面接は終わりました。経歴に穴はなく、募集要件も満たしている。受け答えも悪くない。けれど「この人で決めよう」と言い切れない。そのまま資料を机の端に置き、翌日も、その次の日も判断が持ち越されていく——中小企業の採用で、最も静かに、しかし確実に候補者を失っているのはこの時間ではないでしょうか。

厄介なのは、迷っていること自体は悪いことではない、という点です。慎重に考えるのは経営者として当然の姿勢です。問題は、迷いの中身が整理されないまま時間だけが過ぎ、その間に候補者への連絡が止まってしまうことにあります。この記事では、決めきれないときの「迷いの正体」を3つに分け、それぞれどう解けばよいかを整理します。

迷いは3種類に分けられる

決めきれないと感じているとき、頭の中では別々の性質の問題が混ざっています。支援の現場で経営者の方に「何が引っかかっていますか」と伺うと、おおむね次の3つのどれかに落ち着きます。

迷いの種類頭に浮かんでいる言葉解き方
情報不足「ここが聞けていない」「実際どうなんだろう」追加確認を一本だけ入れる
基準不在「良いような気もするが、基準が分からない」募集要件に戻って照らす
比較待ち「もう一人見てから決めたい」期限を切って、待たせ方を設計する

この切り分けが大事なのは、種類によって打つ手がまったく違うからです。情報が足りないのに基準を見直しても解決しませんし、比較待ちなのに追加質問を投げても、候補者を疲れさせるだけで終わります。まずは「自分は今どれで止まっているのか」を一言で言えるようにしてください。言葉にできない迷いは、たいてい翌週まで残ります。

情報不足なら、追加確認を一本だけ入れる

「経験年数は聞いたが、実際にどこまで一人でやっていたか分からない」「前職を辞めた理由の説明が少し曖昧だった」。こうした具体的な引っかかりがあるなら、それは情報不足です。この場合の解き方はシンプルで、確認の連絡を一本入れることです。

ここで守っていただきたいのは、一本だけにするということです。聞きたいことを全部並べて長文のメールを送ると、候補者からは「まだ疑われている」「二次面接が増えるのか」と受け取られやすくなります。5分の電話で「先日の件で一点だけ伺えますか」と切り出すのが、最も摩擦が少ない形です。

また、追加確認をする前に「この答えが◯◯だったら採用、△△だったら見送り」と、自分の中で先に決めておいてください。これを決めずに聞くと、答えを聞いてもまた迷います。確認は情報を増やすためではなく、判断を確定させるために行うものです。

もうひとつ見落とされがちなのが、面接直後の記録です。「なんとなく良かった」という感触は3日で薄れ、1週間後には何が引っかかっていたのかすら思い出せなくなります。面接直後の5分で根拠を一行残しておくだけで、後日の迷いはかなり減ります。この点は面接後に「なんとなく良かった」で終わらせない評価シートで詳しく整理しています。

基準不在なら、募集要件に戻る

「悪くはないけれど、決め手がない」という漠然とした迷い方をしているときは、情報ではなく基準のほうが欠けています。そもそも何を満たせば採用なのかが決まっていないので、どれだけ情報を集めても判断が確定しないのです。

このときに戻る先は、求人を出す前に決めた募集要件です。もし「経験3年以上、普通免許、長く働ける方、コミュニケーション能力、素直さ、体力……」と条件が10個並んでいるなら、それは判断基準として機能していません。人間は同時に10項目を比較して結論を出せないからです。

実務的には、必須要件を3つ以内に絞り、その3つに◯△×を付けるだけで十分なことが多いです。仮に「必須3つがすべて◯なら採用」「1つでも×があれば見送り」「△が混ざったら追加確認」と決めておけば、面接が終わった瞬間に判断がほぼ決まります。要件の絞り込み方については求める人物像は3つに絞る。条件を並べすぎると決められないを参考にしてください。

そしてもう一つ。基準不在の迷いには、「決める人が決まっていない」という別の顔があることもあります。社長は採用のつもり、現場責任者は見送りのつもり、どちらも相手の意見を待っている。この状態では永遠に結論が出ません。誰が最終的に決めるのかを先に決めておくことが、結果的に連絡のスピードを上げます。

比較待ちなら、期限を切る

「来週もう一人面接するので、それを見てから」。これは迷いの中でも最も正当に見えて、最も候補者を失いやすいパターンです。会社側から見れば1週間の保留でも、候補者から見れば「1週間、何の連絡もない会社」になります。他社の選考が並行して進んでいれば、その間に決まってしまうことも珍しくありません。

比較待ちを解くために必要なのは、判断を早めることではなく、待たせ方を設計することです。最低限、次の3つを候補者に伝えてください。

  1. 選考は進んでいること(落選ではない)
  2. いつまでに連絡するか(日付で言う)
  3. その日に必ず何らかの返事をすること

「他の方も見てから決めます」と正直に言うべきか迷う方もいますが、理由の詳細まで伝える必要はありません。「社内で検討のうえ、◯月◯日までにご連絡します」で十分です。曖昧な「近日中」「追ってご連絡」が、候補者の温度を一番下げます。

また、比較待ちの期限は長くても1週間を目安にしてください。それ以上先の面接を待つなら、先に会った方を待たせるのではなく、順番の設計自体を見直したほうが早いこともあります。保留中の候補者への具体的な伝え方は第一候補の返事待ちで、もう一人を待たせるときにまとめました。

迷っている時間にも、コストは発生している

判断を保留している間、会社側には費用が発生していないように見えます。しかし実際には、欠員が埋まらない期間の負担は続いていますし、掲載中の求人費も動いています。何より、迷っている間に候補者が離れれば、面接までにかけた時間はすべてやり直しになります。

だからこそ、「迷ったら決める」ではなく、「迷いの種類を見分けて、種類ごとの手を打つ」という順番をおすすめしています。情報が足りないなら確認を一本、基準がないなら要件に戻る、比較待ちなら期限を切る。この3つを使い分けられるようになると、決断が速くなるというより、判断が止まらなくなります。

とはいえ、追加確認の連絡、保留中の候補者へのフォロー、期限当日の結果連絡——これらを日常業務の合間に漏れなく回すのは、兼務の担当者にとって簡単なことではありません。合否連絡が遅れる会社の多くは、決められないのではなく、決めた後の連絡が手元で滞っています。詳しくは面接の合否連絡は何日以内に出すべきかもあわせてご覧ください。

社外採用部では、応募の受付から日程調整、面接前後のフォロー、内定・入社までの連絡を採用事務局として代行しています。判断そのものは会社が行い、判断を支える確認と連絡は外に出す。そんな分担のつくり方についてご相談されたい方は、お問い合わせからお気軽にお声がけください。自社の選考のどこで時間が溶けているか、現状を伺うところから一緒に整理します。