採用の外注を検討するとき、多くの経営者が気にされるのは「始めたら、ずっと払い続けることになるのではないか」という点です。月額の費用が固定で出ていく以上、やめどきが見えない契約には踏み出しにくい。これはとても自然な感覚だと思います。

外注を勧める記事はいくらでもありますが、やめるタイミングを書いた記事はほとんど見かけません。ですが実務の感覚としては、応募対応の外注は「永久に任せるもの」ではなく「社内に型ができるまでの補助輪」として使われる場面が少なくありません。この記事では、どうなったら社内に戻していいのか、その判断基準と引き継ぎの中身を整理します。

外注は「ずっと任せる前提」でなくていい

応募対応の外注が必要になる状況は、だいたい次のどれかです。応募が来ているのに折り返しが翌日以降になっている。社長や総務が兼務で回していて、面接日程の調整が止まっている。採用担当がいない、あるいは辞めてしまった。

つまり、外注が解いているのは「人手と時間の不足」と「手順がないこと」の二つです。前者は事業や人員の状況が変われば解消しますし、後者は続けていれば社内に手順が蓄積されていきます。どちらも変化しうる条件なので、契約を恒久的なものとして考える必要はありません。

社外採用部としてご支援するときも、最初から「いつか社内に戻せる状態にする」ことを前提に設計を組むことがあります。初回設計費をいただいて連絡の型や判断ラインを言語化するのは、その場の対応を代行するためだけではなく、貴社に残る資産をつくる作業でもあるからです。

社内に戻す3つの条件

卒業を考えるタイミングは、次の3つが揃ったときが目安になります。どれか1つだけでは、戻したあとに元の状態へ逆戻りすることが多いと感じています。

条件見るポイント揃っていないと起きること
① 採用が落ち着いた欠員が埋まり、当面の募集計画がない。応募件数が月数件以下に収まっている繁忙期に再び対応が破綻する
② 担当できる人がいる応募対応に日中まとまった時間を割ける人が社内にいる。兼務でも構わないが、時間が確保されている兼務者の本業が優先され、初回連絡が翌日以降に戻る
③ 手順が社内に残った連絡文テンプレート、連絡の順番、判断ラインが文書になっている担当者の記憶だけに残り、異動や退職で再び止まる

①について、募集を止める判断そのものに迷いがある場合は、外注を切る前にそこを固めたほうが安全です。

②で見落としやすいのは、「担当者を採用できた」と「担当者が応募対応を回せる」は別だという点です。入社直後の担当者に応募対応をそのまま渡すと、判断に迷って連絡が遅れます。並走期間を1〜2ヶ月置いてから切り替えるほうが、途中の取りこぼしが起きにくくなります。

③がいちばん忘れられがちです。外注中は対応が回っているぶん、社内に手順が残っているかを確認する機会がありません。戻す判断をする前に、応募対応マニュアルの作り方。1日で書ける最小構成の範囲で自社の文書が揃っているか点検してみてください。

引き継ぐのは、テンプレート・履歴・判断ライン

社内に戻すときに必要なのは「引き継ぎ会議」ではなく、モノとして渡せる3点です。

連絡文テンプレート。応募受付の返信、初回連絡がつながらなかったときのSMS文、面接案内、前日リマインド、不採用通知、内定通知。実際に使われていた文面を、そのまま編集できる形で受け取ります。書き直す必要はありません。うまく機能していた文面は、そのまま使うのがいちばん安全です。

対応履歴。誰にいつ何を送り、どう返ってきたか。これが残っていないと、過去の応募者から再応募があったときに前回のやり取りが分かりませんし、歩留まりの振り返りもできなくなります。応募日時・媒体・初回連絡日時・ステータス・次アクション・辞退理由あたりが残っていれば十分です。

判断ライン。ここが最も属人的になりやすい部分です。電話は何回かけて、何日目にSMSへ切り替えるのか。書類のどこを見て見送りにするのか。面接日程は何日先まで提示していいのか。連絡が途絶えた候補者を、いつ追わないと決めるのか。こうした線引きは会話の中で共有されてきたことが多いので、戻す前に文章にしてもらうよう依頼してください。

引き継ぎ資料を別途つくるのではなく、日々の記録がそのまま引き継ぎになっている状態が理想です。この考え方は採用担当が辞めたら止まる会社。応募対応の引き継ぎ設計でも整理しています。

戻したあと、また属人化させないために

社内に戻して半年後、応募対応が担当者一人の頭の中に戻っている——これは珍しくありません。防ぐために必要な運用は、それほど多くありません。

ひとつは、記録の置き場所を一箇所に固定することです。個人のメールボックスや個人のメモに履歴が散ると、その人が休んだ日に対応が止まります。Excel一枚でも共有フォルダに置いてあれば十分です。

もうひとつは、月に一度、短い振り返りの時間を持つことです。前月の応募数、初回連絡までの時間、面接設定率あたりを確認し、数字が悪化していないかを見る。社長に報告する採用の数字は、この4つで足りるで挙げている程度の粒度で構いません。ここで数字が落ちていれば、戻すのが早すぎたか、担当者の時間が足りていないかのどちらかです。

そして、テンプレートを更新したら共有場所のファイルも直す。この一手間が抜けると、最新の文面が個人の下書きフォルダにしか残らなくなります。

全部戻すか、一部だけ残すか

卒業は、オールオアナッシングではありません。実務では「一部だけ外に残す」形に落ち着くこともあります。

たとえば、平日日中の応募対応は社内で回し、夜間と土日の一次受付だけ外に残す。あるいは、通常月は内製で、募集が集中する時期だけ期間限定で手を借りる。支援内容に合わせて費用を見直せる契約であれば、応募が少ない月の負担は軽くなります。契約前の時点で「縮小や一時停止ができるか」「再開時にまた初期設計費がかかるのか」を確認しておくと、卒業の見通しが立てやすくなります。

どこを社内に残し、どこを外に出すかという線引きそのものについては、採用担当の業務を全部書き出してみる。内製と外注の分け方が参考になると思います。

外注を検討するときは、始め方だけでなく終わり方まで聞いておいて構いません。むしろ、やめどきの話を一緒にできる相手のほうが、任せる側としては安心できるはずです。社外採用部でも、どこまでを任せてどこから社内に戻していくかの設計から相談を承っています。まずは現状の応募対応をお聞かせいただくところからで構いません。ご相談はこちらからどうぞ。