採用を一手に担ってきた社員から、産休に入りたいという申し出があった。おめでとうと伝えたあとで、ふと頭をよぎるのは「この人が抜けたら、応募対応は誰がやるのか」という現実的な問いではないでしょうか。しかも数日の休みではなく、半年から1年以上の不在です。
退職であれば「後任を立てて完全に引き継ぐ」と腹をくくれます。ところが産休・育休は、戻ってくることが前提です。だからこそ、いったん誰かに預けて、復帰後にまた本人の手に戻すという二段構えの設計が必要になります。この記事では、その準備の進め方を整理します。
退職の引き継ぎとは、設計の前提が違う
退職にともなう引き継ぎは、属人化していた仕事を別の誰かに移し替える作業です。詳しくは採用担当が辞めたら止まる会社。応募対応の引き継ぎ設計で触れていますが、要点は「個人の頭の中にある情報を、会社のものに変える」ことにあります。
産休・育休の場合、これに二つの条件が加わります。
ひとつは、期間がおおむね読めること。産前休業の開始時期から復帰予定まで、数ヶ月単位のスケジュールが事前に見通せます。急な退職と違い、準備に充てられる時間があります。
もうひとつは、戻す前提で預けること。後任に完全に移管してしまうと、復帰したときに本人の居場所がなくなったり、逆に一から覚え直しになったりします。不在中の判断や候補者とのやり取りが、復帰後に読み返せる形で残っているかどうかが、戻りやすさを左右します。
この二つを押さえずに「とりあえず総務の誰かが代わりに見る」としてしまうと、不在期間中は何とか回っても、復帰時にもう一度混乱が起きやすくなります。
不在期間中、募集を止めるか続けるか
引き継ぎ先を考える前に、そもそも不在中に採用活動をどの水準で続けるのかを決めておきます。ここが曖昧なまま代わりの人を立てると、受け皿の大きさが見積もれません。
判断の材料は、人員計画と対応体力の二つです。
| 状況 | 不在期間中の方針 |
|---|---|
| 欠員が出る予定があり、採用しないと現場が回らない | 続ける前提で、受け皿を先に用意する |
| 増員は望ましいが、急がなくても事業は回る | 募集を絞り、職種を限定して細く続ける |
| 当面の欠員予定がなく、通年で応募を受ける必要もない | 期間を区切って掲載を止め、復帰後に再開する |
「止める」という判断は、消極的な選択ではありません。中途半端に掲載を続けて初回連絡が数日遅れる状態が続くと、応募者の体験が落ち、会社の評判にも跳ね返ります。応募を受けるなら、受けた分だけ対応できる体制をつくる。対応できないなら、いったん受けない。この整理のほうが、結果的に損失は小さくなりやすいものです。
ただし、完全に止める場合でも、学校や紹介会社との関係、問い合わせへの窓口だけは残しておくことをおすすめします。入口を全部閉じてしまうと、復帰後の立ち上げに余計な時間がかかります。
誰に預けるか。社内移譲と期間限定の外部委託
受け皿の作り方は、大きく三つに分かれます。
社内の誰かに一時的に移す。 総務や管理部門の方に、応募受付と初回連絡、日程調整を移す形です。費用はかかりませんが、その方の既存業務は減りません。不在期間が半年を超えるなら、どの業務を一時的に止めるかもセットで決めておきたいところです。短期不在の受け皿については担当者が休みの日、応募はどうなるのか。不在時の受け皿でも整理しています。
期間限定で外部に委託する。 復帰の時期が読めているぶん、「この期間だけ」と区切った委託と相性のよい状況です。社内の誰かの業務を圧迫せず、復帰後に戻す前提で設計できます。
両方を組み合わせる。 応募の受付・初回連絡・日程調整は外に出し、面接と採否の判断、条件提示は社内に残す。実務量の多い部分だけを預ける形です。
どれを選ぶにせよ、先に決めておきたいのが決裁ラインです。不在中、誰がどこまでを自分の判断で進めてよいのか。書類選考の見送り、面接日程の確定、条件提示の範囲。ここが決まっていないと、代わりの担当者は一つひとつ社長に確認することになり、連絡が遅れます。採用の決裁ラインの決め方。誰が最終判断するかで連絡は速くなるも参考にしてください。
復帰後に戻すために、何を残しておくか
長期不在の引き継ぎで最も見落とされやすいのが、「不在中に起きたこと」を復帰後の本人が追えるようにしておくことです。
残すものは、大きく二つです。
対応履歴。 いつ、誰に、どの媒体から応募があり、誰がいつ連絡し、どこまで進んだか。最低限、応募日時・媒体・初回連絡日・現在のステータス・次のアクションと期限・辞退理由があれば、復帰後に読んで状況を再構築できます。項目を増やしすぎると埋まらなくなるので、この程度に抑えるのが現実的です。
判断基準と、その変更の記録。 不在中に要件を緩めた、面接回数を減らした、時給を上げた。こうした変更が口頭だけで決まっていると、復帰した本人は「なぜこうなっているのか」が分からないまま運用を引き継ぐことになります。決めた日付と理由を一行添えるだけで、復帰後の会話がまるで変わります。
もうひとつ、復帰のタイミングで一度だけ振り返りの時間を取ることをおすすめします。不在期間の応募数、面接設定率、辞退理由を並べて、本人と一緒に読む。仮に月30分でも、これがあるかないかで戻りの速さは変わってきます。
準備は、産休入りの2〜3ヶ月前から
最後に、進め方の順番を整理します。
- 方針を決める(産休入りの2〜3ヶ月前)。不在期間中に採用を続けるか、絞るか、止めるか。必要人数と時期から逆算します。
- 受け皿を決める。社内移譲か、期間限定の外部委託か、併用か。決裁ラインもここで決めます。
- 記録の形を整える(1〜2ヶ月前)。本人がいるうちに、管理表と連絡文テンプレートを引き出しておきます。この作業は、本人が在籍している間しかできません。
- 並走する(2〜4週間)。実際の応募を一緒に処理し、判断に迷う場面を洗い出します。
- 復帰前に逆引き継ぎの日を決める。復帰日が決まった時点で、振り返りと返却の段取りを先に押さえておきます。
社外採用部では、応募の受付・初回連絡・日程調整・面接前後のフォロー、求人や媒体の運用、学校や紹介会社との接点づくりまでを、採用の局面に合わせて担当者をアサインしてお手伝いしています。面接そのものと採否の判断は御社に残る前提です。料金は月額49,800円〜、初回設計費100,000円で、支援内容と工数に応じて個別にお見積りします。期間を区切った体制づくりにも対応できますので、「この半年だけ」という相談でも構いません。
復帰後に社内へ戻す段取りについては、応募対応の外注は、いつ社内に戻すのか。卒業の判断基準もあわせてご覧ください。
担当者の産休が決まっていて、その間の採用体制に迷いがある方は、こちらからお気軽にご相談ください。現在の応募状況と不在期間をうかがったうえで、どこまでを外に出すのが適切かを一緒に整理します。
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