机の上には古くなった機械の更新見積もりがあります。一方で現場は一人足りないまま、残業でなんとか回しています。今期の投資余力では両方は難しく、どちらを先にするか決めきれない。そんな状況で、この記事を開かれたのではないでしょうか。
この迷いが長引くのは、設備と人を比べる物差しがそろっていないためです。この記事では、両者を同じ時間軸に並べる考え方と、判断する順番を整理します。
設備と人は、比べる単位がそろっていない
設備投資は「何年で元が取れるか」という回収年数で語られます。一方、人の話は「月給いくら」で語られます。前者は投資、後者は経費として頭に入るため、同じ机の上で比べにくくなります。
そこで、どちらも次の3つの数字に置き換えます。
- 最初にかかる費用(設備なら購入・据付費、人なら広告費と社内工数)
- 効果が出始めるまでの月数(納品・据付までの期間、採用が決まるまでの期間)
- 効果が出たあとの月あたりの金額
人の側の「月あたりの効果」は、欠員によって失っている金額から、採用後に払う人件費を引いたものです。欠員の損失をどう見積もるかは、欠員1人のまま回すと、毎月いくら失っているのかで、残業代・売上機会・既存社員の負担に分けて計算する手順を解説しています。この記事では、その数字が手元にある前提で進めます。
先に切り分ける。設備と人はどういう関係か
数字を並べる前に、設備と人の関係を確かめます。関係によって、比べる意味そのものが変わるためです。
| 設備と人の関係 | 状況の例 | 先に検討すること |
|---|---|---|
| 人が増えないと設備が動かない | 新しい機械を入れても操作や段取りを担う人がいない。増産しても回す人手がない | 採用を先に。設備だけ入れても稼働しない |
| 設備で人の必要数が減る | 手作業の工程が自動化され、一人分の作業そのものがなくなる | 設備で欠員ごと消せるかを先に確認する |
| 互いに独立している | 老朽化で故障の心配がある設備と、別部署の欠員 | 後回しにした場合の損失と回収期間で比べる |
2つ目の「設備で減る」場合は、注意が必要です。自動化で浮く作業と、欠員で手が回っていない作業が同じとは限りません。たとえば機械で浮くのが熟練者の段取り時間で、足りないのが運搬や梱包の人手なら、設備を入れても欠員は埋まりません。現場の責任者に「この機械が入ったら、誰のどの作業が何時間減るか」を具体的に聞いて、欠員の作業と重なるかを確かめてください。
仮の数字で、同じ時間軸に並べてみる
「互いに独立している」場合を想定して、仮の数字で比べます。設備更新が600万円、採用1名にかかる広告費と社内工数の合計が60万円とします。欠員による損失は月50万円、採用後の人件費は法定福利費を含めて月30万円と置きます。
| 項目 | 設備更新 | 採用1名 |
|---|---|---|
| 最初にかかる費用 | 600万円 | 60万円 |
| 効果が出始めるまで | 2ヶ月 | 3ヶ月 |
| 月あたりの効果 | 25万円 | 20万円(50万円−30万円) |
| 最初の費用を回収できる時期 | 決定から26ヶ月目 | 決定から6ヶ月目 |
| 決定から12ヶ月後の累計 | −350万円 | +120万円 |
| 1ヶ月遅らせるごとに逃す効果 | 25万円 | 20万円 |
設備は3ヶ月目から月25万円の効果が出始め、600万円を24ヶ月で回収するため26ヶ月目に元が取れます。12ヶ月目までの累計は10ヶ月分の250万円で、差し引き−350万円です。採用は4ヶ月目から月20万円の効果が出て、60万円を3ヶ月で回収するため6ヶ月目に元が取れます。12ヶ月目までの累計は9ヶ月分の180万円で、差し引き+120万円です。
この表を見ると採用が有利に見えますが、読み方には気をつけてください。12ヶ月で区切るのは、耐用年数のあいだ効き続ける設備にとって不利な物差しです。また、採用が3ヶ月で決まるとは限りません。6ヶ月かかれば回収も後ろにずれます。入社後すぐに辞められれば、回収前に振り出しに戻ります。一方で、残業が続くことによる既存社員の疲れや離職の心配は、表の数字には入っていません。
この比較でわかるのは「どちらが得か」ではありません。「元手が小さく、早く回収できるのはどちらか」です。投資余力が限られているなら、まず小さい元手で早く回収できるほうを動かし、浮いた余力で次に進むという順番が取れます。
判断の順番
ここまでを手順にまとめます。
- 設備と人の関係を切り分ける。 上の表のどれに当たるかを、現場の責任者と一緒に確認します。
- 「人が先」なら採用を優先する。 同時に、採用が決まるまでの期間を楽観せずに見積もります。設備の発注時期は、採用の見込みに合わせて後ろにずらします。
- 「設備で減る」なら、減る作業と欠員の作業が重なるかを確かめる。 重なるなら、設備で欠員そのものを消す選択が成り立ちます。
- 「独立」なら、同じ表に並べる。 最初の費用・効果が出るまでの月数・月あたりの効果・1ヶ月遅らせた場合の損失を、設備と人で横に並べます。
- 見直す日を先に決める。 採用に回した場合は、3ヶ月後に応募と面接の状況を確認する日を決めておきます。見込みより大きく遅れていれば、設備側に切り替えるかを判断します。
採用に回すなら、広告費の前に確かめること
採用を先にすると決めても、最初の費用をすべて求人広告に投じる必要はありません。すでに応募が来ているのに面接まで進んでいないなら、表の「効果が出始めるまで」を縮める余地は、広告より応募後の対応にあります。いま来ている応募がどれだけ面接につながっているかは、面接設定率という指標。応募からの歩留まりを測る第一歩の方法で確認できます。
また、採用1人にいくらまで使うかを先に決めておくと、決まらないまま追加掲載を重ねて、回収時期がずるずる延びる事態を防げます。上限の決め方は求人を出す前に、採用1人にいくら使えるか決めるをご覧ください。
社外採用部は、求人・媒体・スカウトの運用や学校・紹介会社との接点づくりといった母集団形成から、応募の受付、初回連絡、日程調整、面接前後と内定・入社のフォローまでを、社外の採用事務局として担います。面接と採否の判断は御社に残し、それ以外の実務を月額49,800円〜(初回設計費100,000円、以降は支援内容に合わせて個別にお見積り)でお引き受けしています。設備か人かで迷っている段階でも、採用側の数字の整理からご相談いただけます。お問い合わせはこちらからどうぞ。
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