苦労して採用した方が、試用期間のうちに「やっぱり合いませんでした」と辞めていく。前日まで普通に働いていたように見えて、退職の申し出は突然やってくる——そんな経験をお持ちの経営者は少なくないはずです。
ただ、本人のなかでは突然ではないことが多いものです。入社直後の違和感は、言葉になるより先に行動に出ます。そしてその行動を最初に目にするのは、人事でも社長でもなく、同じ現場で働いている社員です。この記事では、入社1ヶ月面談のような「場を設けて聞く」より手前の、日々のちいさな兆候をどう拾い、週1回5分の声かけとしてどう仕組みに落とすかを整理します。
現場が最初に気づく、入社直後の兆候
入社して数週間の方は、不満があっても会社に言いません。評価される立場だという意識がありますし、そもそも誰に言えばいいのか分からないからです。代わりに、行動が静かに変わります。
よく挙げられるのが、次のような変化です。どれも単体では「たまたま」で片づく程度のもので、だからこそ見過ごされます。
| 兆候 | 見立て |
|---|---|
| 遅刻・ぎりぎりの出社が増える | 通勤の負担、朝の気が重い、生活リズムの不一致 |
| 休憩時間に一人でいることが続く | 人間関係の入り口でつまずいている |
| 質問が減る | 分かったのではなく、聞ける相手がいない可能性 |
| 残業や交代を断るようになる | 条件の認識がずれている、他社を見始めている |
| 服装や持ち物が「仮」のまま | 長く勤める前提が揺らいでいる |
ポイントは、質問が減ることを「慣れてきた証拠」と読んでしまいやすいところです。入社1ヶ月目で質問がゼロになるのは、たいていの職場では早すぎます。聞きづらい空気があるか、聞いても答えが返ってこなかった経験があるか、どちらかのことが多いものです。
兆候は一つで判断せず、「2つ以上が同じ週に重なったら声をかける」といった緩いルールにしておくと、現場も動きやすくなります。
週1回5分の声かけを、誰がやるか
兆候を拾うには、定期的に話す機会が要ります。ただ、入社直後に30分の面談を何度も組むのは現実的ではありません。週1回、5分で十分です。
誰がやるかは、職場の事情で変わります。
- 直属の上司・教育担当:仕事の進み具合を一番知っている。ただし評価者でもあるため、本音が出にくい場面がある
- 入社2〜3年目の先輩社員:年次が近く、同じ入口を通ってきているので話しやすい
- 総務・管理部門の担当:現場の利害から離れているため、人間関係の話が出やすい
おすすめは、直属の上司と、それ以外の誰かの二本立てにすることです。仕事の話は上司から、それ以外の話は別の人から。週ごとに交代しても構いません。大切なのは「今週は誰が声をかけるか」が決まっていることで、全員が気にしていると全員がやらない状態になりがちです。
聞くことも決めておくと、5分で終わります。たとえば、
- 今週、困ったことはありましたか
- 聞きたいけど聞けていないことはありますか
- 来週、やってみたいことはありますか
この3つだけです。「どうですか」とだけ聞くと「大丈夫です」で終わります。困りごとを前提にした聞き方のほうが、言葉が出やすくなります。
そして、聞いた内容は一行でいいので残してください。日付・誰が話したか・出てきた言葉。これがあると、2週目と4週目を並べたときに変化が見えます。面談の場で何を聞くかは入社1ヶ月面談で聞くこと。早期離職の芽をつかむ質問でも整理していますので、あわせてご覧ください。
気になったとき、社内をどう動かすか
声かけで気になる話が出たとき、一番やってはいけないのは「本人には聞いたが、そこで止まる」ことです。話した側は「伝えたのに何も変わらなかった」と受け取り、次からは何も言わなくなります。
動かし方は単純で構いません。
- その場で答えられることは、その場で答える(道具の場所、休憩の取り方、申請の出し方など)
- その場で答えられないことは、いつ返事をするかを伝える(「来週の同じ時間までに確認します」)
- 人や待遇に関わることは、決裁できる人へ上げる
誰に上げるかを先に決めておくのが要点です。「教育担当が気になったことは、週末までに工場長へ一行で共有する」程度の取り決めがあれば、情報は止まりません。仮に週あたり数分の共有でも、辞めてから理由を聞くよりはるかに安く済みます。
採用から定着までを切れ目のない流れとして捉える考え方は、採用は「点」ではなく「線」。応募から定着までを一本でつなぐでも扱っています。
本人の希望と現場の都合がずれたとき
声かけを続けると、必ずといっていいほど出てくるのが「希望と現場の都合が合わない」話です。早番ばかりで体がきつい、配属先が想定と違う、教えてくれる人が忙しそうで聞けない——いずれも、すぐに全部は叶えられません。
このとき大切なのは、叶えるか断るかの二択にしないことです。
- 期限を区切って一時的に変える(「来月いっぱいは早番を週2回に減らします」)
- 理由を説明して今は動かせないと伝える(「繁忙期を越えるまでは難しい、◯月に見直します」)
- 別の形で負担を下げる(教育担当を替える、作業の順番を変える)
「検討します」のまま放置すると、本人は断られたと受け取ります。できないならできないと、いつなら見直せるかとセットで伝えたほうが、納得は得られやすくなります。
なお、入社前の説明と現場の実態がずれているなら、直すべきは面談ではなく求人票や面接での説明です。入社後のフォローを時期で組み立てる考え方は、ドライバー採用は入社後が本番。3ヶ月以内の離職を防ぐフォローが参考になります。
続けるための、最低限の仕組み
週1回5分の声かけは、仕組みがないと3週目で消えます。必要なのは次の3つだけです。
- カレンダーに入れる(毎週◯曜日の◯時、入社から3ヶ月間)
- 当番を決める(誰がやるかを月初に決めてしまう)
- 一行の記録を残す(共有フォルダのExcel一枚で十分)
採用は、応募を集めて面接をして終わりではありません。入社した方が3ヶ月後も働いているところまで含めて、ようやく一件の採用です。とはいえ、日程調整も応募対応も入社フォローも、すべてを社内の限られた人数で回し続けるのは簡単ではありません。
社外採用部は、中小企業の採用事務局として、母集団形成から応募受付・初回連絡・日程調整・面接前後のフォロー、そして内定から入社後のフォローまでを社外から担います。面接そのものと採否の判断は御社が行い、その前後の実務を私たちが引き受ける形です。採用の局面に合わせて担当をアサインするため、一人分の人件費で複数の役割を使い分けられます。料金は月額49,800円〜(初回設計費100,000円)、支援内容に応じて個別にお見積りします。
入社直後のフォローが回らずに人が定着しない、という段階でお困りでしたら、ご相談フォームからお気軽にお声がけください。サービス責任者の佐々木が、現状をうかがったうえで組み立て方をご提案します。
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