内定を出して承諾もいただき、入社日も決まった。その数日前になって「そういえば健康診断はどうするんだったか」と社内で話題になる。受診できる医療機関を探し、予約を取り、本人に連絡し、結果が出るのは初日の後になる——入社手続きのなかでも、健康診断は後回しになりやすい項目です。
新卒採用でも中途採用でも、人を雇い入れるときの健康診断は、決めることそのものは多くありません。いつ受けてもらうか、費用は誰が持つか、どこで受けるか、すでに受診済みの診断書を使えるか。この4つを先に決めておくだけで、入社直前の慌ただしさはかなり減ります。
先に決めておく4つの論点
雇入時の健康診断は、労働安全衛生関係の法令で定められた項目があり、常時使用する労働者を雇い入れる際に行うものとされています。対象になるかどうかは雇用形態や所定労働時間によって判断が分かれる場面があるため、自社のケースに当てはまるかは所轄の労働基準監督署や顧問の社会保険労務士に確認してください。この記事では、制度の細部ではなく「社内で何を決めておくか」に絞って整理します。
| 決めること | 実務上の論点 |
|---|---|
| いつ受けてもらうか | 入社前か入社後か。結果が出るまでの日数も含めて逆算する |
| 費用は誰が持つか | 会社負担とするのが一般的な整理。立替か直接払いかも決めておく |
| どこで受けるか | 自社で医療機関を指定するか、本人に任せるか |
| 既存の診断書 | 直近に受けた健診結果を流用できるか。項目が揃っているか |
費用については、会社が実施すべきものとして位置づけられている以上、事業者が負担するという整理が一般的です。ただし、本人が自分の都合で指定外の医療機関を選んだ場合の差額をどうするかなど、細かい線引きは会社ごとに決めておく必要があります。金額は医療機関や項目によって幅があるため、相場を調べるより、近隣の1〜2か所に電話して実費を聞いてしまうほうが早いことが多いです。
自社で指定するか、本人に任せるか
どちらが正解ということはなく、人を採る頻度と社内の手間で決めて構いません。
自社指定は、近隣の医療機関を1か所決めておき、「◯◯クリニックで受けてください、費用は会社から直接支払います」と案内する形です。項目の漏れが起きにくく、費用処理も一本化できます。年に何人か採用する会社なら、最初に一度決めてしまえば以降は使い回せます。
本人任せは、「お近くの医療機関で受診し、領収書と結果をお持ちください。費用は後日精算します」という形です。遠方から入社する方や、入社日まで時間がない場合には現実的です。ただし、必要な項目が入っていない健診を受けてきてしまい、やり直しになることがあります。案内の際に検査項目を書き出して渡しておくと、この取り違えは減らせます。
仮に年2〜3人の採用であれば本人任せでも回りますが、同時期に複数名を迎える場合は自社指定にまとめたほうが、予約と精算の手間が人数分に膨らまずに済みます。
内定承諾後の案内は、承諾の連絡と同じ週に
健康診断の依頼は、内定承諾の返事をいただいた直後に出すのが落ち着きます。入社日が決まってから動くと、予約が取れずに入社後の受診になりがちだからです。
案内に入れておきたいのは、次の5点です。
- 受診をお願いしたい理由(法令に基づく入社時の健康診断であること)
- 受診先(自社指定の場合は医療機関名・住所・予約方法/本人任せの場合は検査項目の一覧)
- 費用の扱い(会社負担であること、立替の場合は領収書が必要なこと)
- 提出期限(入社日の何日前までか)
- すでに受診済みの場合の扱い(相談してほしい旨)
文面としては、「入社にあたり、法令に基づく健康診断の受診をお願いしております。費用は当社で負担いたしますので、ご本人のご負担はございません。◯月◯日までに結果をご提出いただけますと助かります」程度で十分です。在職中の方は現職の勤務を抜けて受診することになるため、「土曜に対応している医療機関もあります」といった一言を添えると動きやすくなります。
この時期は内定者の不安が静かに膨らむ期間でもあります。健診の案内を、入社までの連絡の一つとして組み込んでおくと、連絡の口実にもなります。間隔の考え方は内定から入社までの連絡頻度。多すぎ・少なすぎの境目も参考にしてください。
直近で受診済みの診断書を使えるか
「3か月前に会社の健診を受けました」「先月、学校で受けました」という申し出は珍しくありません。一定期間内に受けた健診で、必要な項目が揃っていれば、その結果を提出してもらうことで重複受診を省ける場合があります。
確認するのは、受診日と検査項目の2点です。学校健診や自治体の住民健診は、項目が一部足りないことがあります。足りない項目だけを追加で受けてもらえるか、医療機関に相談する形になります。判断に迷う場合は、診断書のコピーを手元に置いたうえで、所轄の労働基準監督署か社労士に確認するのが確実です。この場合も、本人には「確認しますので少しお待ちください」と伝え、回答の目安日を示しておくと放置された印象になりません。
なお、健診結果は健康に関する個人情報です。誰が受け取り、どこに保管し、社内の誰まで見るのかを先に決めておいてください。入社書類全般の集め方は入社書類が揃わない。何を、いつまでに、どう集めるかに整理しています。
入社前の作業は、一覧にしてしまうのが早い
健康診断だけを単独で管理しようとすると、また別の年に同じことを調べ直すことになります。内定承諾から入社初日までにやることを一枚の一覧にして、その一項目として健診を入れておくほうが、担当が替わっても回ります。入社初日までにやること。受け入れ準備のチェックリストを土台に、自社の事情を書き足す形でも構いません。
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