採用の会議で、総務担当が媒体ごとの応募数や候補者一人ひとりの進捗を丁寧に説明したのに、社長からは「で、どうすればいい?」と返ってくる。逆に社長の側からは「報告は受けているが、何をどう判断すればいいのかわからない」という声を聞きます。これは担当者の説明が下手なわけでも、社長の理解が足りないわけでもありません。報告されている情報が、判断に使える形になっていないだけです。
社長が採用について下せる判断は、実はそう多くありません。求人を出し続けるか止めるか、対応のやり方を変えるか、人や外部の手を足すか。この程度です。であれば、報告に必要な数字も、その判断に直結するものだけで足ります。この記事では、月次で上げる指標を4つに絞る考え方と、A4一枚に収める報告の形をご紹介します。
なぜ数字を4つに絞るのか
採用の指標は、数えようと思えばいくらでも増やせます。媒体別の応募単価、職種別の歩留まり、面接官ごとの合格率。どれも意味のある数字ですが、月に一度しか見ない社長にとっては、多すぎる数字はノイズになります。
そして数字が増えるほど、集める側の負担も増えます。兼務で採用を回している総務担当が、報告のために毎月2時間かけて集計するようでは、いずれ続かなくなります。続かない報告は、ない報告と同じです。
絞る基準は「その数字が動いたとき、社長が何かを決められるか」。決められない数字は、月次報告からは外してかまいません。四半期に一度、腰を据えて振り返るときに見ればよいものです。
報告する4つの数字
1. 応募数
その月に何件の応募が届いたか。媒体別に分けておくと、次の掲載判断に使えます。ここは「入口の量」を見る数字です。
2. 初回連絡までの平均時間
応募が届いてから、こちらが電話やSMSで最初に接触するまでの時間。日数ではなく時間単位で記録します。応募対応の速さは歩留まりに直結しやすい部分で、詳しくは応募後1時間以内の初回連絡が、採用の歩留まりを変える理由で扱っています。
平均だけでなく「24時間を超えた件数」も併記すると、実態がつかみやすくなります。平均が5時間でも、10件中2件が3日放置されていれば問題は残っています。
3. 面接設定率
応募のうち、何件が面接日程の確定まで進んだか。応募が活かせているかを測る中心的な指標です。計算方法や記録の仕方は面接設定率という指標。応募からの歩留まりを測る第一歩にまとめています。
4. 内定承諾率
内定を出した人数のうち、承諾に至った人数の割合。母数が小さいため月ごとの振れ幅は大きくなりますが、累計で見ると傾向が出ます。
A4一枚の報告フォーマット
以下は仮の数字を入れた例です。この形をそのままExcelやスプレッドシートに作り、毎月同じ欄を埋めるだけにしておきます。
| 項目 | 当月 | 前月 | 3ヶ月平均 | メモ |
|---|---|---|---|---|
| 応募数 | 12件 | 8件 | 10件 | A媒体7/B媒体5 |
| 初回連絡までの平均時間 | 6時間 | 20時間 | 12時間 | 24時間超2件 |
| 面接設定率 | 50%(6/12) | 25%(2/8) | 38% | — |
| 内定承諾率 | 100%(1/1) | —(0/0) | 67% | — |
| 採用決定 | 1名 | 0名 | — | 製造ライン |
大事なのは前月と3ヶ月平均を並べることです。単月の数字だけでは、良いのか悪いのか判断できません。特に応募数の少ない中小企業では、1件の増減で率が大きく動きます。3ヶ月平均を横に置くだけで、「今月はたまたま」なのか「傾向として変わった」のかが見分けやすくなります。
メモ欄は自由記述で構いませんが、書くのは事実だけにします。「対応が遅れてしまい申し訳ありません」といった反省は不要です。報告書は謝る場ではなく、判断材料を渡す場です。
数字が動いたとき、社長は何を決めるか
4つの数字は、組み合わせで読むと打ち手が見えてきます。
応募数が少なく、面接設定率は高い——入口の量が足りていません。掲載媒体の追加や原稿の見直しを検討する場面です。ただし、応募数が少ない月が1回続いただけで媒体を変えるのは早すぎます。
応募数はあるのに、面接設定率が低い——ここが最も多いパターンです。せっかくの応募を面接まで運べていません。初回連絡までの平均時間が長ければ、まずそこから直します。媒体を変える前に確認すべきことは求人媒体を変える前に確認したい、応募後対応の数字で整理しています。
面接までは進むのに、内定承諾率が低い——面接の場での説明や、内定後のフォローに課題があります。条件の伝え方や、返事を待つ間の連絡設計を見直す段階です。
すべての数字が悪くないのに採用できない——単純に母数が足りないか、判断基準が厳しすぎるか。このときは数字ではなく、求める人物像の議論に切り替えます。
社長がこの4象限のどこにいるかを毎月確認できれば、それだけで採用の意思決定はかなり速くなります。
報告を続けるための、最小限の記録
報告の質は、日々の記録で決まります。月末に思い出しながら数えるのでは、初回連絡までの時間などは正確に出せません。
必要なのは、応募1件ごとに「応募日時」「初回連絡日時」「面接設定の可否」「結果」の4列を持つ一覧表です。ExcelでもATSでも構いません。この4列があれば、月次の4指標はそのまま計算できます。逆にいえば、これ以上の項目を最初から設計する必要はありません。
ただ、この記録を毎日更新し続けること自体が、兼務の担当者にとっては負担になります。応募対応そのもので手一杯という会社では、記録が後回しになり、数ヶ月で止まってしまうこともあります。社外採用部では、応募の受付から初回連絡、日程調整、面接前後のフォローまでを代行しながら、対応の記録がそのまま月次の報告数字になる形でお渡ししています。担当者が集計に時間を使わずに済むことは、報告を続けるうえで小さくない差になります。
採用の数字を社長に見せる目的は、担当者の頑張りを証明することではなく、次の一手を決めることです。4つの数字とA4一枚。まずはこの形から始めてみてください。自社の報告の形や、応募対応の任せ方についてご相談があれば、お問い合わせからお気軽にお声がけください。
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