採用の外注を検討し、社長は「一度やってみよう」と言っている。ところが稟議書を回すと、役員から「今の体制の何が困っているのか」、経理から「この費用はいつまで続くのか」と聞かれます。答えに詰まって差し戻され、そのまま話が止まることがあります。中小企業でも一定額以上の支出には役員会や経理の確認が必要で、社長の一存では進められない場合があります。
この記事では、採用外注の稟議書をA4一枚にまとめる構成を示します。あわせて、効果が出るまでの期間の書き方、試験導入の期間の決め方、成果を約束しないまま承認を得るための書き方を整理します。
社長の納得と、稟議が通ることは別の話
社長が外注に前向きになるのは、「日程調整に追われて本業が進まない」「応募を取りこぼしている気がする」といった実感がきっかけになることがあります。ただ、役員や経理はその実感を共有していません。稟議を読む側が確かめたいのは、次の3点です。
- 何と比べて高いのか、安いのか
- いつまで払い続けるのか
- うまくいかなかったら、どこでやめるのか
稟議が止まるのは、外注そのものに反対されているからとは限りません。この3つに答える材料が書かれていないことが原因の場合もあります。実感を数字と期限に置き換えれば、読む側は判断できるようになります。
稟議書は1枚で足りる。書く5つの項目
稟議書を長くしても通りやすくなるわけではありません。次の5項目を1枚に収めれば、読む側の疑問にはおおむね答えられます。
| 項目 | 書く内容 | 書き方の例(数字は仮) |
|---|---|---|
| ① 現状の工数と金額 | 誰が月に何時間使っているか、時給換算した額 | 総務1名が月約20時間。時給換算2,500円で月50,000円相当 |
| ② 現状の歩留まり | 応募数・面接設定数・初回連絡までの時間 | 直近3ヶ月の応募15件、面接設定6件 |
| ③ 依頼する範囲と費用 | 任せる業務、社内に残る業務、初期費用と月額 | 初回連絡・日程調整・面接前フォローを委託。面接と採否判断は社内 |
| ④ 期待する変化と測る指標 | 何がどう変わるはずか、何で確かめるか | 初回連絡までの時間、面接設定率、社内工数 |
| ⑤ 期間と判断の時期 | 試験期間、判断する月、判断する人 | 3ヶ月の試験導入。3ヶ月目末の役員会で判断 |
①の工数は推計で構いません。そのかわり、「何を数えたか」を一行添えてください。数え方は「社長と総務が採用に使っている時間は、いくらのコストか」で手順を紹介しています。
注意したいのは③です。外注しても、面接や採否の判断、外注先からの確認への返答は社内に残ります。社内工数がゼロになると書くと、導入後に「まだ時間を取られている」と言われる原因になります。残る作業を先に書いておけば、比較が正直になり、経理の信頼も得やすくなります。
効果が出るまでの期間は、分けて書く
「いつ効果が出るのか」と聞かれて一つの時期で答えると、その時期に結果が出なかった時点で失敗と受け取られます。指標を変化が出る順に分けて書くほうが、読む側も途中経過を判断しやすくなります。
- 立ち上がりの期間:連絡フローや文面、面接枠、判断基準のすり合わせに充てる期間です。導入初月はこの期間に当たる前提で書きます。
- 早く記録できる指標:初回連絡までの時間と社内工数です。運用が始まれば記録が取れるため、途中報告に使えます。
- 時間がかかる指標:面接設定率です。件数がたまらないと率が安定しないため、判断は試験期間の最後に置きます。
- 判断材料にしにくい指標:採用人数です。応募数や時期、募集条件に左右されるため、主な判断基準にしない理由も稟議書に書いておきます。
導入後の評価方法は「応募対応を外注して、元が取れたかをどう判断するか」で詳しく扱っています。稟議の段階では、「何を、いつ見るか」まで書ければ十分です。
試験導入の期間と、続けるかどうかの判断ライン
試験期間は、雰囲気で「とりあえず1ヶ月」と決めるより、応募件数から逆算するほうが説明しやすくなります。たとえば月の応募が平均5件の会社では、1ヶ月だと母数は5件です。1件の結果だけで面接設定率が20ポイント動いてしまいます。3ヶ月あれば母数は15件になり、1件あたりの振れ幅はおよそ7ポイントに縮みます。応募の少ない会社ほど、期間を長めに取る理由が立ちます。
費用は上限として書きます。仮に月額49,800円の構成で3ヶ月試すなら、初回設計費100,000円と月額49,800円×3ヶ月で、合計249,400円です。実際の月額は依頼する範囲と工数に応じた見積りで決まるため、稟議には見積書の金額を転記してください。あわせて、試験期間が契約の最低期間や解約予告と食い違っていないかも確認しておきます。見るべき箇所は「採用外注の契約期間と解約条件。契約前に見ておく項目」にまとめています。
判断ラインは、導入前に決めて稟議書に載せておきます。
| 試験期間末の状態 | 判断 |
|---|---|
| 初回連絡までの時間が短くなり、社内工数も減っている | 継続 |
| どちらか一方しか改善していない | 依頼範囲を見直し、期間を区切って延長 |
| どちらも変わらない、または社内側の準備が追いつかない | 終了し、記録とテンプレートを引き取る |
成果を約束せずに通す書き方
稟議を通したい一心で「採用人数が◯人増える」と書きたくなるかもしれません。ただ、採用人数には外注先が動かせない要素が含まれます。外れたときには、改善していた工程まで含めて「失敗」と扱われかねません。
成果保証の代わりに書くのは、次の3つです。
- 約束できること:依頼する業務の範囲、報告の頻度と内容、判断する時期
- 期待していること:初回連絡までの時間や社内工数といった工程指標の変化
- 確かめられないこと:採用人数は応募数に左右されるため、試験期間だけでは評価しにくいこと
そのうえで、「試験導入の費用は見積額の範囲に収まり、◯月末に継続か終了かを判断する」と一文入れます。経理が気にするのは、成果の大きさより損失の上限であることがあります。上限と出口が書かれていれば、「やってみる」ことへの承認は得やすくなります。
社外採用部は、求人やスカウトの運用といった母集団形成から、応募の受付、初回連絡、日程調整、面接前後のフォロー、内定・入社フォローまでを、局面に合わせてアサインした担当が代行します。面接そのものと採否の判断は御社に残る形です。稟議に添える見積りや、依頼範囲と社内に残る業務の整理からご相談いただけます。まずはお問い合わせください。
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