「応募が来ないので、経験不問にしてみようと思うんです」。求人を出し直すタイミングで、こうしたご相談をいただくことがあります。実際、経験年数や資格の条件を外すと、応募の数そのものは動きやすくなります。媒体の検索条件に引っかかる母数が広がるので、当然といえば当然です。
ただ、そこで起きるのは「同じ質の応募が増える」ことではありません。増えるのは、これまで応募してこなかった層の応募です。その中には自社で活躍しそうな方も混じっていますが、要件から明らかに外れる方も混じります。そして、外れている方にも連絡は必要です。条件を緩めるという判断は、求人票を書き換える作業ではなく、応募後の対応量を引き受ける判断でもあります。
応募が3倍になっても、対応の手間は3倍では済まない
仮の数字で考えてみます。これまで月5件だった応募が、条件を緩めて月15件になったとします。単純に考えれば工数は3倍ですが、実際にはもう少し増えます。
理由は、判断に迷う応募が混ざるからです。これまでの5件は、要件を満たすかどうかが書類で明確でした。ところが経験不問にすると、「未経験だが業界は近い」「資格はないが取得予定」「年齢的に体力面が読めない」といった、書類だけでは判断がつかない応募が入ってきます。この一件ごとの迷いが、対応を止めます。
しかも、応募は待ってくれません。迷っている間に初回連絡が翌日以降にずれると、要件を満たしている本命の応募者への連絡まで遅れます。条件を緩めたことで、いちばん採用したかった層を取りこぼす。この逆転が、もっとも起きやすい失敗です。
応募件数と実作業時間の関係については、応募10件を1人で回すと何時間かかるのかで分解しています。緩める前に、いまの体制で何件まで捌けるかの目安を持っておくと判断がしやすくなります。
緩めてよい条件は「面接前に電話で確認できる条件」
では、どの条件なら緩めてよいのか。判断の軸として使いやすいのが、その条件は応募後の電話で確認できるかという基準です。
電話で30秒あれば事実確認できる項目なら、求人票の段階で厳密に絞り込む必要は薄くなります。応募してもらってから聞けばよいからです。逆に、確認に手間がかかる項目や、満たさなければ業務そのものが成立しない項目を外すと、面接まで進めない応募だけが積み上がります。
| 条件の例 | 電話で確認できるか | 扱い方 |
|---|---|---|
| 通勤手段・通勤時間 | 確認できる | 求人票では広めに。応募後に確認 |
| 勤務可能な曜日・時間帯 | 確認できる | 求人票では広めに。応募後に確認 |
| 入社可能時期 | 確認できる | 求人票では触れず、応募後に確認 |
| 経験年数 | 確認できる(自己申告) | 緩めやすい。面接で深掘りする前提 |
| 人柄・定着しそうか | 会わないと分からない | もともと書類で測れない。要件から外す |
| 業務に必須の免許・資格 | 確認できるが、無い場合は代替不可 | 緩めない。養成前提なら別枠で明記 |
| 夜勤・宿直の可否 | 確認できる | 緩めない。求人票に明記したほうが早い |
整理すると、緩めてよいのは「応募後の一本の電話で埋められる情報」、緩めないほうがよいのは「無ければ業務が成立しない条件」と「あとから伝えると信頼を損なう条件」です。夜勤や休日出勤のように、伏せておけば応募は増えるけれど面接で必ず問題になる条件は、緩めるのではなく書き方を工夫する領域になります。
なお、「人柄」「やる気」のような項目を応募条件に並べても、書類では判定できません。こうした条件は緩める・緩めないの対象ではなく、面接で見る項目として切り分けておくほうが、選考全体がすっきりします。
緩める前に、決めておきたい3つのこと
条件を緩めると決めたら、掲載を差し替える前に次の3点を用意しておくと、対応が崩れにくくなります。
1. 初回連絡で聞く項目を3つ以内に決める
緩めた条件は、応募後の電話で埋めます。ただし聞く項目が多いと、初回連絡が面接前の審査のようになり、候補者の温度が下がります。「入社可能時期」「通勤手段」「希望する勤務時間帯」など、判断に直結する3つ程度に絞り、それ以外は面接で聞くと決めておきます。
2. 見送りラインを一枚にしておく
緩めた結果、どこまでなら会うのかを事前に決めていないと、応募のたびに社長と現場で相談が発生します。この相談待ちが、そのまま連絡遅れになります。必須・歓迎・見送りの線引きを紙一枚にまとめておく方法は、書類選考で落とす基準を決めておくと、対応が速くなるで手順を整理しています。
3. 面接枠を先に増やしておく
応募が増えれば、面接候補日の提示回数も増えます。応募が来てから面接官の予定を探していると、緩めて増えた分だけ日程調整が渋滞します。週のどこに面接枠を置くかを先に仮押さえしておくと、候補日を即答しやすくなります。
見送り連絡の文面は、緩める前に用意しておく
条件を緩めると、見送りの件数は確実に増えます。ここを後回しにすると、対応リストに「まだ返していない応募」が溜まり、心理的にも実務的にも重くなります。
おすすめしているのは、緩める前に見送り連絡の型を作っておくことです。文面が手元にあれば、判断した当日のうちに送れます。
○○様
このたびは当社の求人にご応募いただき、ありがとうございました。 ご経歴を拝見し社内で検討いたしましたが、今回募集している職種では〇〇(例:普通自動車免許をお持ちであること)を必須としており、誠に恐縮ながら今回は見送らせていただくこととなりました。
ご関心をお寄せいただきましたこと、あらためて御礼申し上げます。今後別職種での募集を行う際には、あらためてご案内できればと存じます。
○○株式会社 採用担当
ポイントは、見送りの理由を「条件の不一致」に限定して書くことです。人物評価に踏み込むと、書き方に悩んで送信が遅れます。条件を緩めた募集ほど、要件外の応募が来るのは想定内ですから、不一致を淡々と伝えるほうが双方にとって健全です。当日中に断る意味と文面の加減については、条件が合わない応募者に、その日のうちに丁寧に断るもあわせてご覧ください。
緩める判断は、受け止める体制とセットで
条件を緩めること自体は、有効な打ち手です。実際、経験を問わずに採った方が長く定着しているというケースもあります。問題は、緩める判断だけが先に走り、増えた応募を受け止める側が手つかずのまま残ることです。
掲載条件を書き換えるのは5分で終わりますが、増えた応募に当日中に連絡し、面接日を決め、合わない方には丁寧に断る作業は、毎日続きます。緩めるかどうかを検討するときは、「この条件を外したら、月に何件増えそうか」「その分を誰が受けるのか」を同じ会議で決めてしまうことをおすすめします。
社外採用部は、応募の受付・初回連絡・日程調整・面接前後のフォロー・内定後のフォローまでを、貴社の採用事務局として代わりに担うサービスです。求人広告の運用そのものは行いませんが、「条件を緩めて応募を増やしたいが、増えた分の対応が回らない」という局面には噛み合いやすい役割だと考えています。料金は月額49,800円〜、初回に設計費100,000円をいただき、以降は支援内容・工数に合わせて個別にお見積りします。
自社の条件のどこを緩めてよいか、緩めたときに何件増えそうか。現在の応募状況をうかがったうえで、責任者の佐々木がご一緒に整理します。まずはこちらからお気軽にご相談ください。
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