電話に出てもらえない、メールも開かれない。そんな状況が続くなかで、面接に来た候補者と「LINEで連絡しましょう」となり、担当者が自分のスマートフォンからIDを交換した——こうした話は珍しくありません。実際、返信は速くなることが多く、現場としては手応えを感じる選択です。
一方で、この運用はしばらく経ってから別の形で問題が出てきます。担当者が休んだ日に誰も状況が分からない、条件の説明がトーク履歴のどこかに埋もれて後から確認できない、といった形です。使う・使わないの是非よりも、「会社としてどう使うか」を先に決めておくかどうかで差が出ます。
LINEが入り込むのは、連絡が届かないから
そもそもなぜLINEが選ばれるのか。理由はシンプルで、候補者が日常的に開いているアプリだからです。電話は知らない番号に出ない、メールは受信箱が広告で埋まっている。そのなかでLINEだけは通知を見てもらえる、という実感が現場にあります。
ただし、これは「LINEが優れている」という話ではなく、連絡手段の優先順位の問題です。初回接触の段階では電話とSMSのほうが確実に届く場面もあります。手段の使い分け自体は応募者に電話がつながらない。SMS・メールを組み合わせた連絡の順番で整理していますので、あわせてご確認ください。LINEは「つながってからの継続連絡」に向いた手段、と位置づけるのが実務に合いやすいところです。
個人アカウントのまま続けると何が起きるか
問題は手段そのものではなく、誰のアカウントを使っているかです。担当者の個人アカウントでやり取りが進むと、次のようなことが起きます。
- 不在時に誰も対応できない:候補者からの質問が担当者のスマートフォンにだけ届き、休みの日は止まる
- 履歴が社内に残らない:何をいつ伝えたかが個人の端末の中にあり、引き継ぎや振り返りに使えない
- プライベートとの境界がなくなる:夜中や休日に通知が来て、返さないと放置したように見える
- 退職時に丸ごと消える:担当者が辞めると、やり取りの記録も関係性も一緒に会社から失われる
とくに最後の点は後から取り返せません。記録が個人の頭と端末に閉じている状態のリスクは採用担当が辞めたら止まる会社。応募対応の引き継ぎ設計でも触れていますが、LINEは特にこれが起きやすい手段です。
また、応募者の連絡先や在職状況といった情報を個人アカウントで扱っている状態は、社内の管理ルールから外れていることが多いものです。誰がどこまで見られるかの線引きについては応募者の個人情報、どこまで社外に出していいのかも参考になります。
会社として使うなら、決めておく4つのこと
使うと決めた場合、以下の4点を先に決めておくと運用が崩れにくくなります。
| 決めること | 具体的に決める内容 |
|---|---|
| 窓口 | 個人アカウントではなく、会社として用意したアカウント(公式アカウントや採用専用の端末)に集約する |
| 記録 | 伝えた内容・日時・次のアクションを、応募者管理表など社内の記録側に転記する |
| 対応時間 | 返信する時間帯を候補者に最初に伝える(例:平日9〜18時、それ以外は翌営業日) |
| 開始の合意 | 「LINEでご連絡してよいか」を候補者に確認してから始める。希望しない方にはメールや電話で続ける |
このうち見落とされやすいのが「記録」です。トーク履歴があるから記録は足りている、と考えてしまいがちですが、履歴は時系列に流れるだけで、「誰がどの段階にいるか」は分かりません。面接日が決まったのか、条件をどこまで伝えたのかは、別の一覧で持っておく必要があります。
対応時間の明示も効きます。たとえば、初回のメッセージに「平日は夕方までにお返事します」と添えておくだけで、返信が数時間空いたときの不安をある程度抑えられます。
LINEで送ってよい連絡と、書面で出すべき連絡
もうひとつ決めておきたいのが、内容による線引きです。気軽さが利点である一方、その気軽さが不利に働く連絡もあります。
日程の候補提示、前日リマインド、道順の案内、面接後の一言、入社前の持ち物確認。この種の「短く、事実確認が中心の連絡」はLINEと相性が良い部分です。
逆に、給与・勤務時間・試用期間といった労働条件、内定の通知、不採用の連絡は、トーク上のやり取りだけで済ませない運用をおすすめしています。理由は二つあります。一つは、条件が会話の流れのなかで断片的に伝わり、認識の食い違いが生まれやすいこと。もう一つは、後から双方が同じものを見て確認できる形が残らないことです。認識違いが承諾後の辞退につながる構造は内定通知書に何を書くか。口約束が辞退を招くで詳しく扱っています。
実務としては、「LINEで一報を入れて、正式な書面はメール添付か郵送で送る」という二段構えが扱いやすいところです。速さと正確さを両立させる形になります。
決めるのは手段ではなく、運用
LINEを使うかどうかは、会社の判断で構いません。ただ、担当者が個人の判断で始めた状態のまま半年、一年と続くと、記録も関係性も個人に張り付いていきます。窓口をどこに置くか、記録をどこに残すか、どこから先は書面にするか。この三つを決めておけば、手段が何であっても運用は成り立ちます。
社外採用部では、応募の受付から初回連絡、日程調整、面接前後のフォロー、内定・入社フォローまでを採用事務局として代行しています。連絡手段の設計と履歴の残し方も、初回の設計時にご一緒に決めています。「現場が個人アカウントで回している状態をどう整えるか」で迷っている段階でも構いません。自社の応募対応をどこから直せばよいか、ご相談からお聞かせください。
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