面接が終わり、社長と現場責任者が顔を見合わせて「うーん、悪くはなかったですね」で会話が終わる。二人目の面接が終わると、一人目がどんな人だったか思い出せない。三日後に「で、どちらにします?」と聞かれて、決め手が出てこない——中小企業の選考では、こうした場面が珍しくありません。

問題は面接官の目が悪いことではなく、面接で見たことを残す場所がないことにあります。印象は数時間で薄れ、翌日には「感じが良かった」「ちょっと頼りない」といった要約だけが残ります。要約同士を比べても結論は出ません。ここでは、面接直後の5分で埋められる簡易的な評価シートの作り方をご紹介します。

評価が割れるのは、見ている項目が違うから

社長と現場責任者で評価が分かれるとき、多くの場合、意見が対立しているわけではありません。社長は「長く続けてくれそうか」を見ていて、現場責任者は「明日から現場に立てるか」を見ている。別々の問いに別々の答えを出しているので、議論がかみ合わないのです。

ですからまず必要なのは、評価表の精緻化ではなく、「この求人で外せない条件は何か」を先に決めておくことです。この点は求める人物像は3つに絞る。条件を並べすぎると決められないで詳しく扱っていますが、要件が10項目もあると、面接官ごとにどの項目を重く見るかが変わり、結局は印象論に戻ってしまいます。

必須要件は3つまで。たとえば「フォークリフト免許あり」「土曜勤務が可能」「前職の勤続が1年以上」のように、面接の場で確認できる粒度まで落とし込みます。曖昧な言葉——「コミュニケーション能力」「主体性」——は、ここでは避けたほうが扱いやすくなります。人によって思い浮かべるものが違いすぎるためです。

点数化しすぎない。◯△×と、根拠の一行だけ

評価シートというと5段階評価を思い浮かべる方が多いのですが、中小企業の選考ではおすすめしにくい方法です。理由は二つあります。

ひとつは、5段階にすると全員が3か4に集まること。もうひとつは、点数を合計した瞬間に「なぜその点をつけたか」が消えてしまうことです。合計7点と合計8点の候補者を並べても、判断の材料は増えていません。

代わりに使いやすいのが、必須要件それぞれに◯△×をつけ、その横に「そう判断した根拠になった候補者の発言」を一行だけ書く形式です。

必須要件評価そう判断した根拠(発言・事実)
フォークリフト免許あり◯3年前に取得、前職で週3回使用と回答
土曜勤務が可能△「月2回までなら」。家庭の事情で毎週は難しいとのこと
前職の勤続1年以上◯2年2ヶ月。退職理由は事業所閉鎖

この形であれば、面接官同士の評価が割れたときに「どこで割れているか」がすぐ分かります。△の理由が「月2回まで」と書いてあれば、議論すべきは人物の良し悪しではなく、月2回でシフトが回るかどうかという業務の問題に変わります。感想の応酬から、事実の確認へと話題が移るわけです。

シートの下に、要件以外で気になったことを書く自由記述欄を2〜3行だけ設けておくと、なお使いやすくなります。ただし、ここを広くしすぎると面接官が書くのをためらうので、狭いままにしておくのがコツです。

面接直後の5分で埋める。あとで書くと印象しか残らない

このシートは、面接が終わってから5分以内に埋めることを運用ルールにしてください。候補者を見送ったらその場で、次の予定に移る前に書き切る。これだけで記録の質が変わります。

夕方にまとめて書こうとすると、必ずと言っていいほど「印象の要約」しか残りません。「しっかりした人でした」と書かれたシートは、一週間後の判断にはほとんど役立たないのです。

実務上は、面接枠を予定表に入れる時点で、面接30分+記入5分の35分で確保しておくとうまく回ります。面接枠の取り方そのものに悩んでいる場合は、面接枠が取れない。現場が忙しい会社の面接枠の作り方もあわせてご覧ください。面接官が複数いる場合は、その場で見せ合わずに各自で書いてから突き合わせる順番にすると、片方の意見に引きずられにくくなります。

合否連絡が遅れる原因は、迷いではなく記録の不在

面接から合否連絡まで一週間かかってしまう会社を拝見していると、その一週間のうち大半は「思い出す時間」に費やされています。社長が現場責任者に電話して「あの人、どうでした?」と聞き、現場責任者が「ちょっと確認します」と言って数日経つ。この往復が、辞退の原因になります。

記録が残っていれば、この往復は不要になります。シートを並べて、必須要件の◯△×を見比べ、△がついた項目について事実ベースで話す。この形にすると、面接当日か翌日に合否を決めやすくなります。連絡が遅れることで何が起きるかについては、面接の合否連絡は何日以内に出すべきかで整理しています。

もうひとつ、記録が残ることの効き目は、辞退や不採用が続いたときに振り返れる材料になる点です。仮に半年で12人を面接して、△がついた項目が「土曜勤務」に集中していたとしたら、それは候補者側の問題ではなく求人条件そのものを見直すサインかもしれません。感覚では気づけないことが、数枚のシートを並べると見えてくることがあります。

記録を残す仕組みは、誰かが持たないと続かない

評価シートの作り方自体は難しくありません。むしろ難しいのは、忙しい月にも書き続けることです。応募が重なった月、面接が立て込んだ週から、記入は抜け始めます。

ここで有効なのは、面接官に「書いてください」とお願いする人を決めておくことです。面接翌日にシートが空欄のままなら声をかける、埋まったシートを一箇所に集める、候補者ごとに並べて比較できる形にする。この事務的な役回りが社内に不在だと、どれほど良いフォーマットを作っても数ヶ月で形骸化します。

社外採用部では、応募の受付から日程調整、面接前後のフォローまでを採用事務局としてお預かりしています。面接そのものと採否の判断は、貴社にしかできない仕事です。だからこそ、面接官が判断に集中できるように、記録の回収や候補者の比較表づくり、合否連絡の期限管理といった周辺の実務を引き受ける形をとっています。料金は初回設計費100,000円、月額49,800円からで、以降は支援内容・工数に合わせて個別にお見積りします。社外に任せることへの不安がある方は、採用を外注するのが不安な社長へ。失敗しない任せ方もご覧いただければと思います。

面接の質を上げる方法は色々ありますが、最初の一歩は「見たことを書き残す」というごく単純な習慣です。まずは次の面接から、必須要件3つと◯△×、そして根拠の一行。A4半分のシートで十分です。

自社の選考でどこに手をかけるべきか整理したい方は、こちらからご相談ください。現在の面接から入社までの流れをうかがったうえで、どこを社内に残し、どこを外に出すかをご一緒に考えます。