面接が終わって応接室を出たあと、「で、あの人どうだった?」と聞かれて言葉に詰まる。悪い印象はないけれど、何ができる人なのか、どんな働き方を望んでいるのかが思い出せない。思い返してみると、ほとんどの時間を自分が話していた——。中小企業の面接では、珍しくない光景です。
これは準備不足というより、むしろ逆のことが多いものです。会社のことを知ってほしい、ここで働く意味を伝えたい、という気持ちが強いからこそ話が長くなる。熱意そのものは採用において大きな武器です。問題は、その熱意を置く場所が「面接の30分の中」になってしまっていることにあります。
なぜ、社長の話は長くなるのか
話しすぎてしまう背景には、いくつかの共通した事情があります。
ひとつは、候補者が黙っているからです。緊張している候補者は、質問に短く答えて止まります。その沈黙が気まずくて、面接官が補足を始める。補足が説明になり、説明が会社の歴史や自分の創業時の話になっていく。沈黙を埋める役を面接官が引き受けてしまう構造です。
もうひとつは、採用に苦戦している会社ほど「選ばれる側」の意識が強いことです。応募が貴重なぶん、この機会に魅力を伝えきらなければ、という焦りが生まれます。結果として、面接が説明会に近いものになります。
そして三つめは、面接の進行が決まっていないことです。時間配分も質問の順番も決まっていなければ、その場の流れで話しやすい人が話すことになります。社長は会社のことを一番語れる人ですから、自然と社長が話し続けることになります。
いずれも悪意のない理由です。ただ、結果として面接が終わったときに、採否を判断する材料が手元に残りません。
候補者7割・面接官3割という目安
配分の目安として、候補者が7割、面接官が3割という比率を置いてみてください。30分の面接であれば、候補者が話している時間が20分前後、面接官が話している時間が10分弱というイメージです。
厳密にストップウォッチで測る必要はありません。面接が終わったあとに「自分はどのくらい話していたか」を振り返るだけでも、感覚は変わっていきます。半分以上を自分が話していたと感じたら、次回は質問を1つ減らして、相手の答えを掘り下げる時間に充てる。その程度の調整で十分です。
30分を仮に配分するなら、次のような形が目安になります。
| パート | 目安時間 | 主に話す人 |
|---|---|---|
| 挨拶・場をほぐす | 3分 | 面接官 |
| 経歴・これまでの仕事を聞く | 10分 | 候補者 |
| 働き方・条件のすり合わせ | 7分 | 候補者 |
| 会社からの補足説明 | 5分 | 面接官 |
| 候補者からの質問 | 5分 | 候補者 |
会社から話す時間は、挨拶と補足説明を合わせても10分弱です。短く感じるかもしれませんが、この枠に収まらない内容は「面接で伝えるべきこと」ではなく「面接の前後で伝えるべきこと」だと考えたほうが、面接そのものは機能しやすくなります。時間配分を分単位まで決めておく進め方は、30分の面接で何を聞くか。中小企業の面接進行台本でも整理しています。
会社説明は、面接の外に出す
熱意を削る必要はありません。置き場所を変えるだけです。
候補者が知りたいことの多くは、面接の場でなくても伝えられます。仕事の一日の流れ、誰と働くか、入社後3ヶ月で何を覚えるのか、休日や残業の実態。これらは文章にして面接の前に渡しておけば、候補者は読んだ状態で面接に来ます。面接では「資料は読んでいただけましたか。気になった点はありますか」から入れるので、同じ説明を口頭で繰り返す必要がなくなります。
立派な会社案内でなくても構いません。A4一枚でも、面接案内のメールに数行加えるだけでも、効果はあります。面接日が決まってから当日までの空白期間に情報を届ける意味については、「とりあえず面接に来てもらう」が失敗するとき。面接前フォローの意味もあわせてご覧ください。
もう一つの置き場所が、職場見学です。社長が言葉で伝えたい「現場の空気」は、10分の見学で伝わってしまうことがあります。面接の前後に15分の工場見学や店舗案内を挟むと、面接の中で説明に使っていた時間を、候補者に話してもらう時間に回せます。
さらに言えば、「語りたい思い」の多くは、採用が決まったあとのほうが届きやすいものです。入社を決めた人に創業の経緯や会社の方向性を話す時間は、定着にそのまま効いてきます。面接で全部伝えきろうとしないほうが、結果的に伝わります。
話が長くなったとき、誰がどう戻すか
とはいえ、本人が話しすぎに気づくのは難しいものです。だからこそ、同席者と合図を決めておくことをおすすめします。
二人で面接を行うなら、片方を進行役と決めておきます。進行役の仕事は質問をすることではなく、時間を見て区切ることです。たとえば次のような形です。
- 開始15分の時点で、進行役が「このあたりで、◯◯さんのこれまでのお仕事をもう少し伺えますか」と候補者に話を振る
- 会社説明が5分を超えたら、進行役が手元のメモに印をつけ、区切りで「続きは見学のときにお見せしましょう」と引き取る
- 残り5分になったら、進行役が「ご質問はありますか」と候補者に渡す
言葉の合図でなくても構いません。進行役がペンを置く、資料を1枚めくるといった動作を事前に決めておけば、候補者の前で露骨にならずに済みます。大事なのは、面接の前に「今日は私が時間を見ますので、長くなったら区切ります」と一言すり合わせておくことです。事前に合意していないと、同席者は社長の話を遮れません。
二人で面接するときの役割分担については、面接官が2人いるとき、役割を決めておくで詳しく扱っています。一人で面接せざるを得ない場合は、机の上に「候補者7:自分3」と書いた紙を置いておく、質問を3つだけ書いた進行メモを手元に置く、といった物理的な仕掛けが助けになります。
面接で話すことを減らすために、面接の外を整える
候補者に多く話してもらう面接は、気合いでは実現しません。事前に資料が渡っていること、見学の段取りがあること、進行の役割が決まっていること。この三つが揃って初めて、面接官は安心して口数を減らせます。
逆に言えば、面接の外側が整っていない会社ほど、面接の30分にすべてを詰め込むことになります。応募後の連絡、日程調整、面接前の案内、見学の手配。こうした段取りを誰かが担っていれば、経営者は面接の場で「聞くこと」だけに集中できます。
社外採用部は、中小企業の採用事務局として、母集団形成から応募の受付、初回連絡、日程調整、面接前後のフォロー、内定・入社後のフォローまでを社外から担います。面接そのものと採否の判断は御社が行い、その前後を私たちが整える役割分担です。料金は月額49,800円〜、初回設計費100,000円。以降は支援内容と工数に合わせて個別にお見積りします。
面接で話しすぎてしまう自覚がある方ほど、伝えたいことが多い会社です。その熱意の置き場所を変える段取りについて、お問い合わせからお気軽にご相談ください。
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