求人広告を出す前に、まず取引先の社長や同業の知人に「誰かいい人いない?」と聞いてみる。中小企業の経営者にとっては、ごく自然な一手です。ところが、何人かに声をかけても返事がない。ようやく紹介された人が要件に合わず、断り方に悩む。紹介者から聞いた条件と会社の説明が食い違い、話がこじれる。こうしたつまずきが起きることがあります。
紹介ルートは費用がほとんどかからない一方で、紹介者という第三者が間に入ります。この記事では、取引先・同業・引退した職人からの紹介に絞って、誰にどう頼むか、条件の話を誰がするか、紹介された人をどう断るかを整理します。
社員紹介との違いは、紹介者が社外の人であること
社員からの紹介であれば、報奨金や社内ルールで仕組みを整えられます(社員紹介の進め方は社員紹介で来た応募者への対応。身内だからこそ雑になるで扱っています)。取引先や同業の場合はそうはいきません。紹介者は会社の指示では動かず、取引関係や業界内の付き合いを背負ったうえで、好意で動いてくれています。
そのため、紹介者が「顔をつないだだけ」のつもりでいる一方で、会社は「推薦してもらった」と受け取る、という温度差が生まれることがあります。この温度差が、後で断るときや条件を伝えるときの難しさにつながります。
声をかける相手は、主に次の三つに分けられます。
- 取引先:仕入先・外注先・元請けなど。現場で働く人の顔を知っていることがある
- 同業の経営者:同じ職種の人材を知っている一方で、人材を取り合う相手でもある
- 引退した職人・元社員:かつての弟子や同僚、職業訓練校や工業高校とのつながりを持っていることがある
同業に頼む場合は、相手の会社の社員を引き抜く意図ではないことを最初に言葉にしておくと、関係がこじれにくくなります。
「いい人いたら」では紹介は来ない。人数と職種を言って頼む
漠然と「誰かいい人がいたら」と頼むと、相手の頭に具体的な顔が浮かびません。思い浮かばなければ、話はそのまま流れてしまいます。紹介を引き出すには、相手が誰か一人を思い出せるところまで条件を絞って伝えることが大切です。
たとえば、次のような言い方です。
「2月までに、型枠大工の経験が3年以上ある人を1人探しています。日勤のみで、○○市内から通える人だと助かります」
職種・人数・経験の目安・勤務の条件・時期の五つが入っていると、相手は自分の知り合いと照らし合わせやすくなります。
声をかける相手も、思いついた順ではなく、先に書き出しておきます。たとえば取引先から2人、同業から1人、引退した職人から2人の計5人に絞り、一人ずつ電話か対面で頼むといった形です。一斉に同じ文面を送るより、相手との関係に合わせて話したほうが、真剣に考えてもらいやすくなります。
頼むときには、転送できる短い文面も渡しておきましょう。仕事の概要、勤務地、窓口になる人の名前と電話番号が数行にまとまっていれば、紹介者は知り合いにそのまま送れます。口頭だけで伝えると、紹介者の記憶を通るうちに内容が変わってしまうことがあるためです。
なお、広告以外の打ち手全体の中で紹介ルートをどう位置づけるかは、広告を出す以外に、応募を増やす打ち手は何があるかで比較しています。
条件の話は誰がするか。紹介者に任せない線引き
紹介でこじれやすいのが条件の話です。紹介者が親切心から「給料は30万くらいらしいよ」「土日は休めるはず」と伝えてしまうと、本人はその数字を前提に会社へ来ます。実際の条件と違えば、会社が話を変えたように受け取られかねません。
紹介者に何を任せ、何を会社が引き受けるかは、頼む時点で決めておきます。
| 項目 | 紹介者に伝えてもらうこと | 会社が直接伝えること |
|---|---|---|
| 会社と仕事 | 会社名、仕事のおおまかな内容 | 一日の流れ、配属先、仕事の細かい中身 |
| 条件 | 「条件は会社から直接説明がある」という一言 | 給与額、休日、残業、試用期間 |
| 選考 | 窓口の名前と連絡先 | 面接日程、選考の進め方、合否 |
| 入社 | 伝えない | 入社日、書面での条件提示 |
紹介者には「条件の話はこちらからしますので、話を聞いてみないかと伝えていただくだけで十分です」とお願いしておくと、相手も気が楽になります。条件は面接や内定の段階で会社から説明し、最後は書面で渡します。書面に入れる項目は内定通知書の書き方。書く項目と、口約束が辞退を招く理由を参考にしてください。
紹介者への進捗報告も、伝えるのは「お会いしました」「今回はご縁がありませんでした」といった結果の有無までにとどめます。本人の評価や提示した条件の中身は、本人の同意なしに紹介者へ伝えないのが基本です。
紹介された人を断るとき。関係を壊さない順番
紹介された人が要件に合わないとき、「断ったら取引先の顔を潰すのでは」と迷う経営者もいるでしょう。とはいえ、気を遣って採用すれば、本人も現場も合わない仕事で苦しむことになります。
断りやすくするための準備は、頼む段階で済ませておけます。「選考はさせていただきます。お会いしたうえで、合わない場合はお断りすることもあります」と最初に伝えておくことです。この一言があるだけで、断ることは約束を破ることではなくなります。
実際に断るときは、順番が大切です。
- 本人に先に、会社から直接伝える:紹介者経由で知らされると、本人は会社に軽く扱われたと感じることがあります
- そのあと紹介者に結果を報告する:本人への連絡が済んでいることも添えます
- 理由の詳細は紹介者に話さない:本人の評価が紹介者を通じて回ることを避けます
紹介者への連絡は、たとえば次のような文面になります。
「先日ご紹介いただいた○○さんとお話しさせていただきました。今回は募集の条件と合わず、ご縁にはなりませんでしたが、ご本人にはこちらから直接お伝えしております。お声がけいただき、本当にありがとうございました。また機会がありましたらよろしくお願いいたします」
避けたいのは、返事を先延ばしにすることです。結果が出ないまま時間がたつと、紹介者は本人から「どうなったのか」と聞かれ、会社との間で板挟みになります。本人への断り方の文面は条件が合わない応募者に、その日のうちに丁寧に断るにまとめています。
また、採用が決まった場合にお礼をすること自体は自然なことです。ただし、社外の人に紹介の対価として金銭を継続的に払う形にすると、職業紹介や委託募集にあたるかどうかといった法令上の扱いが問題になることがあります。謝礼を出す場合は、事前に労働局やハローワークに確認してください。
紹介で来た方も、受付後の流れは通常の応募と同じです。その日のうちに初回連絡を入れる、面接日を早めに決める、記録を残す。紹介だからと後回しにすると、紹介者の好意まで無駄にしてしまいます。
社外採用部では、紹介会社や学校との接点づくりを含む母集団形成から、応募の受付、初回連絡、日程調整、面接前後のフォローまでを、御社の採用事務局として代行しています。面接と採否の判断は御社に残したまま、紹介で来た方への連絡や紹介者への報告文の準備も含めて引き受けます。「紹介と広告の両方から来る応募を、一つの窓口で受けたい」とお考えでしたら、こちらからご相談ください。
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