「では来月からよろしくお願いします」と電話で伝え、条件は面接で説明したから大丈夫だろうと考える。中小企業の内定連絡では、ごく普通に起きている流れです。ところが数日後、「他社に決めました」と連絡が入る。あるいは入社後すぐに「聞いていた給与と違う」と言われる。どちらも、条件が書面になっていなかったことが引き金になっているケースがあります。
内定通知は「決まった」ことを伝える場面ですが、候補者にとっては「本当にこの会社で大丈夫か」を最終確認する場面でもあります。口約束のままでは、候補者は家族にも説明できず、他社の書面と並べて比べることもできません。この記事では、内定通知書と労働条件通知書に何を書くか、どこで誤解が生まれやすいか、そしていつ渡すかを整理します。
口約束のままだと、何が起きるのか
よく聞くのは、次のような話です。
面接で「月給25万円ほど」と伝えた。候補者はそれを基本給だと受け取ったが、会社側は固定残業代を含んだ総額のつもりだった。入社直前に明細の見込みを聞いて、話が食い違っていることに気づく。ここで候補者は、金額そのものよりも「都合の悪いことを言わなかった会社」という印象を持ちます。信頼が崩れると、条件が多少良くても辞退に傾きます。
もうひとつは、比較の場面です。在職中の方や複数社を受けている方は、他社から届いた書面を家族に見せながら相談します。こちらが口頭だけだと、比較の土俵にすら上がりません。ご家族が反対に回る背景に、この「読める資料がない」状態があることは珍しくありません。
そもそも労働条件の明示は、労働基準法で会社に課された義務です。書面(または本人が希望した場合の電子交付)で示さなければならない項目が定められており、内定を出したら必ず対応が必要な工程だと考えてください。辞退防止の工夫という以前に、やらなければならない実務です。
内定通知書と労働条件通知書は役割が違う
この2つを混同している会社が多いのですが、目的が別です。
| 内定通知書 | 労働条件通知書 | |
|---|---|---|
| 目的 | 採用の意思を伝え、返答期限を示す | 働く条件を明示する(法定義務) |
| 主な記載 | 採用職種、入社予定日、承諾の返答期限、提出書類、担当者連絡先 | 契約期間、就業場所、業務内容、始業終業時刻、休憩・休日、賃金の額と計算方法・支払日、退職に関する事項など |
| 渡す相手の気持ち | 「決まった」という安心 | 「生活が成り立つか」の確認 |
小さな会社であれば1枚にまとめても構いませんが、書く中身としてはこの両方が揃っている必要があります。実務では、内定通知書と労働条件通知書をセットで渡し、承諾書(署名して返してもらう用紙)を添える形が扱いやすいです。
誤解が生まれやすい3つの書き方
法定の項目を埋めるだけでは、認識違いは防げません。実際にトラブルの起点になりやすいのは、次の3か所です。
給与の内訳
「月給25万円」とだけ書かないことをおすすめします。仮の数字で示すなら、基本給21万円、固定残業代3万円(月20時間相当、超過分は別途支給)、通勤手当1万円といった形で分解します。固定残業代を含む場合は、何時間分に相当するのかを書いてください。ここを曖昧にしたまま入社すると、残業をしても給与が増えない理由が本人に説明できません。賞与や昇給についても、「業績により支給」なのか「支給実績なし」なのかを、正直に書いたほうが後が楽です。
試用期間
期間の長さだけでなく、試用期間中の条件が本採用後と違うかどうかを書きます。時給や日給が下がる、手当がつかない、有給の付与時期が変わるといった違いがあるなら、その場でわかるようにしておく。試用期間があること自体を嫌がる候補者は多くありませんが、「入ってから知った」ことには強く反応します。
変動する条件(シフト・残業・勤務地)
シフト制の職場や、現場が変わる仕事では、条件を一点に固定して書けません。だからといって空欄にすると不安が残ります。「早番8:00〜17:00/遅番11:00〜20:00の交替制、月8〜9日休み、シフトは前月20日までに確定」のように、幅と決まり方を書くのが実務的です。残業も「月平均◯時間程度、繁忙期は◯時間程度になることがある」と幅で示します。求人票の記載と食い違わないよう、併せて求人票と面接での説明がずれると、辞退されるも確認してみてください。
渡すタイミングと、同時に伝える口頭フォロー
書面は、内定を伝えてから遅くとも数日以内に届けたいところです。判断のスピードについては内定通知の出し方で承諾率は変わる。伝え方とスピードで扱っていますが、書面が遅れると「本当に決まったのか」という不安の時間が延びます。
進め方としては、まず電話で内定を伝え、その通話の中で「本日中に書面をお送りします。条件を書面で確認いただいたうえで、◯月◯日までにお返事をいただけますか」と伝える。そのうえでメール添付か郵送で送ります。郵送のみだと到着まで数日空くため、メールで先に送り、原本を後日渡す形が動きやすいです。
そして、書面を送るだけで終わらせないことが大切です。送付から1〜2営業日後に、短い確認の連絡を入れます。聞く内容は多くありません。
- 書面は届いたか、読めない項目はなかったか
- 給与の内訳や試用期間について、疑問はないか
- ご家族に相談する予定があるか、必要な情報は足りているか
- 返答期限は無理のない日程か
書面は誤解を防ぐためのもので、安心をつくるのは会話のほうです。特に給与の内訳は、書面の数字を口頭で読み合わせると効果があります。「基本給がこれで、固定残業代がこれ。残業が20時間を超えた分は別に付きます」と言葉にしておくと、入社後の説明が要らなくなります。
返答を待つ間の連絡設計は内定から入社までの連絡頻度。多すぎ・少なすぎの境目、承諾後の変化の見方は内定辞退は直前に起きる。兆候のつかみ方と入社までのフォローも参考になります。
書面をつくる手間を、どこに置くか
ここまで読んで、「内容はわかったが、誰がやるのか」と思われた方も多いはずです。内定通知書の作成、条件の確認、送付、その後のフォロー連絡。一件あたりの作業量は小さくても、社長や総務が他の業務の合間にやると、どうしても後回しになります。そして後回しになった数日が、辞退の分かれ目になることがあります。
社外採用部では、応募の受付から日程調整、内定・入社フォローまでを採用事務局として引き受けています。内定通知書や労働条件通知書のひな形を御社の条件に合わせて整え、送付と到着確認、その後の連絡までを型にしておく。条件を決めるのは経営判断ですから会社に残しますが、書いて届けて確かめる工程は社外に置けます。料金は月額49,800円からで、初回設計費は100,000円です。以降は支援内容・工数に合わせて個別にお見積りします。サービス責任者は佐々木純平が務めます。
内定を出したのに承諾が取れない、条件の話で毎回もめる。そうした状況が続いているなら、書面の中身と渡し方を一度点検してみてください。自社での整備が難しいときは、お問い合わせから現状をお聞かせいただければ、どこから直すべきかを一緒に整理します。
無料相談