採用したいのは1名。けれども面接を終えてみると、甲乙つけがたい方が2人残った。あるいは、第一候補に内定を出しても辞退されるかもしれないと考えると、もう1人にも先に声をかけておきたくなる。中小企業の採用では、こうした場面がしばしば起こります。

このとき悩ましいのは、両方に内定を出して両方から承諾が返ってきたらどうするのか、という一点です。取り消せば会社の信用に関わりますし、かといって1人ずつ出して待っていると、待たされた側が他社に決めてしまう。この記事では、同時に出すか1人ずつ出すかを、感覚ではなく「承諾の見立て」と「受け入れ余力」という2つの材料で判断する方法を整理します。

同時に出す場合と、1人ずつ出す場合で起きること

まず、それぞれの選択で何が起きるのかを並べてみます。どちらが正解というものではなく、会社が引き受けるリスクの種類が違う、という理解が出発点です。

同時に2人へ出す1人ずつ出して待つ
主なリスク全員が承諾し、枠を超える待たせた側が先に他社へ決まる
空席が埋まるまでの期間短くなりやすい返事待ちの分だけ延びやすい
候補者への説明通常の内定通知でよい待機理由の説明が必要になる
社内の事前合意採用人数の上限と予算待たせる期間と打ち切りライン
向いている場面複数名募集、増員に余地がある枠が厳密に1名、人件費の上限が固い

1人ずつ出す場合、次点の方をどう扱うかが実務上の山場になります。この点は第一候補の返事待ちで、もう一人を待たせるときで詳しく扱っていますので、あわせてご覧ください。

判断の1軸目:承諾されそうか、という見立て

同時に出すかどうかの判断は、「この方は承諾してくれそうか」という見立てから始まります。ここを感覚だけで済ませると、辞退を過剰に恐れて2人に出す、あるいは楽観して1人ずつ出す、という偏りが生まれます。

見立ての材料は、選考中に候補者から出ていた言葉です。一般に、次のような点が判断材料になりやすいところです。

このうち複数が「入社後」に向いている方は、承諾の可能性が高めと見ておけます。逆に、他社の最終選考が同時期に控えていて、志望理由が条件比較にとどまっている場合は、辞退の可能性も織り込んだほうが現実的です。

ただし、見立ては見立てにすぎません。辞退の確率を下げる努力は、内定を出す前と出したあとの両方でできます。通知のスピードや伝え方そのものが承諾率を左右する点は内定通知の出し方で承諾率は変わる。伝え方とスピードにまとめています。

判断の2軸目:全員承諾されたとき、受け入れられるか

もう一つの軸は、「両方から承諾が返ってきても受け入れられるか」です。ここが曖昧なまま2人に内定を出すのは、危険な賭けになります。

確認するのは、気持ちの問題ではなく次の4点です。

人件費の枠。仮の数字で考えてみます。年収300万円の方をもう1人受け入れると、社会保険の会社負担分などを含めて年間350万円前後の追加になります。その支出が来期の計画に収まるかどうかを、内定を出す前に経営判断として出しておきます。

教育担当の余力。新しく入った方には、最初の1〜2ヶ月、誰かが仕事を教える時間が必要です。1人なら回るが2人同時は無理、という現場は珍しくありません。教える側の負担を確認せずに2人受け入れると、早期離職という別の損失につながります。

席・車両・工具・ロッカーなどの物理的な受け入れ。増員に物が伴う業種では、ここが上限になることがあります。

仕事量。「2人分の仕事があるか」ではなく、「2人入れば残業が減り、いま断っている仕事を受けられるか」という前向きな問いで考えると、判断しやすくなります。欠員のまま回している状態が毎月いくらの損失かは欠員1人のまま回すと、毎月いくら失っているのかで試算の手順を示しています。

この2軸を掛け合わせると、判断はおおむね次のように整理できます。承諾の見立てが不確かで、かつ2人受け入れる余力がある会社は、同時に出す選択が取りやすい。余力がなく枠が厳密に1名の会社は、1人ずつ出して、待機期限を明示して進めるほうが安全です。

社内で先に合意しておくこと

判断を現場任せにしないために、内定を出す前に社内で決めておきたいことがあります。採用が止まったり、慌てて取り消しを検討する事態になったりするのは、この合意がないときです。

決めておくのは次の4つです。

  1. 受け入れ上限の人数。「1名募集だが、良い方なら2名まで可」のように、上限を数字で決めます
  2. 上限を超えた場合の対応。追加で受け入れるのか、募集自体を見直すのか。取り消しは選択肢に入れない前提で考えます
  3. 待機させる場合の上限日数。次点の方を何日まで待たせるか。過ぎたら見送りを伝えるのか、あらためて条件を提示するのか
  4. 決裁者と連絡の期限。誰がいつまでに決めるか。判断が1日遅れるだけで、候補者は他社に流れます

特に2番目は、経営者ご自身の腹づもりを言語化しておく意味があります。「2人来たら2人採る」と決めているなら、同時内定は合理的な選択です。「やっぱり1人にしたい」と後で言う可能性があるなら、最初から同時には出さないほうがよいということになります。

なお、内定を出した時点で求人掲載をどうするかも、あわせて決めておきたい論点です。承諾前に止めるか続けるかの考え方は募集を止めるタイミング。選考中の候補者がいるときの掲載判断で整理しています。

出し方を決めたあとの実務

同時に2人へ出すと決めた場合、それぞれに対して通常どおりの内定通知を行います。「他にも候補者がいます」といった説明は不要ですし、しないほうが賢明です。候補者から見れば、自分が選ばれたという事実だけが大切だからです。条件・入社日・返事の期限は、2人とも同じ水準でそろえておきます。

1人ずつ出すと決めた場合は、次点の方への連絡設計がそのまま結果を左右します。「少々お待ちください」とだけ伝えて放置すると、待っている側は「落ちたのだろう」と受け取ります。いつまでに連絡するかを日付で伝え、その間も1回は連絡を入れる。この2点だけで、待機中の離脱はかなり抑えられます。

そして、どちらを選んだ場合でも、内定から入社日までのフォローは続きます。承諾をもらった時点がゴールではなく、入社初日までが選考の延長線上にあると考えておくと、判断を誤りにくくなります。


内定の出し方そのものは経営判断ですが、その前後に発生する連絡——返事の確認、待機中のフォロー、見送りの通知、入社日までの連絡——は、実務として切り出せる部分です。社外採用部は、応募の受付から初回連絡、日程調整、面接前後のフォロー、内定・入社フォローまでを採用事務局として代行しています。月額49,800円〜、初回設計費100,000円から始められます。

「候補者を待たせているうちに連絡が滞ってしまう」「内定後のフォローまで手が回らない」といった状況でしたら、一度ご相談ください。現状の選考フローを伺ったうえで、どこを外に出せるかをご一緒に整理します。

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