「少しお話ししたいことが」と声をかけられ、退職の申し出を受ける。その瞬間、頭の中は引き止めるかどうか、現場をどう回すか、他の社員にいつ伝えるかでいっぱいになります。採用のことを考え始めるのは、たいてい本人の意思が固いと分かってからです。
ただ、欠員の期間は「辞めます」と言われた日からではなく、後任が入って立ち上がった日までで決まります。申し出から求人を出すまでに2週間かかれば、その2週間はそのまま欠員期間の後ろに積み上がります。慰留の結論を待ってから動くのではなく、慰留と採用準備を並行させる。この記事では、申し出を受けた当日から1週間のあいだに決めておきたいことを、順番に整理します。
待っているあいだにも、時計は進んでいる
仮の数字で考えてみます。退職の申し出から退職日まで1ヶ月。申し出の翌日に求人を出し、応募から面接・内定まで3週間、内定者が在職中で引き継ぎに1ヶ月かかったとすると、後任の入社は申し出から約2ヶ月後。欠員期間は1ヶ月ほどです。
ここで、慰留の話し合いに2週間、求人原稿の準備にさらに1週間かけると、同じ条件でも入社は3週間ほど後ろにずれます。選考のスピードを上げて取り返すのは簡単ではありませんから、最初の1週間の動きがそのまま欠員期間の長さになりやすい、ということです。
欠員が1人続くことのコストは、残業代や既存社員の負荷として毎月出ていきます。金額の考え方は欠員1人のまま回すと、毎月いくら失っているのかで整理していますので、判断材料が欲しい方はあわせてご覧ください。
申し出を受けた週に決める4つ
決めるべきことは多く見えますが、最初の1週間で必要なのは次の4つに絞れます。全部を完璧に決める必要はなく、「暫定でここまで」と置いておくだけでも先に進みます。
| 決めること | 誰が決めるか | 目安 |
|---|---|---|
| ①後任の要否と要件 | 社長・部門責任者 | 当日〜2日以内 |
| ②引き継ぎ期間と退職日 | 本人と合意 | 3日以内 |
| ③募集開始日 | 社長 | 1週間以内 |
| ④面接できる曜日・時間帯 | 面接官本人 | 1週間以内 |
①後任の要否と要件。まず「同じポジションで1人採るのか」を決めます。業務を他のメンバーに振り分けて人を減らす、パートに置き換える、正社員1人をパート2人にするといった選択肢もあります。採ると決めたら、要件は必須条件を3つ以内に絞っておくと、その後の判断が早くなります(求める人物像は3つに絞る。条件を並べすぎると決められない)。
②引き継ぎ期間と退職日。後任が間に合わない場合、誰が一時的に業務を持つのかもここで決めます。退職日が確定しないと、③の募集開始日も④の面接枠も置きにくくなります。
③募集開始日。「要件が固まってから」と考えると、たいてい2週間ほど先に延びます。暫定の要件で先に掲載日を押さえ、原稿は掲載直前まで調整する進め方のほうが早く動けます。入社希望日から逆算する考え方は「4月までに1人」を逆算する。採用スケジュールの引き方にまとめています。
④面接できる曜日・時間帯。応募が来てから面接官の予定を探すと、候補日の提示が数日遅れます。週のどこに面接枠を置くかを先に決め、カレンダーに仮で入れてしまうのが確実です(面接枠が取れない。現場が忙しい会社の面接枠の作り方)。
退職する本人から聞けることがある
意外と見落とされがちなのが、辞める本人が持っている情報です。求人原稿にも、面接での説明にも使えるものが残っています。関係が悪化していないうちに、30分ほど時間をもらって聞いておくと役に立ちます。
聞いておきたいのは、たとえば次のような内容です。
- 1日の業務の実際の内訳。「◯◯業務」とひとことで書かれている仕事が、実際には何にどれだけ時間を使っているか。求人票の仕事内容が具体的になります
- 繁忙の時間帯と時期。何曜日の何時が忙しいか、月末月初はどうか。面接で勤務実態を説明するときに、曖昧さが減ります
- 引き継ぎが難しい業務。その人しか知らない作業があるなら、後任の要件に反映するか、マニュアル化を頼むかを判断できます
- 後任に求めたい資質。現場目線で「こういう人だと回る」という感覚は、社長の見立てとずれていることがあります
退職理由そのものを深追いする必要はありません。ただ、仕事の中身や負荷について率直に話してもらえれば、同じ理由で次の人が辞めるのを避けやすくなります。求人票と実際の仕事の説明がずれると、入社後ではなく選考中に辞退が起きます。
慰留と採用準備は、並行させて構わない
「引き止めている最中に後任を探すのは失礼ではないか」と感じる方は少なくありません。ただ、採用準備を進めることと、本人に残ってほしいと伝えることは両立します。慰留の結論が出るまで何も動かさない会社ほど、結果として慰留に失敗したときのダメージが大きくなります。
実務上は、次のような順番にしておくと社内が混乱しにくくなります。
- 申し出を受けた当日、退職日と引き継ぎの大枠を本人と仮置きする
- 慰留の意思がある場合は、数日のあいだに条件や配置の見直しを提示する
- 並行して、社長と部門責任者で後任の要否・要件・募集開始日を決める
- 慰留の結論が出た時点で、募集を開始するか取り下げるかを判断する
求人の掲載は、慰留が成立した段階で止めることもできます。止めるコストより、動き出しが遅れるコストのほうが大きくなりやすい、という判断です。
社内への共有も、この段階で線を引いておきます。退職の事実をいつ誰に伝えるかと、募集を始めることをいつ現場に伝えるかは別の話です。現場が「採用していることを知らなかった」という状態だと、面接の日程も見学の受け入れも組めません。少なくとも面接に関わる人には、募集開始のタイミングで伝えておきます。
1週間で決めきれないときの備え
ここまで読んで「わかってはいるが、その1週間がいちばん忙しい」と感じた方も多いはずです。退職の申し出を受けた週は、引き継ぎの調整、他の社員への説明、取引先への連絡が重なります。その上で求人原稿を書き、媒体を選び、応募の受付体制を整えるのは、兼務の担当者には重い作業です。
社外採用部は、中小企業の採用事務局として、求人・媒体の運用といった母集団形成から、応募の受付、初回連絡、日程調整、面接前後のフォロー、内定・入社フォローまでを社外から引き受けるサービスです。採用の局面に合わせて当社から担当をアサインしますので、一人分の人件費で複数の役割を使い分けられます。面接そのものと採否の判断は御社に残り、それ以外の実務を外に出す、という分け方です。料金は月額49,800円〜、初回設計費100,000円で、以降は支援内容と工数に合わせて個別にお見積りします。
退職の申し出は、たいてい予告なく来ます。そのときに動き出せる状態をつくっておきたい、あるいは今まさに1人の欠員が決まったところだという方は、お問い合わせからご相談ください。現在の体制と空いている時間を伺ったうえで、どこから手を入れるのが早いかをお話しします。
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