応募対応を外に任せると決めた。見積もりも確認した。ところが、いざ「では初期設計を始めましょう」となった段階で手が止まる会社は少なくありません。何を渡せばよいのか分からず、社内で資料を探しているうちに一週間、現場に確認しているうちにもう一週間。気づけば募集の山場を過ぎていた、ということが起こります。

準備に時間がかかるのは、担当者の怠慢ではありません。応募対応に必要な情報の多くは、これまで社長や現場責任者の頭の中にあり、文書になっていなかっただけです。この記事では、採用事務局に渡すべき情報を5点に絞り、揃っていない場合にどう埋めるか、どのくらいの時間を見ておけばよいかを整理します。

渡すのは「原稿」ではなく「応募者に答える材料」

まず押さえておきたいのは、事務局が必要としているのは体裁の整った資料ではない、ということです。必要なのは、応募者から質問されたときに正確に答えられる材料です。

たとえば「残業はどれくらいですか」と聞かれたとき、求人原稿には「月平均20時間程度」と書いてあるとします。ですが実態は部署によって差があり、繁忙期は40時間近くになる。この「原稿と実態の差」を事前に共有できていないと、事務局は原稿どおりに答え、面接で社長が別のことを話し、候補者は不信を抱きます。求人票と面接での説明がずれると、辞退されるでも触れたとおり、条件そのものより、説明が食い違うことのほうが信頼を損ないやすいものです。

つまり準備とは、きれいな資料をつくる作業ではなく、社内に散らばっている「実際のところ」を一箇所に集める作業です。そう捉えると、着手のハードルはかなり下がります。

準備リスト5点

渡していただきたい情報は、次の5点に集約できます。

項目具体的に渡すものなぜ必要か
①求人原稿掲載中の全媒体の原稿(画面のスクリーンショットでも可)応募者が見て応募した内容を、事務局も同じ前提で把握するため
②給与・シフトの実態原稿に書ききれていない条件の実情(残業、休日出勤、シフトの組み方、昇給の目安)質問への一次回答と、入社後のギャップ防止のため
③面接可能枠誰が面接するか、いつなら面接できるか(曜日・時間帯)候補日を即提示して面接設定を早めるため
④決裁ライン書類選考・合否・条件提示を誰が決めるか、どこまで一任されているか判断待ちで連絡が止まるのを防ぐため
⑤よくある質問の答え過去に候補者から聞かれた質問とその回答誰が対応しても同じ答えを返すため

①はほとんどの会社がすぐ出せます。手間がかかるのは②から⑤で、いずれも「社内では暗黙に共有されているが、文書にはなっていない」情報だからです。

③の面接可能枠は、準備段階で最もつまずきやすい項目です。「応募が来たら調整します」という状態のままだと、候補日の提示が数日遅れ、初回連絡を速くした意味が薄れます。毎週この曜日のこの時間帯なら面接に出られる、という形で先に枠を押さえておけると、応募当日に日程まで決め切れる確率が上がります。詳しくは面接枠が取れない。現場が忙しい会社の面接枠の作り方をご覧ください。

④の決裁ラインも同様です。「書類は社長が見る」というだけでは、社長が出張中の3日間、選考が止まります。社長不在時に誰がどこまで判断してよいかを決めておくと、連絡の速さは安定しやすくなります(採用の決裁ラインの決め方。誰が最終判断するかで連絡は速くなる)。

揃っていないときの埋め方

5点すべてが最初から文書化されている会社は、一般にほとんどありません。揃っていないのが普通です。埋め方には、それぞれ型があります。

②給与・シフトの実態は、人事資料を探すより、直近1年で入社した社員の実際の勤務データを見るほうが早いことが多いです。タイムカードや給与明細から、残業時間の平均と幅、休日出勤の頻度を拾います。データが整っていなければ、現場責任者に「ここ半年で一番忙しかった月はどんな働き方でしたか」と口頭で聞き、その内容をメモにするだけでも十分に使えます。

③面接可能枠は、面接に出る人が2〜3名なら、その場で予定表を開いて「毎週火曜と木曜の16時から17時」と決めてしまうのが最短です。全員の都合を聞いて回ると、それだけで1週間かかります。まず仮で決め、運用しながら直すほうが早く進みます。

④決裁ラインは、書類選考・面接合否・条件提示・内定の4場面について、「誰が決めるか」「その人が不在のときは誰が決めるか」を1行ずつ書くだけです。30分の打ち合わせで決まることがほとんどです。

⑤よくある質問の答えは、ゼロから想定するのではなく、過去の面接を思い出すほうが確実です。残業、休日、教育体制、人数構成、昇給、辞める人の理由。この6つはどの業種でも聞かれやすい質問です。面接に出ている方に「最近よく聞かれることは何ですか」と尋ね、出てきた順に答えを書き留めてください。答えられない質問が見つかったら、それこそが準備しておく価値のある項目です(面接で候補者から聞かれることに、答えを用意しているか)。

準備にかかる時間の目安

どのくらい時間を見ておけばよいか、仮の目安として整理します。会社の規模や資料の整備状況で変わりますので、あくまで一例としてお考えください。

項目社内で必要な作業所要時間の目安(仮)
①求人原稿掲載画面を集めて共有15〜30分
②給与・シフトの実態勤務データの確認、現場への聞き取り1〜2時間
③面接可能枠面接担当者と枠を仮決め30分
④決裁ライン社長と実務担当で4場面を決める30分
⑤よくある質問の答え質問の洗い出しと回答の文章化1〜2時間

合計すると、正味で半日から1日ほどです。多くの会社で立ち上げが遅れるのは、作業量が多いからではなく、「まとまった時間を取る日を決めていない」ことが原因です。逆に言えば、社長と実務担当の予定を2時間×2回押さえるだけで、準備の大半は片づきます。

なお、これらの情報をもとに連絡フローや文面テンプレートを組み立てる工程は、事務局側の初期設計に含まれます。何にいくら払っているのかが気になる方は採用外注の初期設計費は、何に払う費用なのかもあわせてご覧ください。

完璧に揃えてから始める必要はない

最後に、実務上いちばん大事なことを申し上げます。5点すべてが完璧に揃うのを待つ必要はありません。

①③④の3つ、つまり求人原稿・面接可能枠・決裁ラインさえ決まっていれば、応募の受付と初回連絡、面接設定までは動かせます。②と⑤は、運用を始めてから候補者に実際に聞かれた質問をもとに追記していくほうが、机上で想定するより実用的な内容になりやすいものです。

準備を完璧にしようとして着手が1ヶ月遅れれば、その間に届いた応募は従来どおりの速度で処理されます。応募が月に数件という規模であれば、その1ヶ月の遅れが採用1人分の機会に相当することもあります。7割揃ったら始めて、残りは走りながら埋める。この順番のほうが、結果として早く形になることが多いように感じています。

社外採用部では、初回設計費100,000円のなかで、この5点のヒアリングから連絡フローと文面テンプレートの整備までを担当しています。月額49,800円〜、以降は支援内容・工数に合わせて個別にお見積りします。「何から渡せばいいか分からない」という段階でご相談いただければ、必要な情報を質問形式でお聞きしながら組み立てていきますので、社内で資料を用意してからでなくて構いません。

準備リストのどこが自社に足りていないか整理したい方は、お問い合わせからお気軽にご連絡ください。責任者の佐々木が直接うかがいます。