求人を出しても応募が来ない。社内では「うちの給料が安いからだ」という声と、「いや、連絡が遅いからだ」という声が両方あって、どちらが正しいのか決めきれない。そんな状態で次の手を考えている経営者や総務責任者の方は少なくないはずです。
どちらが原因かを判断するには、まず自社の給与が近隣の同じ職種と比べてどの位置にあるのかを知る必要があります。この記事では、その位置を自分の手で確かめる手順を、調べ方・件数・記録の仕方・結果の使い方の順に整理します。
なぜ「相場」を自分で調べるのか
賃金の統計や業界の平均額は公開されていますが、候補者が実際に見比べているのは統計ではなく、同じ画面に並んでいる近所の求人です。通勤できる範囲、同じ職種、同じ雇用形態で並べたときに自社がどこにいるか。比較の土俵はそこにあります。
また、「給与が原因かどうか」を確かめないまま賃上げに踏み切ると、効果が出なかったときに原因の切り分けがさらに難しくなります。給与が近隣と同程度なのに応募が少ない、あるいは応募はあるのに面接に進まないのであれば、見直すべきは条件より応募後の対応である可能性があります。その切り分けについては求人媒体を変える前に確認したい、応募後対応の数字で詳しく扱っています。この記事は、その判断の材料となる「条件側の位置確認」に絞ってお伝えします。
求人媒体とハローワークで、同じ条件の求人を並べる
調べる場所は、自社が掲載している(または掲載を検討している)求人媒体と、ハローワークインターネットサービスの2つで足ります。
求人媒体の検索で並べる 候補者になったつもりで、媒体の検索画面に次の条件を入れます。
- 職種:自社の求人と同じ言葉に加え、候補者が使いそうな別の呼び名でも検索する
- 勤務地:自社の所在地を中心に、候補者が通える範囲(市区町村や沿線)
- 雇用形態:正社員・パートなど、自社の募集と同じもの
ここで大事なのは、条件を自社と揃えることです。正社員の求人とパートの求人を混ぜたり、勤務地を広げすぎたりすると、比べる意味が薄れます。
ハローワークの求人情報を見る ハローワークインターネットサービスでも、職種と就業場所を指定して求人を検索できます。求人媒体には出していない地元企業の求人が見つかることがあり、媒体だけでは見えない層を補えます。賃金欄が幅で書かれている場合は、下限と上限の両方を控えておきます。
どちらも、見るのは直近に掲載されている求人に限るのが目安です。古い求人は、その後条件が変わっていることがあるためです。
何件見れば足りるか、どう記録するか
件数の目安は、同じ条件で10〜20件程度です。数件だけだと、極端に高い・低い求人が1つ混ざっただけで印象が大きくずれます。一方で、それ以上集めても手間が増えるばかりで、判断は大きく変わりにくいでしょう。条件に合う求人が10件に満たない地域なら、その数自体が「この職種の募集が少ない地域である」という情報になります。
記録は、次のような表で十分です。
| 求人 | 職種名 | 雇用形態 | 給与(下限〜上限) | 固定残業代・手当 | 勤務時間・休日 |
|---|---|---|---|---|---|
| A社 | 製造スタッフ | 正社員 | 月給21万〜26万円 | 固定残業代込み | 日勤のみ・土日休 |
| B社 | 機械オペレーター | 正社員 | 月給23万円〜 | 皆勤手当あり | 交替勤務・シフト制 |
| 自社 | 製造スタッフ | 正社員 | 月給22万円〜 | 家族手当あり | 日勤のみ・土日休 |
※数値は記入例として仮に置いたものです。
記録するときは、比べる単位を揃えることに気をつけてください。たとえば、固定残業代を含む月給と含まない月給は、そのままでは比べられません。仮に月給24万円のうち固定残業代が3万円であれば、残業代を除いた部分は21万円です。月給と時給が混ざっている場合も、所定労働時間で割って揃えます。仮に月給22万円で月の所定労働時間が160時間なら、時給に換算して1,375円です。
並べ終えたら、下限額が低い順に並べ替え、自社がどのあたりにいるかを見ます。真ん中あたりか、上のほうか、下のほうか。この段階では細かい計算より、おおまかな位置がつかめれば十分です。
なお、求人の提示額は「その会社が実際に払っている額」とは限りません。上限額はごく一部の経験者にしか適用されないこともあります。比べるときは上限よりも下限、あるいは「月収例」のような具体的な記載に目を向けるほうが実態に近づきやすいでしょう。
調べた結果をどう使うか。賃上げ以外の選択肢
位置が分かったら、次のように考えます。
自社が真ん中以上にいる場合 条件だけが原因である可能性は下がります。応募の数、初回連絡までの時間、面接設定率といった応募後の数字を先に確認するほうが、打ち手を絞りやすくなります。
自社が下のほうにいる場合 ここで選択肢は賃上げだけではありません。賃上げを検討する場合は、年間の人件費への影響や既存社員との整合も含めて考える必要があります。その考え方は時給・給与を上げれば応募は増えるのか。上げる前に確認する3つにまとめています。
一方で、実際の待遇は近隣と大きく変わらないのに、求人の書き方で損をしていることもあります。調べた表を見直すと、次のような差が見えてくることがあります。
- 他社は手当込みの「月収例」を書いているが、自社は基本給だけを載せている
- 他社は固定残業代込みの額を載せているが、自社は残業代別で、低く見えている
- 賞与の実績、昇給の目安、残業の少なさ、休日数など、給与以外の強みが書かれていない
- 経験者と未経験者で額が違うのに、未経験者の下限額しか載せていない
こうした差は、給与の額を変えずに、伝え方を整えるだけで埋められる可能性があります。ただし、書いた内容は面接での説明や実際の支給と一致させる必要があります。幅の書き方や手当の見せ方については求人の給与欄、幅を広く書くか1本で書くかも参考にしてください。
調べる時間が取れないときは
近隣の求人を10件以上並べ、単位を揃えて記録する作業は、慣れていても1〜2時間はかかります。兼務の総務担当者にとっては、その時間を確保すること自体が負担になりがちです。
社外採用部は、求人・媒体の運用といった母集団形成から、応募の受付・初回連絡・日程調整・面接前後のフォロー、内定・入社フォローまで、面接と採否の判断以外の採用実務を社外から担う採用事務局です。求人原稿を見直す材料として近隣の求人を整理するところから、応募後の対応を整えるところまで、まとめてご相談いただけます。料金は月額49,800円〜(初回設計費100,000円)で、以降は支援内容に合わせて個別にお見積りします。
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