応募者へ送った面接案内に、「当日は3Fの第二会議室にて、一次面談(職種はCS)を実施します。持参物は履歴書と、前職の経歴がわかるものをご準備ください」と書かれていたとします。社内では毎日使っている表現ですが、受け取った側は「CSとは何の仕事か」「面談と面接は違うのか」「第二会議室はどこで聞けばいいのか」と、いくつもの小さな疑問を抱えたままになります。

厄介なのは、候補者がその疑問をほとんど質問してこないことです。選考中の立場で「意味が分かりません」とは聞きにくく、分からないまま当日を迎えるか、不安が積み重なって静かに離れていきます。言葉の問題は、連絡のスピードや面接の質と違って、社内からは見えにくいところが特徴です。

社内では当たり前の言葉が、候補者には暗号になる

長く同じ会社にいると、自社の言葉が一般名詞なのか社内語なのかの区別がつかなくなります。採用の連絡文に紛れ込みやすいのは、おおむね次の3種類です。

ひとつ目は略語です。部署名や職種名をアルファベット2〜3文字で呼んでいる会社は多く、CS、BD、PM、SV、AD といった表記は、業界が違えば別の意味に読まれます。ふたつ目は社内の工程名・場所名です。「一次」「二次」「本部面談」「役員枠」「A棟」「旧館」など、社内の地図と手順を知っている前提の言葉です。三つ目は業界用語です。工種、職制、資格の略称、設備や商材の呼び名などは、経験者であっても他社では違う呼び方をしていることがあります。

これらが混ざると、候補者は「自分が応募した仕事が本当にこれで合っているのか」を確認できません。求人票では「カスタマーサポート」と書いてあったのに、連絡文では「CS」、面接の場では「サポートデスク」と呼ばれる。呼び名が3つあると、候補者は3つの別の仕事を想像します。説明の中身がずれていなくても、言葉がずれているだけで不信につながることがあります。条件面のずれについては求人票と面接での説明がずれると、辞退されるでも整理しています。

落とす言葉を洗い出す。15分でできる手順

特別な調査は必要ありません。いま使っている文面を集めて、赤を入れるだけです。

  1. 応募者に送っている文面をすべて並べる(自動返信、初回連絡、面接案内、前日リマインド、合否連絡、内定通知)
  2. 採用に関わっていない社員、できれば中途入社1年未満の方か、まったく別部署の方に読んでもらう
  3. 「一度読んで意味が取れなかった言葉」に印をつけてもらう
  4. 印のついた言葉を一覧にし、言い換え後の表現を決める
  5. 決めた言い換えを、文面テンプレートに反映する

社内で長く働いている人に読んでもらうと、すべて読めてしまうので意味がありません。「知らない人が読んで分かるか」が唯一の判定基準です。実在の応募者に聞く前に、社内で代わりを立てるのが現実的です。

書き換えの方向は、だいたい次のようになります。

落としたい表現言い換えの例
一次面談を実施します1回目の面接を行います(面接は全2回を予定しています)
職種:CS職種:カスタマーサポート(お客様からのお電話・メール対応)
本社3F 第二会議室本社ビル3階の会議室(1階受付で「採用面接で来ました」とお伝えください)
弊社規定による月給◯◯万円〜◯◯万円(経験と保有資格により決定します)
追って選考結果をご連絡面接から3営業日以内に、お電話でご連絡します
現場配属後、OJTにて入社後は先輩社員が横について、実際の作業を一緒に進めながら覚えていただきます

ポイントは、略語を正式名称に戻すだけで終わらせないことです。「CS」を「カスタマーサポート」に直しても、具体的に何をする仕事かは伝わりません。言い換えとは、カッコ書きで一行の説明を足すところまでを含みます。

ビフォーアフターで見る、面接案内の文面

同じ内容でも、言葉を入れ替えるだけで受け取り方が変わります。

ビフォー

〇〇様 お世話になります。この度は弊社求人へご応募いただきありがとうございます。 下記日程にて一次面談を実施いたしますので、ご参集ください。 日時:10月15日 14:00〜 場所:本社3F 第二会議室 持参物:履歴書、職歴のわかるもの 担当:人事 佐藤

アフター

〇〇様 株式会社〇〇の佐藤です。このたびはご応募いただきありがとうございます。 面接の日程が決まりましたので、ご案内します。面接は全部で2回を予定しており、今回はその1回目です。 日時:10月15日(水)14:00〜 / 所要時間は45分ほどです 場所:本社ビル(〇〇市〇〇1-2-3)の3階会議室    1階の受付で「14時から採用面接の〇〇です」とお伝えください。担当者がお迎えにあがります。    駐車場は建物裏手に5台分あります。ご利用の場合は事前にお知らせください。 お持ちいただくもの:履歴書、職務経歴書(お手元になければ当日のご記入でも構いません) 服装:スーツでなくても構いません。普段のお仕事に近い服装でお越しください。 当日の連絡先:090-〇〇〇〇-〇〇〇〇(佐藤の携帯) ご不明な点があれば、このメールにそのままご返信ください。

長くなりましたが、増えたのは「候補者が当日困る場面」への先回りです。受付での名乗り方、所要時間、服装、連絡先。これらは候補者が聞きにくく、分からないまま当日を迎えると遅刻や当日キャンセルの引き金になりやすい項目です。候補者から質問が届いたときの返し方は候補者からの質問メールに、どこまで即答するかもあわせてご覧ください。

呼び名を1枚にそろえる。求人票と連絡文の往復をなくす

言い換えを決めても、それが担当者の頭の中にあるだけだと、次の募集では元に戻ります。A4一枚の「呼び名リスト」を作って共有するのが、いちばん手間のかからない方法です。

項目は3列で足ります。「社内での呼び方/応募者に使う呼び方/一行の補足説明」。職種名、部署名、選考ステップの呼び名、勤務地の呼び名、資格・設備の名称を並べます。求人票を書くときも、連絡文を書くときも、面接で説明するときも、この1枚を見る。それだけで、媒体・メール・面接の三か所で呼び名が割れる事態は起きにくくなります。

面接官が現場の責任者である場合は、この1枚を面接前に渡しておきます。文面は整っているのに面接の場で「それ、うちではSVって呼んでるやつね」と言われると、せっかくそろえた言葉が崩れます。文面テンプレートと一緒に保管しておくと運用しやすく、作り方は応募対応マニュアルの作り方。1日で書ける最小構成で触れている考え方と同じです。更新は、新しい職種の募集を始めるときと、言い換えに迷う言葉が出たときだけで十分です。

すべてをやさしくすればよい、というわけでもない

一方で、落としてはいけない言葉もあります。資格の正式名称、法律上の用語、扱う製品や工法の正式な呼称などは、言い換えると情報としての価値が落ちます。経験者の方にとっては、正確な用語があることで「この会社は分かっている」と判断する材料にもなります。

判断の目安は、「その言葉が候補者の行動を決めるか」です。当日どこへ行けばよいか、何を持っていけばよいか、どんな仕事をするのか。行動に関わる言葉はやさしく、専門性の証明に関わる言葉は正確に。未経験者向けの募集と経験者向けの募集で、同じ文面を使い回さないことも大切です。

言葉を整えるのは、派手な施策ではありません。ただ、候補者体験を良くすると、なぜ採用成功につながるのかでも書いたとおり、応募数が限られる会社ほど、一人ひとりの不安を減らす積み重ねが結果に効いてきます。費用もかからず、今日から着手できる領域です。


とはいえ、日々の業務の合間に文面を見直し、呼び名をそろえ、面接官にも共有し続けるのは、兼務の担当者には負担の大きい仕事です。社外採用部は、中小企業の採用事務局として、母集団形成から応募の受付・初回連絡・日程調整・面接前後のフォロー、内定や入社のフォローまでを社外から担います。連絡文の整備や用語の統一といった地味な運用も、採用の局面に合わせてアサインした担当が引き受けます。面接そのものと採否の判断は御社に残したまま、その手前と後ろを任せていただく形です。

料金は月額49,800円〜、初回設計費100,000円。支援内容と工数に合わせて個別にお見積りします。自社の連絡文が応募者に伝わっているか確かめたい方は、お問い合わせからお気軽にご相談ください。