報があるだけで、初日の温度は変わります。
オンラインでの短時間参加。現場から移動できなくても、休憩時間に10分だけオンラインでつないでもらう方法もあります。全編参加は難しくても、部分参加なら成立することがあります。
どの方法を取るにせよ、大切なのは「現場が候補者を知るタイミングが、入社初日より前にある」という状態をつくることです。受け入れ準備そのものについては入社初日までにやること。受け入れ準備のチェックリストもあわせて参考にしてください。
判断を仕組みにしておく
同席の是非を毎回考えていると、そのぶん日程調整が遅れます。おすすめは、募集を開始する時点で「この求人は現場同席あり/なし」を決めておくことです。同席ありなら、現場の面接可能な曜日と時間帯を先に押さえておく。同席なしなら、社長の枠だけで候補日を出せるようにしておく。この一手間で、応募が来てから慌てる場面が減ります。
もっとも、こうした段取りを組む余力がないという声も多く聞きます。応募の受付、初回連絡、候補日の提示、同席者への依頼、前日のリマインドと、面接一件を成立させるまでの事務は思いのほか多いものです。
社外採用部は、この応募後の候補者対応を社外でお預かりする採用事務局です。応募の受付から初回連絡、日程調整、面接前後のフォロー、内定・入社フォローまでを担い、社長と現場には「面接の場に出る」という仕事だけを残します。料金は月額49,800円〜、初回設計費100,000円、以降は支援内容・工数に合わせて個別にお見積りします。サービス責任者の佐々木純平が、御社の面接体制に合わせた運用設計からご相談を承ります。
現場を入れたいのに日程が組めない、というところで止まっているなら、一度こちらからご相談ください。どこを外に出せば面接の質を落とさずに回るか、一緒に整理します。
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