人事評価の時期になって、採用を担当している社員をどう評価すればいいのか手が止まる。営業なら売上、製造なら生産量という物差しがあるのに、採用には分かりやすい数字がない。結局「今年は何人採れたか」で見てしまい、本人からは不服そうな顔をされる。そんな経験をお持ちの経営者は少なくないと思います。
採用人数は確かに大事な結果です。ただ、それだけで担当者を評価すると、本人の努力とは無関係な要因で評価が上下してしまいます。ここでは、担当者本人の行動で変えられる範囲に評価を絞るという考え方を整理します。
採用人数で評価すると、担当者は運に振り回される
採用人数は、担当者ひとりの力で決まるものではありません。その年の求人倍率、競合他社の採用動向、自社が出せる給与条件、面接官である社長や現場責任者の判断、そして何より「そもそも何人応募が来たか」。これらの大半は、担当者がコントロールできない領域にあります。
仮の話として、同じ人が同じやり方で仕事をしていても、応募が月20件来た年と月5件しか来なかった年では、採用人数は大きく変わります。応募が少ない年の担当者を低く評価すれば、本人は「自分の責任ではないことで下げられた」と感じるでしょう。逆に応募が多い年に高く評価すれば、本人は何が良かったのか分からないまま次の年を迎えます。
評価は、本人の行動を改善させるためにあります。本人が動かせない数字で評価すると、改善のしようがありません。ですから、採用人数は「会社としての結果」として全員で見る数字に置き、担当者個人の評価には別の物差しを用意するのが現実的です。
評価に使うのは「本人が動かせる指標」に絞る
担当者本人の行動で変えられることは、意外とはっきりしています。応募が来てから、どれだけ速く、どれだけ丁寧に、どれだけ漏れなく対応したか。この3つに集約されます。
| 指標 | 何が分かるか | 評価への使い方 |
|---|---|---|
| 初回連絡までの時間 | 応募への反応の速さ | 月の平均と、最も遅かった件を見る |
| 面接設定率 | 応募を面接につなげられたか | 月ごとに記録し、推移で見る |
| 未対応の滞留件数 | 取りこぼしが起きていないか | 週末時点でゼロかどうか |
| 候補者からの苦情・行き違い | 対応品質に問題がなかったか | 件数と、起きたあとの対処を見る |
| 記録の残り方 | 他の人が引き継げる状態か | 管理表の記入漏れを抜き取りで確認 |
初回連絡までの時間と面接設定率は、応募対応の基本的な物差しです。詳しい測り方は面接設定率という指標。応募からの歩留まりを測る第一歩と応募後1時間以内の初回連絡が、採用の歩留まりを変える理由で整理していますので、記録の仕組みがまだない場合はそちらをご覧ください。
苦情や行き違いについては、件数のゼロを求めるのではなく、起きたときにすぐ報告が上がってきたか、どう対処したかを見るほうが実務に合います。ゼロを評価基準にすると、都合の悪いことが報告されなくなるためです。
なお、これらの指標は社長への月次報告の数字とは目的が違います。報告は会社の状況を知るため、評価は本人の行動を改善するため。重なる項目もありますが、同じ資料で兼ねようとすると、どちらも中途半端になりやすいところです。報告用の数字の絞り方は社長に報告する採用の数字は、この4つで足りるにまとめています。
基準が甘すぎても厳しすぎても、対応の質は落ちる
評価基準の置き方には、二つの失敗の仕方があります。
甘すぎる場合。「頑張ってくれているから」で毎回同じ評価が続くと、担当者は何を改善すべきか分からないまま年を重ねます。応募対応は、放っておくと少しずつ雑になっていく性質のものです。忙しい月に初回連絡が翌日にずれ、それが常態になり、やがて誰も気づかなくなる。基準がなければ、このずれを検知できません。
厳しすぎる場合はもっと厄介です。面接設定率を高い水準で固定し、下回れば評価を下げるという運用にすると、担当者は数字を作りにいきます。たとえば、条件が合わない応募者にも無理に面接を勧める。本来その日のうちに見送りを伝えるべき応募を保留にして、翌月の母集団に回す。いずれも短期的には数字が整いますが、面接官の時間は削られ、候補者には失礼な対応が残ります。
ひとつの数字に強い圧力をかけると、その数字以外のところに歪みが出るというのは、採用に限らず起きることです。これを避けるには、指標を複数組み合わせて見ること、そして目標値を「前月より改善したか」という相対的な置き方にすることが有効です。絶対水準で縛るより、動きを見るほうが実態に合います。
また、面接設定率のような数字は、求人の出し方や募集条件によっても変わります。応募の中身が変われば歩留まりも変わるので、数字が下がったときは原因を一緒に確認する姿勢が要ります。評価面談を「詰める場」ではなく「原因を切り分ける場」にできるかどうかで、担当者の動き方は変わってきます。
兼務者をどう評価するか
中小企業では、採用専任を置いている会社のほうが少ないはずです。総務や経理との兼務で、採用は業務の2割から3割という方が多いでしょう。
兼務者を採用の指標だけで評価すると、不公平が生じます。かといって採用を評価対象から外すと、応募対応は「手が空いたらやる仕事」に落ちていきます。
現実的なのは、評価項目のうち採用に割り当てる比重を、実際の業務時間の割合に近づけて明示することです。「あなたの評価のうち、採用に関する部分は3割です」と先に伝えておく。そのうえで、上の表のような指標を本人に共有しておきます。評価される側が、評価される項目を事前に知っている。これだけで、日々の優先順位の付け方が変わります。
そして、兼務者に求める水準は、専任者と同じにはできません。応募が集中する月に初回連絡が遅れたとき、それは本人の怠慢ではなく体制の問題である可能性が高いものです。忙しい月ほど応募対応が雑になる。品質低下の前兆をどう掴むかでも触れているとおり、質の低下は数字に先に出ます。評価面談でその兆候を見つけたら、本人を責める前に、仕事量と人員の配分を見直す合図と捉えてください。
評価の前に、評価できる状態をつくる
ここまで挙げた指標は、記録がなければ測れません。応募日時、初回連絡の日時、面接設定の有無、結果。この4項目が残っていない会社では、評価どころか現状把握もできない状態です。
まずは管理表を一枚つくり、3ヶ月分の数字を溜めてみてください。その数字を本人と一緒に眺めるところから始めると、評価は納得感のあるものになっていきます。数字が出てはじめて、「ここは本人の工夫で改善できる」「ここは人を増やさないと無理だ」という線引きができるようになります。
そして、線引きの結果「本人の努力では届かない」と分かったなら、それは担当者の評価ではなく体制の問題です。応募の受付や初回連絡、日程調整といった実務を社外に持つという選択肢もあります。考え方は採用担当者を雇う前に、社外へ採用機能を持つという選択にまとめました。
社外採用部は、母集団形成から応募の受付、初回連絡、日程調整、面接前後のフォロー、内定・入社後のフォローまでを、採用事務局として社外から担うサービスです(面接そのものと採否の判断は御社にお任せします)。料金は月額49,800円〜、初回設計費100,000円。以降は支援内容と工数に合わせて個別にお見積りします。採用の局面に合わせて当社から担当をアサインしますので、一人分の人件費で複数の役割を使い分けていただけます。
担当者を評価する前に、その人が一人で背負いきれる量なのかを確かめる。その検討材料として、一度ご相談ください。サービス責任者の佐々木がお話を伺います。
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