内定を伝えた候補者から返ってきた、「ありがとうございます。ただ、実はもう1社選考中でして、少し迷っています」という言葉。採用に苦労してきた会社ほど、この一言に動揺します。返事を急かすべきか、条件を上乗せすべきか、それとも黙って待つべきか。結論を先に言えば、「迷っています」は悪い知らせではなく、対話の入口です。

まず前提。迷うのは当たり前

中途採用の候補者が複数の会社を並行して受けるのは、ごく普通の行動です。生活がかかった意思決定なのですから、比較して当然です。むしろ「迷っています」と正直に伝えてくれたことは、あなたの会社が選択肢として残っており、誠実に向き合おうとしてくれている証拠です。

ここで焦って「いつまでに決めてもらえますか」と期限だけを突きつけると、候補者の中では「圧をかけてくる会社」という印象が残ります。

やってはいけない2つの反応

1. 押し込む

「他社よりうちのほうがいいですよ」と説得を始めるのは逆効果です。候補者は比較検討の材料が欲しいのであって、営業トークが聞きたいわけではありません。押されて決めた入社は、入社後の「こんなはずでは」につながりやすいことも、見過ごせない問題です。

2. 放置する

「決まったら連絡ください」と待ちに入るのも危険です。迷っている間、他社は接点を持ち続けているかもしれません。情報が届き続ける会社と、音沙汰のない会社。天秤は自然と前者に傾きます。候補者の側も「こちらから連絡していいのだろうか」と遠慮しているものです。待つと決めた場合でも、「◯日にこちらから一度ご連絡します」と伝えておくだけで、放置とはまったく違う待ち方になります。

向き合い方:比較の軸を一緒に整理する

おすすめしたいのは、説得でも放置でもなく、候補者が何と何を比べているのかを聞くことです。

「差し支えなければ、どんな点で迷われているか伺えますか」。この質問に答えてもらえれば、やるべきことが具体的になります。聞かれた候補者にとっても、自分の頭の中を整理する機会になります。

大切なのは、自社に不利な軸でも正直に応えることです。比較の結果選ばれなかったとしても、それは「合わない入社」を未然に防いだということでもあります。

条件の上乗せは、その場で答えない

迷いの理由が給与のとき、「では他社より上げます」と即答したくなるかもしれません。しかし、その場しのぎの上乗せは、既存社員との賃金バランスを崩し、入社後の火種になります。「なぜあの人だけ」という空気は、本人にとっても働きづらさになります。

上乗せを検討する場合は、いったん持ち帰り、社内の賃金体系の中で説明がつく形に整えてから、正式な提示としてあらためて伝えるのが筋です。持ち帰ること自体は誠実さの表れであり、印象を損ねるものではありません。

決断の期限は、候補者の時間軸で決める

回答期限は必要です。ただし一方的に切るのではなく、「他社の選考はいつ頃結果が出そうですか」と聞いたうえで、双方が納得できる日を一緒に決めるほうが、信頼は保たれます。そのうえで期限までの間、疑問が出てきたらいつでも聞ける窓口を示しておきましょう。

迷いを聞き出せる関係が、それまでに築けているか

ここまでの向き合い方はすべて、候補者が迷いを打ち明けてくれることが出発点です。応募後の連絡が遅く、面接前後のフォローもなかった会社に、候補者は本音を話しません。「他社と迷っています」に対応する力は、実は応募直後からの積み重ねで決まっています。

また、内定を出した会社の担当者には言いにくい本音も、選考の判断に関わらない第三者の窓口になら話せることがあります。社外採用部は、応募対応から内定後のフォローまでを採用事務局として代行し、候補者の迷いや不安を早い段階でつかむお手伝いをしています。内定辞退が続いているようでしたら、無料相談でこれまでの経緯をお聞かせください。