「先ほども別の担当からお電話をいただいたのですが……」。応募者からそう言われて、社内で顔を見合わせた経験はないでしょうか。求人媒体を複数使っていたり、同じ会社で職種を分けて募集していたりすると、同一人物が二つ以上の応募として社内に届くことがあります。届いた先が違えば受け取る人も違い、それぞれが善意で初回連絡を入れてしまう。候補者から見れば「連携が取れていない会社」という印象だけが残ります。

やっかいなのは、この事故が「対応が遅い会社」ではなく「対応が速い会社」で起きやすいことです。届いた応募にすぐ動く習慣がある会社ほど、確認より先に電話が出ていきます。ここでは、重複応募をどう見つけ、どちらの応募として扱い、媒体側のルールにどう配慮するかを、実務の手順として整理します。

なぜ同じ人が二度応募してくるのか

まず、重複応募は候補者の落ち度ではないという前提を置いてください。背景はだいたい次のいずれかです。

ひとつは、媒体をまたいだ応募。求職者は複数の求人サイトを併用しており、A社の求人がどちらにも載っていれば、同じ会社と気づかないまま両方から応募することがあります。社名表記が正式名称と屋号で違っていれば、なおさらです。

ふたつめは、職種違いの応募。「ドライバー」と「倉庫内作業」を別枠で出していれば、どちらでもよいと考えている方は両方に応募します。これは本人にとって合理的な行動です。

みっつめは、返事がないことへの不安からの再応募。数日連絡がないと「送信できていなかったのかもしれない」と考えて、もう一度送る方がいます。この場合、重複応募そのものが「初回連絡が遅れている」というサインになっています。

そしてよっつめが、過去応募者の再応募です。半年前や一年前に一度接点があり、今回あらためて応募してきたケース。これは同時期の重複とは扱いが違うので、後で切り分けます。

突合は「電話番号」を軸にする

重複を見つける作業を、担当者の記憶に任せないことが出発点です。人の名前は覚えていても、一週間前の応募までは思い出せません。

実務的に最も効くのは電話番号での突合です。氏名は同姓同名がありえますし、漢字とカナ、旧姓と現姓で表記が揺れます。メールアドレスも媒体ごとに使い分けている方がいます。その点、携帯電話番号はほぼ一人に一つで、媒体が違っても同じ番号が入力されることが多い項目です。

手順としては、応募が届いたら連絡を入れる前に、応募者一覧の電話番号列を検索する。これだけです。ExcelでもGoogleスプレッドシートでも、Ctrl+Fで数秒です。この「連絡前の3秒」を手順に組み込むかどうかで、事故の発生率は変わります。

突合に使う項目は、次の順で確認してください。

確認順項目見るポイント
1携帯電話番号ハイフンあり・なしの表記揺れに注意。数字だけで検索する
2氏名(カナ)漢字より揺れが少ない。同姓同名なら生年月日で確定
3生年月日同姓同名を切り分ける決め手
4メールアドレス媒体専用アドレスを使う方もいるため補助的に

なお、この検索が成立する前提として、応募情報が一箇所に集まっている必要があります。媒体ごとの管理画面に散らばったままでは突合そのものができません。集約の考え方は複数媒体の応募をどこで一元管理するか。抜け漏れが起きる場所で扱っていますので、通知先が分散している方はあわせてご確認ください。記録に残す項目を絞りたい場合は応募者の記録は何を残せばいいのか。最低限の6項目も参考になります。

どちらの応募として扱うかを決める

重複が見つかったら、次は「どちらを本線にするか」です。ここを決めずに両方を生かしておくと、進捗が二本走り、面接設定も二重になります。

判断の軸は三つです。

第一に、候補者の意向。 職種が違う応募が重なっている場合、どちらを希望しているかは本人にしか分かりません。初回連絡の中で「◯◯職と△△職の両方にご応募いただいていますが、どちらをご希望でしょうか。もちろん両方を前提にお話しすることもできます」と確認してしまうのが最も早く、印象も悪くなりません。隠して進めるより、把握していることを伝えたほうが「きちんと見てくれている会社」と受け取られやすいと感じます。

第二に、先に届いたほうを原則とする。 意向が特にない場合は、時系列で先の応募を本線にし、後の応募は「重複」としてステータスを閉じます。判断を迷わないためのルールなので、逆に決めても構いません。社内で一つに決めておくことが大事です。

第三に、媒体側の課金・ルール上の扱い。 ここが見落とされがちな点です。応募課金型の媒体では、同じ人でも媒体が違えばそれぞれに費用が発生していることがあります。また、人材紹介経由の応募と自社求人への直接応募が重なった場合、どちらの成果として扱うかは契約条件によって決まります。「先に応募が到達したほうを優先」「紹介会社からの推薦が先であれば紹介扱い」といった取り決めが契約書に書かれていることが多いので、自己判断で片方を無効にせず、契約内容を確認してください。判断に迷うときは媒体担当者・紹介会社の担当者に事実関係を伝えて相談するのが安全です。

本線を決めたら、記録上は両方の応募を残したまま、片方に「重複(本線は◯月◯日の応募)」と注記して閉じる形にします。削除してしまうと、後から媒体への費用を確認するときに突き合わせられなくなります。

過去応募者の再応募は、別のものとして扱う

同時期の重複と、半年前・一年前の再応募は、対応が変わります。

同時期の重複は「一人の候補者に、連絡が二重に行く事故」を防ぐ話でした。一方の再応募は、「前回の記録を踏まえて今回どう向き合うか」という話になります。前回不採用にした方に同じ質問を一から繰り返せば、候補者は「記録されていない会社」と感じます。逆に、前回のやり取りを覚えていることが伝われば、それだけで信頼につながります。このあたりは過去に不採用にした人が再応募してきたときの扱いで詳しく整理していますので、該当する方はそちらをご覧ください。

見分け方は単純で、突合でヒットした過去の応募が「選考中・進行中」なら同時期の重複、「不採用・辞退・入社辞退などで終了済み」なら再応募です。応募者管理表にステータス欄と最終更新日があれば、この判別に迷うことはあまりありません。

事故が起きたときの回復手順

予防していても、二重連絡は起きます。起きたあとの数分が印象を決めます。

気づいた時点で、後から連絡した側ではなく、社内で窓口を一本化したうえで一度だけ連絡を入れてください。文面はたとえば、こうした形です。

先ほど弊社の別の担当者よりご連絡を差し上げてしまい、失礼いたしました。◯◯様には◇◇(媒体名)と△△(媒体名)の両方からご応募いただいており、社内の確認が行き届いておりませんでした。今後は私、□□が窓口として対応させていただきます。

言い訳を重ねず、事実と今後の窓口を伝える。これだけで十分です。むしろ丁寧に長文を送るほうが重く受け取られることがあります。

そして、起きた事故は記録に残してください。月に一度の振り返りで「今月、重複応募が何件あったか」を数えると、媒体の出し方そのものに無理がある(同じ求人を複数媒体に同条件で出しすぎている、職種を細かく分けすぎている)ことが見えてくる場合があります。応募後の対応品質を数字で捉える考え方は候補者体験を測る指標。感覚を数字に置き換える5つの物差しにまとめています。


重複応募への対応は、特別なシステムがなくても、「連絡前に電話番号で検索する」「本線を一つに決める」「媒体の契約条件を確認する」という三つの習慣で大きく減らせます。ただ、この三つを日々の業務の合間に徹底し続けるのは、兼務の担当者にとって簡単ではありません。応募が集中する時期ほど、確認より先に手が動きます。

社外採用部は、応募の受付から初回連絡、日程調整、面接前後のフォローまでを採用事務局としてお引き受けするサービスです(月額49,800円〜/初回設計費100,000円、以降は支援内容・工数に合わせて個別にお見積り)。窓口が一本化されるため、複数媒体からの応募も一箇所で突合してから連絡が出ていきます。自社の応募対応にどこまで穴があるか整理したい段階でも構いません。サービス責任者の佐々木純平が現状をうかがったうえで、必要な範囲をご提案します。こちらからお気軽にご相談ください。