年明けに職員から退職の申し出があり、慌てて求人を出したとします。2月に応募が届いても、所長は申告書のチェック、職員は顧問先の資料回収と入力で手一杯です。気づけば応募から1週間が過ぎ、折り返したときにはもう他で決まっていた。会計事務所・税理士事務所の採用では、こうした行き違いが起こることがあります。

原因は事務所の対応力ではなく、採用の動きと業務の山が重なっていることにあります。この記事では、繁忙期を避けて募集を組む年間の段取りと、初回連絡で確認したい質問の型、未経験の補助者を採る場合の伝え方を整理します。

繁忙期に応募が来ると、なぜ止まるのか

1月末には法定調書や給与支払報告書の提出期限があり、続いて3月15日の確定申告期限が控えています。この時期は期限が法律で決まっているため、顧問先の仕事を後回しにできません。後回しにできるのは採用のほうになり、応募の確認や折り返しが「手が空いたら」になります。

少人数の事務所では、応募への連絡も面接も所長が担っていることがあります。所長の時間が申告業務に取られる時期は、採用のすべての工程が同時に止まりやすくなります。加えて、仮に繁忙期に入社してもらえても、教える人に時間がなく、新人が放置される状態になりがちです。採用の時期をずらすことは、応募対応と入社後の教育の両方を守ることにつながります。

募集は夏から秋に寄せる。年間の段取りの目安

考え方は、「次の繁忙期の前に、基本操作を覚えた状態の人がいる」から逆算することです。たとえば年末調整が始まる前に入社してもらうなら、10月入社が一つの目安になります。在職中の方は退職の申し出から実際に辞めるまで時間がかかるため、8〜9月には面接を終えておきたいところです。逆算の詳しい手順は「4月までに1人」を逆算する。採用スケジュールの引き方で解説しています。

時期事務所の状態(例)採用で動くこと(目安)
1〜3月法定調書・給与支払報告書、確定申告募集は控え、来期に必要な人数と要件をメモに残す
4〜5月3月決算の顧問先があれば申告対応繁忙期の振り返り、要件と条件の確定
6〜7月比較的落ち着きやすい求人原稿の作成、面接枠の確保、掲載開始
8〜9月年末調整の準備前面接・内定、入社日の調整
10〜12月年末調整入社と教育。追加の募集は控える

顧問先の決算月の分布によって山の位置は事務所ごとに異なります。自社の昨年の残業が多かった月を書き出し、表を自分の事務所用に書き換えてから使ってください。

初回連絡で確認する4つの質問

会計事務所の事務員は、経験の中身によって任せられる仕事が大きく変わります。履歴書の「経理経験あり」だけでは、仕訳を自分で切れるのか、入力だけだったのかが分かりません。面接の前に、初回の電話で次の4点を押さえておくと、面接では人柄や働き方の確認に時間を使えます。

  1. 簿記の級と学習状況 「日商簿記は何級をお持ちですか。いま勉強中のものがあれば教えてください」。税理士試験の受験生であれば、科目合格の状況と、試験前の休み希望の有無も聞いておきます。
  2. 会計ソフトと実務の範囲 「会計ソフトに仕訳を入力したご経験はありますか。お使いだったソフトの名前も伺えますか」。あわせて、記帳代行・給与計算・年末調整のどこまで触れたことがあるかを確認します。
  3. 繁忙期の残業の可否 先に事実を伝えてから聞きます。「当事務所では2〜3月に、週に○日ほど○時頃までの残業があります。この時期の働き方で難しい点はありますか」。○の部分は自社の実態を入れてください。ここをぼかすと、入社後の最初の繁忙期に「聞いていない」となりやすくなります。
  4. 勤務形態と入社可能時期 パート希望なら勤務できる曜日と時間帯、在職中なら退職を申し出る時期の見通しを聞きます。

4つとも「はい・いいえ」で終わらないよう、経験の中身を一言添えてもらう聞き方にしておくと、面接で掘り下げる材料が残ります。

未経験の補助者には「最初の3か月」を見せる

経験者にこだわると応募が限られるため、未経験の補助者を育てる選択肢もあります。その場合、応募者が気にするのは「本当についていけるのか」です。「未経験でも大丈夫です」とだけ答えるより、入社後に覚える順番を見せたほうが判断しやすくなります。

たとえば10月入社なら、次のように伝えられます。

あわせて「税務の判断や申告書の作成は、当面お願いしません」と、できなくてよいことも伝えます。秋入社であれば3か月目がちょうど年末調整にあたるため、最初の繁忙期を前に何ができていれば十分かを、本人も事務所も共有しやすくなります。答え方の文例は「未経験だけど大丈夫ですか」に、どう答えるかにまとめています。

繁忙期にどうしても募集が必要なとき

急な退職などで、1〜3月に募集せざるをえないこともあります。その場合は、応募を受けることと面接を進めることを分けて考えます。

応募直後の自動返信に「面接は3月下旬以降に行います。○日までに日程のご相談のご連絡をします」と、次の連絡の期限を書いておきます。文面の組み立ては応募直後の自動返信メールに何を書くか。最低限入れる4項目が参考になります。そのうえで、初回の電話だけは当日中に入れ、前述の4つの質問を済ませておけば、繁忙期明けにすぐ面接へ進めます。週に1回、30分だけ面接枠を先に押さえておく方法もあります。

社外採用部は、求人・媒体の運用から応募受付、初回連絡、面接の日程調整、面接前後のフォローまでを社外から代行する採用事務局です。面接そのものと採否の判断は事務所で行っていただき、それ以外の実務を、繁忙期を含めて止めずに回す体制を一緒に設計します。料金は月額49,800円〜、初回設計費100,000円です。来期の採用時期の組み立てから相談したい方は、お問い合わせからお気軽にご連絡ください。