同じ会社で正社員とパートの募集を並行して出していると、応募通知は同じ受信箱に同じ顔をして届きます。ところが、その1件を面接まで運ぶのにかかる手間は、正社員とパートでまったく違います。違うと知らないまま同じ手順を当ててしまうと、片方では対応が遅れ、もう片方では失礼になる。どちらも、応募が少ない会社にとっては痛い取りこぼしです。

「うちは応募対応の手順を決めている」という会社でも、その手順が正社員基準なのかパート基準なのか、意識して分けているケースは多くありません。この記事では、速度・確認項目・選考回数・書面という4つの観点で違いを並べ、両方を同時に募集している会社が何を分けておけばよいかを整理します。

同じ「応募1件」でも、手間のかかる場所が違う

正社員とパートで、応募対応の総量が大きく違うわけではありません。違うのは、手間がどこに集中するかです。

パートの応募は、初動に手間が集中します。応募者は自宅から近い複数の求人にまとめて応募していることが多く、先に話が進んだところで決めてしまいます。連絡が翌日になると、その時点で他店の面接が入っている、ということが起こります。一方で、聞くべきことも選考の工程も少なく、初動さえ乗り切れば入社までの距離は短いのが一般的です。

正社員の応募は、初動から入社までの全体に手間が分散します。在職中の方が多く、返信は夜になります。確認すべき項目は経験・資格・入社可能時期・希望条件と増え、面接も一次と二次に分かれることがあり、内定から入社までに退職交渉という数週間から数ヶ月の期間が挟まります。初動が速いだけでは、途中で連絡が途切れて終わります。

つまりパートは「その日の勝負」、正社員は「数ヶ月の伴走」です。同じ台本で回そうとすると、どちらかが崩れます。

4つの観点で並べて見る

実際に運用を分けるときの目安となる整理です。会社や職種によって変わりますので、自社の実情に合わせて調整してください。

観点パート・アルバイト正社員
初回連絡の速さ応募当日中。できれば数時間以内当日中。夜の応募は翌朝一番
連絡手段電話が中心。出なければSMSメールを基本に、電話を併用
面接日の提示直近3日以内を含めて提示1週間以内を目安に複数案
応募後に確認すること勤務可能な曜日・時間帯、通勤手段、開始希望時期経験内容、資格、在職状況、入社可能時期、希望条件
選考回数原則1回1〜2回(職種の重さと決裁者の数で判断)
書面の出し方採否は電話で伝え、条件書面は初出勤前後に内定通知書・労働条件通知書を承諾前に書面で
内定から入社まで数日〜2週間程度1〜3ヶ月。退職交渉の期間を見込む

表にすると当たり前に見えますが、実務では混ざります。混ざり方には決まったパターンがあります。

パートに正社員のフローを当てると、間に合わない

よくあるのは、次のような流れです。応募が届く。まず履歴書を送ってもらう。届いたら社長が目を通す。書類選考を通ったら面接日を調整する。面接をして、社内で検討し、数日後に結果を連絡する。

正社員の採用としては、ていねいで妥当な手順です。しかしパートの応募にこれを当てると、応募から結果連絡まで1〜2週間かかります。仮に、応募者が同じ週に3つの求人に応募していたとすると、その間に他の2社は面接を終えて初出勤日を決めているかもしれません。こちらが書類を待っている段階で、勝負は終わっています。

止まりやすいのは、次の3か所です。

一つ目は、履歴書を先に求めること。パートの応募者にとって履歴書の作成は負担が大きく、ここで止まる方が一定数います。面接を先に設定し、当日持参してもらう順番のほうが進みやすいことが多いです(履歴書はいつ求めるべきか。応募直後に頼むと離脱する)。

二つ目は、書類選考を挟むこと。パートの募集で見るべき点は、勤務できる曜日と時間帯が合うかがほとんどです。これは電話の数分で確認できます。書類を見ないと判断できない状態なら、確認項目のほうを見直したほうが早いです。

三つ目は、結果連絡を持ち帰ること。面接の場で決められる基準を先に用意しておけば、その場で伝えられます。詳しくはパート・アルバイト採用こそスピード勝負。応募当日の動き方で扱っています。

正社員にパートの軽さを当てると、雑に見える

逆方向の失敗もあります。パートの採用に慣れた会社が、正社員の応募に同じ調子で対応してしまうケースです。

電話1本で「じゃあ明日の午後どうですか」と面接を設定する。面接は30分、その場で「ぜひ来てください」と伝える。書面は入社日に渡す。パートならスピード感のある良い対応ですが、正社員の応募者、とくに在職中で転職を検討している方から見ると、印象が変わります。

在職中の方は、明日の午後に急に休めません。候補日は複数、夜や土曜も含めて出す配慮が必要です。また、正社員として転職する方は人生の大きな決断をしています。その場での口頭の内定は、うれしさよりも「この会社、判断が軽すぎないか」という不安につながることがあります。給与や試用期間の認識違いが、承諾後の辞退として表面化することもあります(内定通知書に何を書くか。口約束が辞退を招く)。

正社員の応募対応で外せないのは、次の3点です。

選考を1回にするか2回にするかは、職種の重さと決裁者の数で決まります。判断の目安は中小企業の選考は何回が適切か。一次・二次を分ける判断にまとめています。

両方を募集している会社が、先に決めておくこと

正社員とパートを同時に募集している会社で決めておきたいのは、次の3つです。

応募通知の段階で見分けがつくようにする。 求人ごとに件名や通知先を分け、開いた瞬間にどちらの応募かがわかる状態にします。見分けがついて初めて、対応を分けられます。

それぞれの初回連絡テンプレートを用意する。 文面は2種類あれば足ります。パート用は面接候補日を直近から3つ、正社員用は候補日に加えて在職状況を尋ねる一文を入れる。この差だけで、初動の質はかなり変わります。

面接枠を種類ごとに分けて確保する。 パート用は平日の日中、正社員用は夕方以降や土曜、というように枠の性質を分けておくと、応募が来てから予定を探す時間がなくなります。

仮に月10件の応募があり、うち7件がパート、3件が正社員だとします。この7件と3件をまったく同じ手順で処理しようとすると、パート側は遅れ、正社員側は薄くなります。手順を2本持つことは、手間を倍にすることではなく、それぞれの取りこぼしを減らすことです。

社外採用部では、応募の受付から初回連絡、日程調整、面接前後のフォローまでを、求人区分ごとに手順を分けた形でお引き受けしています。どちらの応募が来ても同じ日のうちに一次接触が入る状態を、社内の人を増やさずにつくることができます。正社員とパートの対応がひとつのやり方に混ざってしまっているとお感じでしたら、現在の流れを伺うところからご相談ください。

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