秋に内定を出し、承諾の返事ももらった。あとは四月を待つだけ——そう思っていたら、年明けに「他社に行くことにしました」と連絡が来る。新卒採用を始めた中小企業が、最初の年につまずきやすいのがこの場面です。
中途採用であれば、内定から入社までは長くても二ヶ月ほど。ところが新卒は、内定から入社まで半年以上の空白があります。この半年は、会社にとっては「決まった人」でも、学生にとっては「まだ働いていない会社」のままです。この記事では、その半年をどう設計するかを、時期別に整理します。
半年の空白で何が起きているか
新卒の内定者は、在学中という立場上、入社までの間も就職活動を続けられる状態にあります。本人にその気がなくても、周囲は動いています。同じゼミの友人が大手の内定を取った、親から「もう一度見直したら」と言われた、年明けの追加募集を見つけた。こうした出来事は、会社からは見えないところで起きます。
このとき、学生の手元にあるのが「内定通知書一枚と、最後に話したのが三ヶ月前の記憶」だけだとしたら、自社は比較の土俵に残りにくくなります。逆に言えば、半年の間に会社との接点が積み重なっていれば、比較そのものが起きにくくなります。
やることは難しくありません。「忘れられない程度に、会社の中で起きていることを伝え続ける」。これに尽きます。ただし、頻度と中身を間違えると逆効果になります。連絡の間隔の考え方は内定から入社までの連絡頻度。多すぎ・少なすぎの境目で整理していますので、あわせてご覧ください。
時期別に、何を伝えるか
半年を漫然と過ごさないために、月ごとに「何の用件で連絡するか」を先に決めておくことをおすすめします。十月に内定を出し、翌年四月入社という一般的なケースで並べると、次のような形になります。
| 時期 | 接点の内容 | ねらい |
|---|---|---|
| 10月(内定直後) | 内定通知書・労働条件の書面交付、今後の予定の共有 | 条件を文字で確定させる |
| 11月 | 会社の近況(受注・新しい取り組みなど)を短く共有 | 存在を思い出してもらう |
| 12月 | 年末の挨拶、可能なら忘年会や社内行事への声かけ | 人の顔を見せる |
| 1月 | 卒業見込み・卒論の進捗確認、入社日の再確認 | 不安材料を早めに把握する |
| 2月 | 配属予定の説明、必要な準備(免許・書類など)の案内 | 入社後の姿を具体化する |
| 3月 | 入社書類の回収、初日の集合案内、持ち物の連絡 | 初日のつまずきをなくす |
毎月必ず何かを送る必要はありませんが、二ヶ月以上まったく接点がない期間を作らないことが目安になります。内容は長文でなくて構いません。「今月こんな仕事が決まりました」「新しい設備が入りました」といった三行のメールでも、会社が動いている実感は伝わります。
十二月や二月に、配属予定の先輩社員との短い顔合わせを挟むのも有効です。進め方は内定者と現場社員を入社前につなぐ。顔合わせの置き方にまとめています。
課題や研修を課すときの加減
内定者に通信教育や課題図書、レポートを課す会社があります。入社後の立ち上がりを早めたい、という意図はわかります。ただし、新卒の半年間は学生にとって卒業論文、卒業制作、国家試験、学費のためのアルバイトが重なる時期でもあります。負担のかけ方を誤ると、「入社前からこれでは」と受け取られることがあります。
加減を考えるときの線引きは、次の三つです。
一つめは、業務上必要な資格の取得と、それ以外を分けること。運転免許や業務に不可欠な資格は、取得時期と費用負担を早めに伝える必要があります。一方、一般的なビジネスマナー研修や読書感想文の類は、必須にする理由が薄いことが多いものです。
二つめは、提出期限を学事日程に合わせること。卒論提出や試験期間に締切を重ねない。相手の学校の年間予定を聞いておくだけで避けられます。
三つめは、課したものには必ず反応を返すこと。提出させたレポートに何の返信もないと、課題は「作業」になります。短くても感想を返す前提がないなら、課さないほうが無難です。
アルバイトで来てもらうのは、是か非か
入社前に内定者をアルバイトとして受け入れる会社もあります。仕事と職場を事前に知ってもらえる、入社後の立ち上がりが早い、という利点は確かにあります。一方で、注意したい点もあります。
アルバイトとして働いてもらう以上、それは雇用です。労働条件を書面で示し、賃金を支払い、労働時間を管理する必要があります。「内定者だから」という理由で無給の研修扱いにすると、後々の信頼を大きく損ねます。学業への影響も見過ごせません。授業や卒論の時期にシフトを入れすぎれば、本末転倒です。
もう一つ、見落とされやすいのが「期待値のずれ」です。アルバイトとして見た職場と、正社員として入る職場は、任される仕事も責任も違います。アルバイト期間で雑用ばかりを任せた結果、入社前に熱が冷めてしまうこともあります。逆に、良いところだけを見せすぎると入社後の落差になります。
迷ったときの判断軸はシンプルです。本人が希望しているかどうか。会社から半ば義務のように求めるのではなく、「来てみたい月があれば、週一日からでも歓迎します」という伝え方にとどめておくと、学業との両立も保ちやすくなります。
卒業できなかった場合を、先に決めておく
新卒採用特有の論点が、これです。単位が足りず卒業できない、必要な国家試験に合格しなかった。発生頻度は高くありませんが、起きたときに慌てる会社は少なくありません。
大切なのは、内定を出す時点で「卒業・資格取得を条件とする」ことを書面に明記しておくことです。あわせて、その場合にどう扱うかの方針も社内で決めておきます。考えられる選択肢は、入社を一年延期する、資格取得を前提に別の職種で受け入れる、内定を取り消すといったところです。
ただし、内定の取り消しは解約権の行使にあたると解されており、どのような場合に認められるかは個別の事情に左右されます。自社だけで判断せず、顧問社会保険労務士や弁護士に相談することをおすすめします。
実務的には、年明けの連絡の中で「卒業見込みはいかがですか」と一度確認しておくことが、最大の予防になります。本人が不安を抱えているなら、早く分かるほど打てる手は増えます。
入社直前期の準備については入社初日までにやること。受け入れ準備のチェックリストもご参照ください。
半年にわたる内定者フォローは、一つひとつは短い連絡の積み重ねです。それでも、日々の業務を抱えながら毎月の接点を切らさずに続けるのは、兼務の担当者にとって簡単なことではありません。気づけば三ヶ月連絡していなかった、という状態は、どの会社でも起こり得ます。
社外採用部は、中小企業の採用事務局として、母集団形成から応募受付・日程調整・面接前後のフォロー、そして内定後から入社までの連絡まわりまでを社外から担います。面接そのものと採否の判断は御社にお任せし、その前後の実務を引き受ける形です。新卒の長い空白期間をどう設計するかも含めて、ご相談いただけます。
半年先の入社日まで、内定者との接点を切らさない体制づくりについては、お問い合わせよりお気軽にご相談ください。
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