家族経営の会社では、採用の話がいつも食卓やレジ横の立ち話から始まります。社長が求人を出し、専務が応募者に電話をかけ、経理を見ている配偶者が面接の日程を手帳に書き込む。誰も怠けているわけではなく、むしろ全員が良かれと思って動いています。それなのに、応募者には同じ日に二人から電話がかかり、面接では「残業は少ない」と言う人と「繁忙期はそれなりにある」と言う人がいる。こういう状態は、身内だけで回している会社ほど起きやすいものです。

役割が決まっていないのではなく、決めなくても何となく回ってきた、というのが実情ではないでしょうか。社員相手なら「これは誰の仕事」と線を引くのに、家族同士では言い出しにくい。この記事では、採用を5つの工程に切り分けて、誰が窓口で誰が決めるのかを紙に落とす手順をご紹介します。

身内で回すと、何が曖昧になるのか

曖昧になりやすいのは、大きく二つです。ひとつは窓口。候補者から見て「誰に連絡すればいいのか」が分からない状態です。応募は社長の携帯に届き、折り返しは専務がして、確認事項のメールは事務所の共通アドレスから届く。候補者側は、誰に何を聞いていいのか判断できません。

もうひとつは決裁。採るか採らないか、いくらで出すかを最終的に誰が決めるのかです。家族経営では「二人で相談して決める」が自然なので、どちらかが外出していると合否連絡が止まります。選考中の候補者にとって、数日の空白は他社の選考が進む時間です。決裁者が定まっていないことで連絡が遅れる構造については、採用の決裁ラインの決め方。誰が最終判断するかで連絡は速くなるも参考にしてください。

もう一点、家族経営に特有の事情として、伝達が記録に残らないことがあります。「あの人、明日来るって」で済んでしまうので、誰がいつ何を伝えたかが後から追えません。二人以上が同じ応募者に触っている状態で記録がないと、連絡の重複は起きやすくなります。

応募受付から条件提示まで、5工程に切る

採用を細かく分解すると工程はいくつにも増えますが、家族経営の会社で最初に決めるべきは次の5つに絞って構いません。窓口(候補者とやりとりする人)と決裁(決める人)は、別の人でも構いません。むしろ分けたほうが動きが速くなることが多いです。

工程窓口(候補者と接する)決裁(決める)先に決めておくこと
①応募受付・初回連絡1人に固定不要連絡手段と、何分以内に動くか
②日程調整①と同じ人が望ましい面接官の枠を押さえる人面接できる曜日・時間帯
③面接面接官—誰が同席するか、聞く項目
④採否結果を伝える人最終決裁者1名迷ったときに誰が決めるか
⑤条件提示書面を出す人金額を決める人提示できる給与の上限

ポイントは三つあります。

第一に、①と②は同じ人がやる。初回連絡をした人が日程まで決め切るほうが、候補者から見て一貫します。電話口で「では日程は別の者から」と言われると、そこで一度止まります。

第二に、④の決裁者は1名と書く。「社長と専務で相談」と書くと、不在のときに止まります。「原則は社長。社長が3日以上不在のときは専務が決める」と、代わりの人まで書いておくと動きます。

第三に、⑤の上限を先に決める。面接の場で「頑張ります」と言われて社長がその場で金額を口にし、あとで経理担当が困るというのは、起きやすい場面です。提示できる幅を事前に決めておけば、面接官は安心して話せます。

なお、面接そのものと採否の判断は、会社が自分でやるべき部分です。そこに時間を使うために前後を整える、という順番で考えると迷いにくくなります。考え方は社長が採用面接だけに集中すると、採用は強くなるにまとめています。

書き方は、A4一枚で足りる

立派な規程はいりません。上の表をそのまま紙に書き、名前を入れて事務所に貼るだけで十分です。書くときのコツは、役職ではなく名前で書くことです。「管理部門」と書くと誰のことか曖昧になりますが、名前で書けば言い逃れができません。

あわせて、紙の下に3行だけ追記しておくと運用が楽になります。

この1行メモがあるだけで、二重連絡はかなり防げます。同じ人が別の媒体から重ねて応募してくる場面もあるので、同じ人が複数の媒体から応募してきた。二重連絡を防ぐもあわせて見ておくと、突合のやり方の参考になります。

決めたことは、家族だけで共有して終わりにせず、関係する社員にも見える場所に置いてください。貼ってあるだけで「誰に回せばいいか」が分かるようになります。

社員から見た不公平感に、先に手を打つ

家族経営で役割分担を決めるときに、もうひとつ考えておきたいのが社員の受け取り方です。採用という仕事は、社内では「誰を仲間に入れるか決める権限」として映ります。そこが家族だけで閉じていると、社員は口を出しにくく、入ってきた人の受け入れにも距離が生まれやすくなります。

全部を開く必要はありませんが、次のあたりは意識しておくと、角が立ちにくくなります。

もう一点、家族や知人のつながりで人を入れるときの扱いにも注意が必要です。紹介ルートの人だけ連絡が雑になったり、逆に選考が甘く見えたりすると、どちらも社内の空気に響きます。この点は社員紹介で来た応募者への対応。身内だからこそ雑になるで詳しく触れています。

分けたうえで、人数が足りないとき

役割を5つに切ってみると、多くの会社で同じ結論になります。窓口が1人しか立てられないのです。社長は現場や営業に出ていて、専務は得意先を回り、経理担当は請求と給与で手が埋まっている。この状態で応募受付と日程調整を「誰か1人」に寄せると、その人が休んだ日に採用が止まります。

ここで人を雇うという選択の前に、工程単位で社外に出すという考え方があります。当社の社外採用部は、母集団形成(求人・媒体・スカウトの運用、学校や紹介会社との接点づくり。新卒・中途)から、応募の受付・初回連絡・日程調整・面接前後のフォロー・内定と入社のフォローまでを、採用事務局として社外から担います。面接そのものと採否の判断は御社が行う前提です。つまり、上の表の①②と、③④⑤の前後にある連絡を外に置き、御社には面接と決裁だけが残ります。

料金は月額49,800円からと、初回設計費100,000円。以降は支援内容と工数に合わせて個別のお見積りです。応募1件ごとの従量課金ではないため、応募が増えた月に費用が跳ねる心配はありません。担当は採用の局面に合わせて当社からアサインしますので、一人分の人件費で複数の役割を使い分けられます。サービス責任者は代表の佐々木純平です。

まずは5工程の紙を書いてみて、埋まらない欄がどこかを見てください。そこが社外に出す候補です。役割分担の整理からご一緒できますので、こちらからお気軽にご相談ください。