面接に社長と現場責任者の二人で入る。中小企業ではよくある形です。ところが実際にやってみると、同じ質問を二度繰り返してしまったり、一方がほとんど発言せずに腕を組んで座っているだけになったり、途中で二人が社内の話を始めてしまったりします。候補者からすると、どちらに向かって話せばよいのか分からないまま30分が過ぎていきます。
人数を増やしたのに面接の質が上がらないとしたら、原因は面接官の力量ではなく、役割を決めずに座っていることのほうが多いものです。この記事では、30分の面接を二人でどう分担するか、誰が条件の話をするか、終わった直後に何をすり合わせるかを、そのまま使える形で整理します。
二人で座ると、候補者には何が見えているか
面接官が二人いる場面を、候補者の側から見てみます。初対面の相手が二人、机の向こうに並んでいる。これだけで緊張の度合いは一人のときより上がります。そこに次のようなことが起きると、緊張は不信に変わりやすくなります。
ひとつは、同じ質問の重複です。社長が「前の職場ではどんな仕事を」と聞き、数分後に現場責任者が「これまでのご経験を教えてください」と聞く。候補者は同じ話をもう一度します。聞いていなかったのだろうか、という印象が残ります。
もうひとつは、沈黙です。一方が終始メモを取るだけで一度も口を開かないと、候補者は「評価されているが何を見られているか分からない」という状態に置かれます。特に、同席しているのが配属予定の部署の責任者である場合、その人がどんな人かを知りたいのは候補者のほうです。
三つ目は、二人の説明の食い違いです。残業や休日、配属の見込みについて、社長の答えと現場の答えが微妙にずれる。条件そのものより、会社の中で話が揃っていないことのほうが不安を呼びます。このずれは求人票と面接での説明がずれると、辞退されるでも触れた構造と同じで、面接の場では特に目立ちます。
進行役・深掘り役・記録役を割り振る
二人で入るなら、役割は事前に決めておきます。二人で三つの役割を分担する形が、実務上は回しやすい組み合わせです。
| 役割 | やること | 向いている人 |
|---|---|---|
| 進行役 | 冒頭の挨拶、流れの説明、時間管理、締め、次の案内 | 採用フロー全体を把握している人(社長・採用担当) |
| 深掘り役 | 仕事の中身についての質問、実務の確認 | 配属先の現場責任者 |
| 記録役 | 評価シートへの記入、気づいた点のメモ | 進行役が兼ねることが多い |
記録役は独立させず、進行役が兼ねるのが現実的です。進行役は話の筋を押さえているので、深掘り役が質問している間に手を動かしやすい立場にあります。逆に、深掘り役が質問しながらメモも取ると、候補者の表情を見る余裕がなくなります。
ここで決めておきたいのは、「どちらが主に話すか」です。二人が同じ量だけ話そうとすると会話が交錯します。進行役が場を運び、深掘り役が要所で踏み込む。この濃淡をつけておくと、候補者は誰に答えればよいか迷わずに済みます。
30分のどこで、誰が話すか
30分の面接を想定し、時間帯ごとに主担当を決めておきます。質問内容そのものの組み立ては30分の面接で何を聞くか。中小企業の面接進行台本に譲り、ここでは「誰が」の部分だけを示します。
| 時間(目安) | 内容 | 主担当 |
|---|---|---|
| 0〜3分 | 挨拶、同席者の紹介、今日の流れの説明 | 進行役 |
| 3〜10分 | 経歴・これまでの仕事の確認 | 進行役 |
| 10〜20分 | 仕事内容の具体的な深掘り | 深掘り役 |
| 20〜25分 | 会社・仕事の説明、条件の確認 | 進行役 |
| 25〜30分 | 候補者からの質問、今後の連絡の案内 | 進行役(実務の質問は深掘り役) |
同席者の紹介は冒頭で必ず行ってください。「現場の責任者の◯◯です。入社された場合に一緒に働く部署の者です」と一言添えるだけで、同席者が黙っている時間があっても候補者は不安になりにくくなります。
条件の話は進行役が一人で担当するのが安全です。給与、残業、休日、入社日といった話は、二人が交互に話すとずれが生まれます。深掘り役は条件を聞かれても「そこは◯◯からお答えします」と渡す。この一手間で、会社としての回答が一本化されます。条件を切り出すタイミングについては面接で給与・条件の話をいつ出すかもあわせてご覧ください。
なお、候補者からの逆質問は深掘り役の出番でもあります。「現場では実際どうですか」という質問に、現場の人間が自分の言葉で答える。これは一人で面接をしているときには出せない価値です。
終わったあとの5分で、評価をすり合わせる
面接が終わったら、候補者を見送った直後に二人で5分とってください。この5分を取るか取らないかで、あとの判断の速さが変わります。
後回しにすると、何が起きるか。記憶は薄れ、「悪くはなかった」という印象だけが残ります。別の日に改めて話し合おうとすると、今度は日程が合わず、合否連絡が1週間先になります。合否連絡の遅れがそのまま辞退につながることは面接の合否連絡は何日以内に出すべきかでも整理したとおりです。
5分ですることは三つです。
- それぞれが評価を先に書く。 口に出す前に、各自が手元のシートに記入します。先に片方が「良かったですね」と言うと、もう一方はそれに引きずられます。評価項目は必須要件への◯△×と、根拠の一行で足ります(面接評価シートの作り方)。
- 書いたものを見せ合う。 一致している項目は飛ばし、割れている項目だけを話します。
- 次のアクションを決める。 合格か不合格か、保留なら何を確認すれば決まるのか、いつまでに連絡するのか。この3点を口頭で確認してから席を立ちます。
5分で決まらない場合でも、「何が分からないから決まらないのか」をその場で言語化しておくと、後で判断しやすくなります。
評価が割れたときに、どう決めるか
二人で入る以上、意見が割れることはあります。割れたこと自体は悪いことではなく、一人では見えなかった面が見えたということでもあります。問題は、割れたまま結論が出ないことです。
まず確認したいのは、何が割れているのかです。多くの場合、割れているのは評価ではなく前提です。社長は3年後の幹部候補として見ており、現場責任者は来月から現場に入る戦力として見ている。この場合、同じ候補者への評価が食い違うのは当然です。募集要件を3つ程度に絞って事前に合意しておくと、この種のすれ違いは減らせます(求める人物像は3つに絞る)。
前提を揃えてもなお割れるときは、あらかじめ決めておいたルールで処理します。たとえば次のような決め方があります。
- 最終決裁者を先に決めておく。 二人の意見が割れたときは誰の判断で決めるのかを、面接の前に決めておきます。多くの中小企業では社長ですが、現場配属のポジションは現場責任者の判断を優先する、という決め方もあります(採用の決裁ラインの決め方)。
- 現場が強く反対する場合は見送る、と決めておく。 入社後に受け入れるのは現場です。現場の懸念を押し切って採用すると、定着で苦労することがあります。
- 保留にするなら期限をつける。 「もう一度会う」と決めたなら、いつ、何を確認するために会うのかまで同時に決めます。決めきれない迷いの扱いは採用するか迷ったときに、どこで決めるかで詳しく整理しています。
決め方を事前に合意しておくと、面接の場で二人が気を遣う必要がなくなります。遠慮なく違う意見を出せることが、二人で面接する意味です。
面接に集中するために、その前後を手放す
役割分担も、終了後5分のすり合わせも、面接の場に二人が落ち着いて座れていることが前提です。現実には、応募の受付、電話の折り返し、候補日の調整、前日のリマインド、面接後の連絡といった実務に追われ、面接の直前に資料を開くという状態になりがちです。
社外採用部は、中小企業の採用事務局として、母集団形成から応募の受付・初回連絡・日程調整・面接前後のフォロー・内定や入社のフォローまでを社外から代行します。面接そのものと採否の判断は御社が行い、その前後の実務をこちらで引き受ける形です。料金は月額49,800円〜、初回設計費100,000円。以降は支援内容と工数に合わせて個別にお見積りします。採用の局面に合わせて当社から担当をアサインするため、一人分の人件費で複数の役割を使い分けられます。
面接官が二人そろう時間は、会社にとって決して安い時間ではありません。その30分を、見極めと動機づけに使えるようにするところからご相談ください。
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