面接に来てくださった方の履歴書が、机の引き出しやキャビネットに何枚も残っている。不採用の連絡は済ませたけれど、書類をどうするかまでは決めていない。そのまま半年、一年と積み上がっていく——中小企業では珍しくない光景です。
採用そのものに比べると地味な話に見えますが、他人の氏名・住所・生年月日・職歴・場合によっては顔写真まで含まれた紙が、管理されないまま社内にある状態です。扱いを決めておくことは、候補者への誠実さであると同時に、会社を守ることでもあります。
机の中の履歴書は、会社の資料ではなく預かりもの
応募書類は、選考のために提出していただいたものです。選考が終われば、その目的は果たし終えています。個人情報保護法では、利用する必要がなくなった個人データは遅滞なく消去するよう努めることが求められるとされています。つまり「とりあえず取っておく」は、本来の原則からは外れた状態です。
管理されない書類は、具体的にこうしたことが起きやすくなります。
- 退職や席替えのときに、引き出しの中身ごと行方が分からなくなる
- 鍵のかからない棚に置かれ、採用に関係のない社員の目に触れる
- 「あの人の書類どこだっけ」と探す時間が、毎回発生する
- 不採用にした方から「書類はどうなりましたか」と問い合わせを受けたときに答えられない
最後の問い合わせは、実際に届くと冷や汗をかく類のものです。候補者側から見れば、自分の個人情報を預けた相手がどう扱っているのかを知りたいのは当然のことで、答えられないこと自体が会社への不信につながります。不採用者への対応が、会社の評判をつくるでも触れたとおり、落とした方への扱いは、採った方への扱い以上に外へ伝わりやすい性質があります。
返す・処分する・一定期間預かる。3つの扱いを比べる
扱い方は大きく3つです。どれかが正解というものではなく、応募件数や職種、郵送の手間をどこまで許容できるかで選びます。
| 扱い | 向いている場面 | 会社側の負担 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 返却する | 面接で原本を預かった、応募数が少ない、資格証の写しなど再発行が面倒な書類がある | 封筒・送料・送付の手間が1件ごとに発生 | 送付先の記載ミス、到着までの管理 |
| 責任をもって処分する | 応募数が多い、データで受け取っている、郵送対応の手が割けない | 低い。ただし処分の記録は必要 | 処分した事実を説明できる状態にしておく |
| 一定期間預かってから処分する | 再応募や欠員補充の可能性がある、複数ポジションで検討したい | 保管場所と期限管理の手間 | 期限を決めずに置くと「積んだまま」に戻る |
実務としては、「原則は責任をもって処分、本人から返却の希望があれば返す」という形を基本にしている会社が多いようです。郵送費と手間を毎回かけるより、処分の方針をはっきり示すほうが運用として続きやすいためです。一方で、原本を預かる運用をしている場合は返却が前提になります。そもそも原本を預からない、面接時に持参いただいてその場で確認して返す、という選び方もあります(履歴書はいつ求めるべきか。応募直後に頼むと離脱する)。
扱いは、応募を受ける前に伝えておく
後から説明するより、先に書いておくほうが圧倒的に楽です。求人票の備考欄や、応募受付時の自動返信、面接の案内メールに一文入れておきます。
ご提出いただいた応募書類は、採用選考の目的にのみ使用いたします。選考結果のご連絡後、採用に至らなかった場合は当社で責任をもって破棄いたします。ご返却をご希望の場合は、お手数ですが選考結果のご連絡後◯日以内にお申し出ください。
一定期間保管する方針なら、次のように書き換えます。
採用に至らなかった場合、応募書類は選考終了後◯ヶ月間当社で保管し、その後責任をもって破棄いたします。この間、別の職種でご案内できる求人が生じた際にご連絡を差し上げる場合があります。ご希望されない場合はお知らせください。
ポイントは、期間と処分方法を数字と言葉で書き切ってしまうことです。「適切に管理します」だけでは、問い合わせが来たときに結局答えられません。なお、外部の委託先と書類やデータを共有している場合の考え方は応募者の個人情報、どこまで社外に出していいのかで整理しています。
返すとき、処分するときの実務
返却する場合。 不採用の通知と同じ封筒に書類を入れて送るのは避けたほうが無難です。不採用の文面と自分の履歴書が同封されて届くと、受け取る側の感情は想像しやすいところです。結果連絡を先に済ませ、書類は別便で送る。封筒は中身が透けないものを選び、宛名の書き間違いがないか送付前に必ず確認してください。同封する送り状は短くて構いません。
このたびは当社の選考にご応募いただき、ありがとうございました。先日ご連絡いたしましたとおり、今回はご期待に沿えない結果となりましたが、ご提出いただいた応募書類を返却いたします。ご確認くださいますようお願い申し上げます。末筆ながら、◯◯様の今後のご活躍をお祈り申し上げます。
処分する場合。 シュレッダーにかける、または施錠できる回収ボックスに入れて溶解処理を依頼する。パソコンやクラウド上のデータも、同じタイミングで削除します。媒体の管理画面に残っている応募情報、担当者の受信メールの添付ファイル、印刷して配った面接用の控え。紙だけ処分しても、複製があちこちに散っていては意味がありません。
そして、処分した事実を一行残します。立派な台帳は要りません。応募者管理表に「書類処分日」の列を一つ足し、日付と処理した人の名前を入れるだけで十分です。問い合わせを受けたとき、「◯月◯日に社内で破棄しております」と即答できる状態になります。
再応募に備えて残すのは、書類そのものではなく記録
書類を処分すると、過去の応募者の情報が何も残らないのではと心配になります。ここで分けて考えたいのが、「書類」と「記録」です。
一度不採用にした方が、数ヶ月後、経験を積んで再応募してくることはあります。そのとき前回の記録がゼロだと、同じ質問を一から繰り返すことになり、候補者側も「前にも応募したのですが」と気まずい思いをします(過去に不採用にした人が再応募してきたときの扱い)。
残すのは、原本ではなく最小限の項目です。たとえば次の5つ程度。
- 応募日と応募経路(媒体名・紹介など)
- 氏名と連絡先
- 応募職種
- 進んだ段階(書類まで/面接まで)と結果
- 見送り理由の要点を一行(例:希望勤務時間が合わず)
これなら個人情報の量を抑えつつ、再応募時や欠員補充時に判断ができます。項目の決め方は応募者の記録は何を残せばいいのか。最低限の6項目も参考になります。ただし、この記録も無期限に持ち続けるものではありません。保有する期間を自社で決め、その期間が過ぎたら記録も消す。ここまで決めて初めて運用になります。
こうした「決めれば終わるが、決めるまで誰も手を付けない仕事」は、採用の周辺にいくつもあります。応募の受付から結果連絡、その後の書類の扱いまでを一本の手順として整え、日々回していく部分を社外に預けるという選択肢もあります。社外採用部では、応募受付から面接の日程調整、面接前後や内定後のフォロー、母集団形成までを、御社の採用の局面に合わせた担当がお引き受けします(面接そのものと採否の判断は御社にお任せいただく前提です)。料金は月額49,800円から、初回設計費100,000円。支援内容と工数に応じて個別にお見積りします。
机の引き出しの書類が気になっている方は、お問い合わせから今の状況をお聞かせください。どこから手を付けるべきか、一緒に整理いたします。
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